マセラティのSUV「レヴァンテ」に追加されたハイブリッド・モデルに小川フミオが試乗した。電動化を推し進めるマセラティの最新SUVの実力とは?
エコで俊足
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顧客がなにを欲しているのか? それを的確にとらえているブランドはやはり強い。最近のマセラティがまさに好例だ。「クワトロポルテ」と「ギブリ」のセダン、それにSUVのレヴァンテ。日本におけるラインナップは、年次改良を経て、どんどんよくなっている。そして、いま注目したいのが2021年12月に発売された「レヴァンテGTハイブリッド」。まるでスポーツカーのように走るからすごい。
そもそも出自はレーシングカーで、戦後は高性能GTを手がけてきたマセラティ。このところ、運転する楽しさが、以前にも増して充実してきている。レヴァンテも同様。全長5m、全高1.68mのボディを持つやや大きめサイズのSUVでありながら、ステアリングのキレのよさはスポーツカーの域だからすごい。
ハイブリッド(ホームページでは単に「GT」と表記されることもある)は、1995cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンに電気モーターを組み合わせた全輪駆動。出力軸にかけたベルトを電気モーターで駆動して発進時にトルクの上乗せをする「BSG」と、排圧に頼らない「eブースター」なる電動ターボチャージャーを装備。330ps(243kW)のシステム最高出力と450Nmのシステム最大トルクを発生する。
ラインナップで上に位置するのは2979ccV型6気筒搭載モデル。パワーは350ps(257kW)でマックストルクは500Nmなので、数値は上である。ただし、静止状態から100km/hへ達するまでに要する時間は、どちらのモデルも6.0秒。さらにCO2排出量では、ハイブリッドのほうがが20%も少ない、と、イタリア本社の資料に記されていた。
動きは俊敏
乗った印象は、かなりスポーティだ。ステアリングの遊びはかなり少なく、中立付近から左右いずれかに動かしたときのボディの反応はとてもすばやい。乗り始めてまだこのクルマに慣れていないときは、少しだけ焦るほど敏感にボディのノーズ部分が向きを変える。
かつ、足まわりもしっかりしている。ドライブモードがノーマルでいても、意外なほど硬い。スポーツにすると、ダンパーがしっかり締まり、動きはよりフラットになる。印象はSUVというよりスポーツカーに近いとさえ思えるほど。
48ボルトのシステムを使うBSGのおかげで、ダッシュは鋭い。小さなカーブが大好物で、さっとノーズがコーナーに入っていき、しっかりとボディが路面に吸いつくようまわっていき、出口が見えたところでアクセルペダルを踏み込むと、ドンッと加速。
加速は、アクセルペダルを軽く踏むだけで、みるみる速度をあげていく。いわゆる“ピックアップ”のよさが身上だ。かすかにエンジンの排気音が聞こえてくる。「(4気筒ながら)V6なみのいい音にチューニングしている」と、マセラティの資料にあるとおり、これもオーナーへの“ご褒美”だ。
動きは俊敏で、デリケート。でも車内は、クッションの厚いシートがからだをしっかり支えてくれるし、ステアリング・ホイールをはじめ、コントロール類の操作は実に気持ちよい。かつ静粛性がうんと高い。
ホイールベースが3mを超えているため、後席もかなり広い。前席シートの下につま先を入れられるで、足元も広々。180cm超級がふたり座っても窮屈じゃないだろう。
マセラティならではの気概を感じるモデル
日本で売られるレヴァンテには、「モデナ」と「モデナS」なるV6搭載モデルと、「トロフェオ」というすばらしいフィールの4.0リッターV8搭載モデルが、GTハイブリッドと並行して設定されている。
レヴァンテで、ゆったり、しかし、エンジンのフィールを楽しみながらドライブしたいというひとには、V6やV8モデルがいいかもしれない。繰り返しになるけれど、クルマとしての出来がうんとよくなっていて、ハンドリングもいいし、乗り心地もいいし、それでいて快適性が向上しているからだ。
ハイブリッドは、少しおもむきが異なる。
SUVといっても、ほかのSUVとは一線を画していたい……というようなマセラティならではの気概を感じるモデルである。
乗っていると、だんだん心が晴れやかになってくる。カーブをこなしていくと、ひとつひとつ、小さな山を超えていくように、運転の達成感がある。こんなふうに、ドライバーの気持ちを上に引き上げてくれるようなSUVはそうそうない。
所有するよろこびをしっかり感じさせてくれるクルマなのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
GQらしさ全開。
ハイブリッド+イタリア車=故障との戦い
かもしれない。