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打倒N-BOXまでもうちょい!? 新顔スペーシアベースの誕生理由がらしさ満点だった

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打倒N-BOXまでもうちょい!? 新顔スペーシアベースの誕生理由がらしさ満点だった

 スズキ「スペーシア」は多彩なバリエーションを持つ。今回、注目していくのは、2022年8月に販売された軽商用車「スペーシアベース」だ。このモデルは、「スズキだから誕生した」と言えるだろう。その理由について、解説と考察をしていく。

文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI、平野学、ベストカーweb編集部

打倒N-BOXまでもうちょい!? 新顔スペーシアベースの誕生理由がらしさ満点だった

■軽の販売総数のうち半数以上!! 「スーパーハイトワゴン」の人気はどこから?

スーパーハイトワゴンは全高が高いため、車内が広く乗り降りもしやすいので利便性がとても高い。各社から多種多様なモデルが登場している

 2022年に国内で販売された新車のうち、軽自動車が39%を占めた。このなかでも特に好調に売られているのが、スーパーハイトワゴンと呼ばれるタイプだ。

 スーパーハイトワゴンは、全高が1700mmを上まわり、車内の広さは軽乗用車で最大級になる。大人4名が余裕を持って乗車できて、後席を格納すると、自転車などの大きな荷物も積める。後席側のドアはスライド式だから、子供を抱えた状態でも乗り降りしやすい。

 スーパーハイトワゴンは、軽乗用車の販売総数のうち、50%以上を占める。その一番の理由は優れた実用性だが、豊富なバリエーション構成も注目される。スーパーハイトワゴンの大半に、価格が求めやすい標準ボディと、カスタムなどと呼ばれるエアロパーツを備えたタイプが用意される。同じ車種で、内外装や価格帯の異なるタイプを選べるため、幅広いユーザーをカバーしている。

■スペーシアは4種類も!! 今やN-BOXに迫る勢いに

多彩なバリエーションを用意するスペーシア。写真は2018年に追加設定されたSUVテイストのスペーシアギア

 そして、バリエーションの最も多彩なスーパーハイトワゴンがスズキスペーシアだ。標準ボディ、エアロパーツを装着したスペーシアカスタム、SUV風のスペーシアギア、さらに商用車に属するスペーシアベースも用意する。ひとつの車種に4つのシリーズを設定する軽自動車は、ほかには見られない。

 ちなみにスペーシアの前身は、パレットと呼ばれるスーパーハイトワゴンだった。外観のバランスは良かったが、全高は1735mmで、スーパーハイトワゴンでは少し低い。視覚的な安定感を得るために、ボディの側面も上に向けて絞り込んだから、広々感を強調できず売れ行きが伸び悩んだ。

 そこで2013年に発売された初代(先代)スペーシアは、ボディパネルの絞り込みを抑えて、角張った形状に仕上げた。2017年に登場した2代目の現行型は、全高を1785mm(ルーフレール装着車は1800mm)まで高め、広々感をさらに強調している。

 スペーシアはボディタイプを豊富にそろえたこともあり、売れ行きが好調だ。標準ボディ+カスタム+ギアの届け出台数を合計すると、2022年の1カ月平均は8351台であった。軽自動車の販売ランキングは、1位が国内販売の総合トップになるホンダN-BOXで、2022年の1カ月平均は1万6850台、2位はタントで8984台だから、スペーシアは僅差で3位に入った。

 そして軽商用車カテゴリーのスペーシアベースは、2022年8月26日に発売され、同年9月から12月の1カ月平均は1324台だ。乗用タイプのスペーシアと合計すれば、1カ月平均は9675台に達してタントを上まわり、軽自動車の実質2位になる。

■誕生理由がN-VANと全然違う!! スペーシアベース発売の理由が衝撃

軽乗用車のスペーシアのボディを利用しながら商用車に仕立て直したスペーシアベース

 軽乗用車をベースに開発された軽商用バンには、ホンダN-VANもあるが、スズキとは事情が異なる。ホンダは他社に商品を供給するOEM関係が乏しく、量産効果を得られないため、今はスズキエブリイのような専用プラットフォームの軽商用バンを開発していない。そこで大量に生産されるN-BOXをベースに、N-VANを開発した。

 しかし、スズキにはエブリイも用意され、スペーシアをベースに軽商用バンを造る切実な理由はない。それなのにスペーシアベースを開発した背景には、乗用車のスーパーハイトワゴンベースにした軽商用バンに、根強い需要があると判断したからだ。

 開発者によると「遊びと仕事の両方に使える軽自動車が欲しい」「軽乗用車のように運転しやすい軽商用バンを使いたい」「軽商用バンでもカッコ良さや充実した快適装備が必要」といったユーザーの意見があったという。

 その期待に応えたのがスペーシアベースだ。スズキには前述のとおり本格的な軽商用バンのエブリイがあるから、スペーシアベースはN-VANよりも乗用車に近い。外観、インパネ、運転席と助手席の座り心地、安全&快適装備は、軽乗用車のスペーシアとほぼ同じだ。後席と荷室だけが専用設計になり、荷物を積みやすい。専用のマルチボードをデスクに使って、リモートワークなどもしやすいように配慮されている。

 スペーシアベースは、実際にはどのように使われているのか。販売店に尋ねた。「以前からスペーシアの後席を格納して荷物を積み、配達などに使う用途があった。そのようなお客様には、さらに荷室を使いやすいスペーシアベースが人気を得ている。また少人数でアウトドアに出かけたり、車内でデスクワークをするお客様にも好評だ」。

■ニーズ察知するのウマすぎ!! スズキの市場調査は大昔からお見事

1993年に登場した初代ワゴンR。背の高い軽自動車の先駆けとなった

 スズキは1993年に、初代ワゴンRを発売した。この時点からワゴンRは、後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、平らで広い荷室が得られた。軽い荷物の配達といった仕事にも使われ、スズキは「軽乗用車のビジネスユース」に古くから慣れている。そして初代ワゴンRも、ミニバンのように天井と着座位置を高めた軽自動車の先駆けだった。

 1990年に登場した三菱ミニカトッポは、着座位置がミニカと同様に低く天井だけを高めたが、ワゴンRは座る位置も含めて高く設定されて空間効率が優れていた。そのためにワゴンRは人気車となり、初代ムーヴなど追従する軽自動車も多く発売され、背の高い車種を中心とした今日の軽自動車市場が形成されている。

 スズキはもともと薄利多売の軽自動車を中心に手掛けるメーカーだから、車両だけでなく、開発や生産も合理的に行わないと企業として存続できない。そのためにスズキは、エンジンやプラットフォームの共通化だけでなく、ひとつのボディを使って複数のタイプをそろえることが多い。現行ワゴンRにも、標準ボディ、カスタムZ、スティングレーがある。

 またスズキは、日本のユーザーのカーライフを細かく観察して、時代に合ったヒット商品を生み出してきた。「こういうクルマが欲しかった」と喜ばれる商品開発を、他社に先駆けて定期的に行っている。

 それが1970年の初代ジムニー、1979年の初代アルト、1993年の初代ワゴンR、2002年の初代アルトラパン、2013年の初代(先代)ハスラーなどで、スペーシアベースもこのなかに含まれる。

■最短2カ月納車ってマジ!? やっぱスペーシアベースが魅力的すぎる

スペーシアベースでは室内空間を自由にアレンジできるマルチボードを装備。マルチボードを上段に設置すればデスクのように使うことができる

 スペーシアの開発者は「コロナ禍でリモートワークの機会が増えたが、お客様によっては、ご自宅で仕事をしにくい。スペーシアベースの後席を倒してベンチのように座り、マルチボードを使えば、好きな場所に出かけてリモートワークができる」という。

 コロナ禍と、ノートパソコンがあればどこでも仕事ができる今の時代に合った商品で、スズキの商品開発の典型といえるだろう。日本のユーザーの生活を見据えた商品開発は、スズキに限らず、今の軽自動車が高い人気を得ている秘訣でもある。

 なおスペーシアベースの納期は、販売店によると「2カ月から3カ月」とのことだ。乗用車のスペーシアを含めて、今の新車では納期が短く、購入しやすいこともメリットになっている。

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みんなのコメント

13件
  • ミラウォークスルーバンやハイゼットキャディーのように
    先行しても目立たないダイハツ

    使い方やコンセプトのアピールが市場ニーズとずれているのでしょう

    結局あとから市場の売れ行き/使い方からコンセプト変更して後追いと思われてしまう
  • 少なくとも後部座席はおまけ。
    フル乗車を常用する人には向かない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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