11代目となる新型シビックに試乗した。新型のハッチバックモデルはEXとLXの2グレードを用意しているが、そのうちの上級グレードとなるEXである。ミッションはCVTと6MTが選べる。今回はより幅広いユーザーに向くCVTのほうだ。
なお、両グレードは外観からはほぼ判別不可能。装備類としては、EXのほうにLEDフォグライト、LEDアダプティブコーナリングライト、運転席8ウェイ&助手席4ウェイパワーシート、10.2インチデジタルグラフィックメーター(LXは7インチ)、BOSEプレミアムサウンドシステムなどが奢られる違いがある。タイヤはどちらも235/40R18サイズだが、ホイールデザインは微妙に異なる。逆に言えば、それ以外の充実した装備、先進運転支援機能のホンダセンシングの内容は両グレードに違いはない。
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エクステリアデザインは先代の延長線上にあるものの、全長が30mm伸び、ホイールベースは35mm拡大した2735mm。全幅1800mmは先代と同じである。ただし、リアフェンダーの造形はリアトレッドが10mm広がったこともあってか、一段とボリウム感あるものになり、フェンダーアーチと18インチタイヤとの隙間が国産車としては小さいこともあって、伸びやかかつ、地を這うようなアピアランス、スポーティな佇まいを見せる。
運転席に乗り込めば、まずはフィットほどではないにしても、細くデザインされたAピラーがもたらす前方、斜め前方視界の良さと、スポーツシートに低く座らせるスポーティなドライビングポジションの両立が好ましい。水平基調のインパネで特徴的なのは、ハニカムメッシュデザインのエアコン吹き出し口だ。その風向き調整のノブもなかなか高級感があり、インテリア全体のイメージは先代より洗練され、高級感があると言っていい。
インパネ中央のタッチパネル式モニターは7インチ。Honda CONNECTに最適化されたナビゲーションシステムを標準装備しているのは歓迎できるものの、今時としては決して大画面とは言えないのがちょっと残念だ。しかし、電子パーキングブレーキ&オートブレーキホールド機能といった、現代的かつ不可欠な機能はしっかりと揃えている。EXグレードの場合、運転席も助手席もパワーシートとなるから、ジャストなシート位置が決めやすいメリットもある。
後席にも座ってみたが、ホイールベースの延長によって、足元の余裕はこのクラスとしては文句なし。後席エアコン吹き出し口も完備されるから、後席でも快適かつリラックスした乗車が可能になるはずだ。
パワーユニットは先代同様、1.5Lダウンサイジングターボ、182ps、24.5kg-m。最高出力は先代と変わらないものの、低回転域から発揮されるトルクは先代を上回る。ただし、燃料は欧州車基準!?のハイオクガソリンが必要である(先代はセダンがレギュラー、ハッチバックはハイオクだった)。
走り出せば、まずは地を這うような低重心感覚溢れるドライビングフィールが現代のシビックらしいスポーティな世界観を印象づける。それでスポーティなキャラクターの18インチタイヤだから、乗り心地はゴツゴツしてかなり硬め・・・と思ったら大間違いだった。たしかにソフトな足回り、乗り心地ではあるはずもないのだが、極めて高いボディ剛性、足回り剛性もあって、実にスムーズかつ上質な、骨太でしっかりとした乗り心地を味わせてくれるのだ。言い方を変えれば、ハッチバックボディのスポーティカーに乗っていながら、段差越えを含めて極めて快適なドライブが楽しめるということだ。このサジ加減、なかなかだと思え、ファミリーマンからスポーティーカーファン、そして運転好きな女性ユーザーまでもを虜にしてくれるファンな乗り味と言っていい。
パワー的にはCVTとの組み合わせもあって、すこぶる速いとは言えない(車重は1370kgと決して軽くない)。しかし、アクセルペダルの踏み加減に応じた、リニアで伸びやかな、国産4気筒エンジンとしては最上級と言えるスムーズさを伴った加速フィールが気持ちいい。
ドライブモードをスポーツにセットすれば、アクセルレスポンスは一気に高まり、持てるパワーを最大限に引き出すことができる。パドルシフトの操作によって、かなりスポーティな走りも可能になるということだ。
操縦性も素晴らしい。制御が見直されたパワーステアリングは応答性に優れ、正確で、広がったトレッドの恩恵もあり、直進でも、カーブでも、ファンなハンドリングととともに、姿勢変化最小限の安定感あるフットワークテイストを披露。4輪が常にしっかり確実に路面をとらえていることが分かりやすい、極上のロードフォールディング性能を味わせてくれるから、超高性能でなくても、クルマを操る楽しさを目いっぱい感じ取ることができるのである。
室内の静粛性については、さすがに235/40R18サイズのスポーツタイヤを履くだけに、路面によってロードノイズは決して小さくはないものの、速度を増すほどにそれが気にならなくなる。そうした新型シビックのドライブ、クルージングの魅力を倍増してくれるのが、EXグレードを選んだユーザーだけが享受できる、まるでコンサートホールの最高の席に座っているかのような臨場感あるサウンドを聴かせてくれるBOSEプレミアムサウンドシステムの装備である。
シビック用に専用化されたBOSEプレミアムサウンドシステムは、なんと12スピーカ―を備え、ラゲッジルームの使い勝手を損なわない右壁面にクラス最大級の10Lボックスの20cmサブウーファースピーカーを埋め込むとともに、左右リアクォーターには8cmミッドレンジサラウンドスピーカーを搭載。
BOSEならではの繊細でクリアな高音、自然なボーカルを忠実再現する中音、音量の大小にかかわらないリッチで豊かなパワー感ある重低音、そして車内を包み込むようなサラウンド感たっぷりの音の世界を、前席、後席を問わず、聴かせてくれるのだから、走り好きで音楽ファンでもあるユーザーにはうってつけの1台となりうるはずである。
ホンダ・シビック
https://www.honda.co.jp/CIVIC/
文/青山尚暉
写真/青山尚暉 BOSE
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みんなのコメント
実用性と経済性にしか見て無い日本人。
30年前には、日本でもグローバルと同じシビックが普通に人気だったはず。
日本、すっかり貧乏ガラパゴスになってしまったのだなあ。