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最新のプジョー 2008に乗りながら、SUVに積極的でなかったプジョーのルーツを辿る【プジョー今昔ストーリー/その9】

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最新のプジョー 2008に乗りながら、SUVに積極的でなかったプジョーのルーツを辿る【プジョー今昔ストーリー/その9】

「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は、最新のプジョー 2008に乗りながら、プジョー SUVのルーツ的な存在のクルマについて考えてみたい。(タイトル写真は、上が206SW、下が現行型の2008)

スポーティカーのようにも楽しめる2008
2008はその名のとおり208の兄弟モデルにあたるが、意外にも大きなボディサイズを持つ。全長は4305mmあり、サイズ感だけでいえばむしろ4450mmの3008に近い。とはいえ多くの立体駐車場に対応できる全高(1550mm)もあって、全体的なボリューム感はコンパクトに感じられる。スタイリングの面でも軽快感が感じられ、プジョー独自のシャープなデザインとなっている。

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■プジョー コンパクトモデルのボディサイズ
・208:全長4095mm×全幅1745mm×全高1465mm
・2008:全長4305mm×全幅1770mm×全高1550mm
・308(新型):全長4367mm×全幅1852mm×全高1444mm(参考/欧州仕様値)
・3008:全長4450mm×全幅1840mm×全高1630mm

その外観の印象どおり、運転してみても2008は軽快だ。車両重量はSUVながら1270kgにおさえられている。この軽量さはCMP(コモン モジュラー プラットフォーム)と呼ばれるプラットフォームの特質だろうし、2WDのFFであることや、3気筒エンジンを搭載していることも効いているようだ。

走りは、208とはけっこう違いがある。2008のホイールは208のGTグレードと同じサイズの17インチで、タイヤは215/60というSUVらしい少しボリューミーなサイズを履いており、場面によっては接地感にブレを感じもなくはない。けれども、けっしてドタバタ感はなく乗り味はしなやかさを保っている。むしろハイトがあるぶん、より衝撃吸収をしてくれているようだ。ボディ剛性の高さから不快感を感じないし、高速道路の目地段差などはタタンと軽やかに越えていく。

ワインディングロードを走らせると、2008の良さががぜん出てくる。車高と重心位置が208より高いのでコーナーを攻めるようなキャラクターではないが、そこそこのハイペースで走ると実に小気味よい。足を締め上げてロールを抑えられており、また軽量ボディゆえ、姿勢変化の少ないスポーティカーのようにどこまでも気持ち良く走れる。

「じわっと荷重移動させてじっくりロールさせる」という、昔ながらのプジョー独特なソフトでしなやかな印象をあまり感じない点から一抹の寂しさはある。しかし、そんな感情を忘れらさせてくれるほど完成度の高いシャシであることは間違いない。このクラスのベンチマークといって良いような気もする。

従来から定評のある3気筒ターボエンジンは208と同じ1.2Lながら、最高出力は208を30ps上まわる130psを、最大トルクは25Nm大きい230Nmを発生する。サウンドもなかなか心地良く、これも走りに魅力を与えているようだ。

プジョーがSUVに積極的でなかった理由とは
SUVらしさを強めた現行型と違い、2013年に発表された従来型の初代2008はクロスオーバーと呼ぶにふさわしいモデルだった。208の派生バージョンという雰囲気を残しており、SUVになるのを遠慮していたようなイメージがあった。プジョーがSUVカテゴリーへと本格的に進出したのはわりと最近で、現行の2代目3008/5008(日本発売:2017年)からといえるだろう。それ以前のSUVは、三菱からのOEMモデルに頼っていた。

なぜプジョーはSUVに対して客観的な立場をとっていたのか、その理由を考えてみた。必ずしもSUVとは関係ないかもしれないが、フランスでは早くから舗装路が普及していたこともひとつあるかもしれない。たとえば全仏ラリー選手権は、全戦ターマック(舗装路)で開催される。山間部のスペシャルステージが舗装路だけで成り立つ伝統が古くからあったわけだ。もちろん未舗装路のラリーもあるのだが、マイナーカテゴリーに位置付けられている。

フランスには未舗装の農道もある。こうした道を走るモデルとして、過去にシトロエン 2CVやルノー 4が開発され、派生モデルも大量生産されてきた歴史があり、これらがフランス流のSUVだったといえなくもない。一方のプジョーはそういったカテゴリーに興味を示さなかったこともあり、乗用車の保守本流を歩んできたメーカーだといえる。

別の見方をすれば、「アメリカの影響を受けなかった」とも言える。SUVというカテゴリーはアメリカで育ったもので、日本はその動向に早くから影響されてきた。しかしフランスはそうでもなかった。独自の文化を好む傾向のあったフランスでは、独自のクルマ社会を育んできたわけで、これはヨーロッパ全般にもいえる傾向だ。

日本でも人気を集めた206のワゴン版「SW」
ただ、ドイツ車メーカーなどは国際水準のSUVを比較的早くから開発していた。要するに、アメリカ市場でクルマを多く売ることを考えれば、本格的なSUVを製造する必要性も自然と高まるわけだ。残念ながらフランス車メーカーは、アメリカ市場であまりクルマを売っていない。

しかし世界的にSUV人気が高騰してきたことを受けて、いよいよフランスの老舗プジョーもSUVをつくらずにはいられなくなったという図式だ。とはいえ、その気になればすぐに魅力的なSUVを開発できてしまえるところが、プジョー開発陣のやり手なところだろう。

2008に至る進化の足跡は、わりとはっきり辿ることができる。戦後の200シリーズの最初は204で、204は基本形がセダンだったので、小柄でありながらもワゴン版が設けられた。しかし次の205は、コンパクト ハッチバックに徹しており、ワゴン版はつくられなかった。ところが、続く206にはワゴン版の206SWが設定された。
 
これは日本でいえば、さしずめフィットシャトルやファンカーゴのような存在だが、そういう積載量を求めるニーズにプジョーは伝統的手法で応えたといえる。このクラスでワゴンは比較的珍しかったこともあり、日本で人気を集めた。

プジョーは続く207にもSWを設定。そして注目したいのが、その207SWにクロスオーバーSUV風の艤装を施した207SWアウトドアを加えたことだ。これはいうなれば2008進化における、ミッシングリンクだ。次のモデルチェンジでは、ついにこのワゴンボディをクロスオーバーSUV仕立てに進化させた初代2008が誕生する。そしてそれがさらに、SUVに特化した2代目2008へと進化したというわけだ。(文:武田 隆)

[ アルバム : プジョー 2008とプジョーSUVのルーツ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • >その気になればすぐに魅力的なSUVを開発できてしまえるところが、プジョー開発陣のやり手なところだろう。

    ステランティスグループのSUVユニット使い回しでプジョーの開発は殆ど不要w
  • そして、シムカ(タルボ)=マトラ・ランチョのことは抹殺するのがこのライターのやり方。2008のウィンドウグラフィックは、明らかにランチョのそれを意識しているというのに。



    そんなにもばれたくないのかな?本当はシムカにプジョーのバッジを貼って売っていることが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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