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走りだけがウリじゃない! ヤリスの凄さは「高齢者フレンドリー」な装備にあった

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走りだけがウリじゃない! ヤリスの凄さは「高齢者フレンドリー」な装備にあった

高齢者や運転の苦手な人をサポートする注目装備

 小型SUV(スポーツ多目的車)人気の市場動向にもかかわらず、7~8月は国内販売の1位を記録するなど、好調な売れ行きを見せているトヨタの新型ヤリス。

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 世界ラリー選手権(WRC)での活躍もあって走行性能の高さに注目が集まりがちだが、ヤリスの魅力はそれだけではない。高齢者や運転が苦手だと思っている人を思いやるオプション装備が用意されているのだ。

運転席シートが外側に回転

 そのひとつが、運転席と助手席に設定のある「ターンチルトシート」だ。これまで助手席の回転シートなど乗降を補助する機能が福祉車両としてあったが、それが運転席にも設定されたのである。

 運転席への回転シートの設定は、じつは1982年に2代目のスズキ・アルトで採用されたことがあった。初代アルトは1970年代後半に増加しはじめた女性の運転者向けに開発された経緯がある。それは、家庭に2台目のクルマとして軽自動車が浸透することも意味し、中古車市場を視野に入れた全国統一47万円という価格設定で一躍人気を得たが、もうひとつの狙いは女性を取り込むことだった。

 そしてアルトが2代目となる際に、スカート姿でも足元を気にせず乗降できるようにと、運転席の回転シートが設定されたのである。しかしその後は、福祉車両として助手席などに採用されることはあっても、運転席の回転シートは姿を消していた。

 ヤリスで新たに設定されたターンチルトシートは、車外側へ座席が回転する際に、内部のリンク機構の働きにより、回転しながら座席がやや傾くので、路面に足が届きやすく、かつ車体のサイドシルでズボンやスカートなどを汚さずに済む仕掛けが組み込まれている。

 使い方は簡単で、座席の回転位置まで後ろへさげ、定位置に来ると座席側面にある回転させるためのレバーが表に張り出し、これを引っ張って座席を外側へ回転させる。そこで足を車外へ出したあと、もう一度レバーを引っ張ってさらに回転させると座面が少し傾きながら外側へせり出す。こうすることで、クルマから外へ出やすくするのだ。降りた後は、背もたれを軽く押すだけで座席は元の位置に戻り、ドアを閉めることができる。

 これが運転席にも取り付けられることにより、スカートを履いた女性などが足を揃えて乗降しやすくなる。同時に足腰の動きに制約を受けやすい高齢者も、楽に乗降できる手助けとなる。

 高齢になると体力が落ち、座席位置の高いSUV(スポーツ多目的車)やミニバンなどへの乗降が簡単ではなくなる。私自身、SUVの新車試乗では、とくに降りるときに地面に足が届かず、飛び出すようにして降りなければならないときが多々ある。また、両親の介護をするなかで、なかなか降りられないという状況を手助けするのに苦労した経験もある。

 その点、このターンチルトシートを活用すれば、足を地面に着け、しかも座席ごと体が車外へかなり出るため、両手を引っ張れば車外に立たせやすくなる。運転席側であれば自分で運転する際にも乗降しやすく、操作にそれほど時間を要しないので、交通の邪魔にもなりにくいだろう。

 このターンチルトシートは、永年にわたり福祉車両の開発に関わってきた技術者が、座席下に内蔵されるリンク機構を工夫し、誕生した。ヤリスで評判を得れば、ほかの車種にも展開されていくのではないか。また、そもそも降りる際にサイドシルでズボンやスカートの裾が汚れやすいSUVに標準装備となれば、老若男女をとわず嬉しい装備になりそうでもある。

スイッチひとつで駐車をアシスト

 もうひとつ、「トヨタチームメイト・アドバンスト・パーク」という装備は、クルマの前後の切り替え(シフト操作)以外は、ハンドル・アクセル・ブレーキを自動操作し、駐車を手助けしてくれる機能だ。

 カメラとソナーでクルマの周囲360度を監視しながらの作動となるので、動く対象物やポールなどを検知し、警告することに加え、ブレーキ制御も行なって接触回避を支援してくれる。また、駐車枠のない場所でも使えるので、自宅の車庫などでも利用できる点は大きい。

 もちろん、運転者自らが安全の確保をすることは当然とはいえ、周囲を見まわすのに体の動きや首の動きが簡単でなく、あるいは体の向きを変える方向も制約を受けやすい高齢者にとって、狭い場所での操作となる駐車を手助けしてくれる機能はありがたい。高齢者に限らず、運転のなかでも駐車が苦手だという運転者の声もよく聞くので、気軽にクルマで出かけられる装備の一つともいえる。

 走行中の運転支援機能で安全と安心を高めるクルマは軽自動車にも広まっているが、ヤリスの注文装備は、乗降や駐車といったクルマでの移動で欠かせない第一歩での手助けとなり、高齢者にとってクルマの利用を続ける可能性を広げるものになるのではないか。

 体調などの状況次第では運転免許証の返納が求められるのも事実だが、まだ運転できる体調であるうちは、こうしたクルマの装備が、クルマでの外出を継続させ、それが社会との接点をもたらし、精神的にも健康に暮らす助けとなるだろう。

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