昭和の鉄道員、実態と背景
「昔の国鉄の乗務員は態度が悪かった」
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鉄道を語る際に、こうした言葉を耳にすることは少なくない。昭和の時代を知る人々の間では、
「国鉄職員は横柄だった」
「乗客に冷たかった」
といった記憶が共有されることが多い。しかし、これは本当に事実なのか、それとも時代背景や組織文化によって作り出されたイメージなのか。3月21日、SNS上でこの話題が取り上げられ、盛り上がりを見せた。
本稿では、国鉄の乗務員の態度に関する通説がどのように生まれたのかを探り、当時の労働環境や経営事情を踏まえた分析を試みる。
単なる印象論ではなく、国鉄という巨大組織の構造や社会背景に目を向けることで、「態度が悪かった」という評価の妥当性を再考してみたい。
国鉄の誕生と成長の軌跡
国鉄(日本国有鉄道)は、1949(昭和24)年に発足した日本の国有鉄道運営機関で、運輸省(現・国土交通省)の外郭団体として公共企業体の形態で鉄道事業を運営していた。
国鉄は鉄道省の業務を引き継ぎ、独立採算制の公共事業として運営された。
1987年に分割民営化が実施され、事業はJRグループ各社に移行、国鉄は解散した。
最盛期には、新幹線や在来線を含む1万9639kmの鉄道網を誇り、バスや船舶事業も展開していた。
職員数は1980年代には40万人に達し、その後の合理化により1986年には27万7000人にまで減少した。
イメージが悪い理由
「国鉄の乗務員は不親切だった」
「横柄な態度で、乗客に高圧的だった」
という話は、昭和の鉄道利用者の間で広く語られている。しかし、このような評価が生まれた背景には、いくつかの要因がある。
国鉄が存在していた1949年から1987(昭和62)年にかけて、鉄道業務は非常に過酷な労働環境だった。乗務員の勤務は長時間に及び、当時の列車ダイヤは現在ほど整備されておらず、遅延が頻発していた。特に昭和40~50年代には、労使関係の悪化によりストライキや労働争議が頻繁に発生し、現場の職員にとっては厳しい状況が続いていた。こうした労働条件の悪さがストレスとなり、結果として乗客への対応がぞんざいになることもあったのかもしれない。
また、国鉄は戦前の鉄道省を引き継いだ官僚的な組織であり、職員の意識も「公務員的」な側面が強かった。鉄道が公共交通としての役割を担っていたため、「乗客はお客様」という感覚が希薄になりやすい環境だったと考えられる。現代の鉄道会社では、サービス業の一環として接客が重視されるが、当時の国鉄職員にとっては「時間通りに列車を動かすこと」が最優先の使命だった。この価値観の違いが、利用者との間に温度差を生んだ可能性がある。
さらに、昭和40~50年代の国鉄は労働組合の力が強く、頻繁にストライキが実施された。特に、動労(国鉄動力車労働組合)や国労(国鉄労働組合)などの組合は強硬な姿勢をとることが多く、経営側との対立が激化していた。この影響で、乗務員によるストライキによる列車の運休が日常的に発生し、利用者の不満が高まった。「国鉄職員は乗客をないがしろにしている」という印象が、態度の悪さに繋がったのだろう。
地方と都市で異なる国鉄の接客スタイル
国鉄の乗務員は本当に横柄な態度をとることが多かったのだろうか。実際、乗務員の対応は路線や地域によって大きく異なっていた。
地方のローカル線では、乗務員と乗客の距離が近く、親しみやすい対応をする職員も多かった。例えば、乗客が少ない駅では駅員が荷物の積み降ろしを手伝ったり、利用者と世間話をすることも珍しくなかった。
一方、都市部の主要路線では、通勤ラッシュによる混雑や運行本数の多さが影響し、乗務員が一人ひとりの乗客に丁寧に対応する余裕がなかった。特に、ダイヤの乱れが発生すると、職員の対応も厳しくなる傾向があった。
また、「昔の国鉄はよかった」という声も少なくない。例えば、新幹線ではパーサーと呼ばれる女性乗務員が配置され、手厚いサービスを提供していた。さらに、ブルートレイン(寝台特急)では、乗務員が乗客のために細やかな気配りを見せることもあった。このように、すべての国鉄職員が態度が悪かったわけではなく、路線や状況によって対応の質に違いがあった。前述のSNS上でも、このような声が寄せられていた。
1987年の国鉄分割・民営化により、JR各社が発足すると、サービス向上が積極的に進められた。民営化後、各社は顧客満足度を重視する経営方針を採用し、接客マナーの研修が強化された。
例えば、JR東日本やJR東海は、サービス向上のためのマニュアルを導入し、駅員や乗務員の応対を改善した。この変化が、結果的に「国鉄時代は態度が悪かった」という比較対象を生み出した可能性がある。つまり、現在のサービス水準が向上したことで、過去の国鉄時代の対応が「悪かった」と語られやすくなったのだろう。
民営化後の変化と国鉄の再評価
国鉄の乗務員に対する評価は、時代背景や組織文化を考慮せずに語ると一面的になりがちだ。
確かに、一部の乗務員の対応が悪かったケースもあっただろう。しかし、それは労働環境の過酷さや、組織の官僚的な性格、労使対立といった要因が影響していた可能性が高い。
また、地方路線などでは親しみやすい乗務員も多く、すべての国鉄職員が横柄だったわけではない。
民営化後のサービス向上によって、相対的に「国鉄時代の乗務員は態度が悪かった」と認識されやすくなった面もある。
したがって、単純に「昔の国鉄職員は悪かった」と決めつけるのではなく、その背景を理解した上で、よりバランスの取れた評価をすることが重要だ。
なお、本稿はこれで終わりではない。皆さんの思い出をぜひ教えてほしい。酷かった思い出やよい対応を受けた思い出、何でも構わない。民間企業のJRにはない点について論じ合おう。
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みんなのコメント
自分は車両検修畑の担当だったのでお客様と接することはほぼありませんでしたが現場系職員は縁故採用が大多数で公平な選考を経ず採用されるため、中には暴走族兼務のヤンキーとかヤクザまがいの不良職員もいました それでも鉄道マンのプライド、というものは上から下まで厳然と貫かれていて、列車は何がなんでも動かすんだ、という職務を超えた連帯意識がありました。今のJRにはその点が感じられないのが残念です