積算1万3042km アダプティブ・クルーズコントロール
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
新型コロナウイルスによるロックダウン直前、同僚がマツダ3のアダプティブ・クルーズコントロールを試した。ところが、機能には納得できなかったそうだ。
筆者はほかのクルマでも、アダプティブ・クルーズコントロールが付いている場合、可能な限り機能させて運転してきた。英国の混雑した交通状況での反応を理解したかったし、注意喚起や車線の認識などで、助けてくれると考えていたからだ。
同僚はマツダ3の場合、割り込んでくるクルマがあると勘違いして過剰反応し、過度にブレーキをかける傾向がある、と感じたらしい。機会があれば、改めて検証してみたい。
最終回 眺めているだけで満足感がある
世界を変える大きな出来事が起きた。今後迎えるかもしれない、経済の下降を考えると不安になる。9か月前がウソのようだ。
新型コロナウイルスの流行によって、仕事環境と日常生活に大きな変化が生じたことは、英国でも同じ。筆者の身近にある快適さを、ありがたく感じるようになった。最近はようやく、生活の一部が普通に戻りつつある。
マツダ3へも影響があった。広報車両の貸し出し中止が決まり、長期テストが早く切り上げることになったのだ。3月中旬からロックダウンになった英国。運転を楽しめる機会は限られていた。
アパートの外に停めてあるだけでも、マツダ製のハッチバックは美しい。インテリアデザインも同様だ。窓から眺めたり、洗車したり、動かない快適なオフィスとして使用するだけで、満足感を得られるクルマだった。
ファミリー層向けのハッチバックで、こう感じれるモデルは多くはない。
スカイアクティブ-XとGとの比較
1万3000kmほど走ったマツダ3の長期テストは最後。これまでに感じたことをまとめてみたい。
火花点火制御圧縮着火とマツダが呼ぶ、ガソリンエンジンのスカイアクティブ-X。市場を変えるような影響力はあるだろうか。マツダは親切にも、1周間ほど通常のガソリンエンジン、スカイアクティブ-Gを搭載したマツダ3を比較のために貸してくれた。
控えめなエンブレム意外、スカイアクティブ-XとGとの見た目上の違いはない。どちらのクルマも、マフラーは左右1本づつだ。
冷間時のスタートも、あまり差は感じられない。エンジンを始動すると1分間ほど、アイドリングの回転数が高めに保たれる。触媒コンバーターを、最も効率的に働く温度へ上昇させるため。
温度が充分に上がれば、アイドリングの回転数が落ちる。その時、滑らかなハミングを静かに聞かせてくれるのは、スカイアクティブ-Gの方だった。目立つとまではいわないが、スカイアクティブ-Xの方が、よりしっかり聞こえる。
エンジンの違いは、郊外の道へ出るとより鮮明になってくる。どちらも常用域では、3気筒エンジンより振動は少ない。しかし3000rpm以下では、スカイアクティブ-Xの方が明らかに振動が大きく、ディーゼルエンジンのような音を発する。
Gの方が、より洗練されているように感じられる。最高出力は58psも劣るが、町中での交通に合わせて走らせる限り、明確に遅いとも感じられなかった。最大トルクが、1.1kg-m程度の差しかないからだろう。
期待ほどではなかった「X」
しかも、最大トルクを得られるのは3000rpm以上の回転域。そこまで回さないと、スカイアクティブ-Xのアドバンテージは得られない。一方でそこから上は、両者の違いが変化していく。
どちらのエンジンも高回転域まで吹け上がるが、Gの方は5000rpmに迫ったあたりで明確にパワーの伸びが弱くなる。Xの方は、まだこれから、という余裕がある。
カタログ値での差は小さくない。0-100km/h加速時間は2秒以上の開きがあるし、最高速度は19km/hもXの方が速い。
どちらもシフトダウンを積極的にして、高い回転域を保つ方がフィーリングが良いようだ。ただし、マニュアルを駆使しても、サウンドはあまり心地良いものではないけれど。
長期テストの期間、スカイアクティブ-Xの平均燃費は15.2km/Lだった。一方で、スカイアクティブ-Gを1週間走らせた燃費は、14.9km/Lほど。
試乗内容が違うから、直接の比較はできない。長期的に見た場合、Xの方がより優れた差として表れるとは思う。
XとGとの価格差は、英国では1500ポンド(20万円)。ガソリン代で取り戻すのは難しいかもしれないが、パワフルだという見返りもある。
総合して考えると、スカイアクティブ-Xの革新度は、期待ほどではなかった。性能の差はあるものの、優位性は限定的だと思う。
自然吸気で180psもある4気筒として考えれば、燃費は評価できる。しかし、フォルクスワーゲンの1.5 TSIエンジンなど、競合するダウンサイジング・ターボエンジンの場合、最高出力では劣るものの燃費は同等。低回転域から中回転域にかけては、力強さもある。
今でも視線を感じるデザイン
スカイアクティブ-Xエンジンとしての評価は別として、マツダ3との時間はとても楽しいものだった。英国の道でも見かける回数が増えてきたが、今でも周囲からの視線を感じる。より高級なクルマに乗っているドライバーからも。
インテリアは、このカテゴリーでは一番。普段遣いで利便性に問題を感じたこともない。
マツダ3はドライバーに対する訴求力と、同乗者の快適性や長距離ドライブの安楽さなどのバランスがとても良い。長期テストは終了となるが、マツダ3の強い好印象は、筆者の心に残るはずだ。
セカンドオピニオン
ファミリー・ハッチバックでは、豊かな感情的な訴えは、成功する上での必要条件ではない。しかしマツダ3のインテリアは、無視できないほどの魅力がある。
試乗車の赤いレザーシートは好みが分かれると思うが、ふくよかなセンターコンソールと滑らかなダッシュボード、絶妙なクロームメッキの用い方には、ワンランク上の雰囲気がある。同クラスのライバルと比較しても、特別感は強い。 Felix Page(フェリックス・ペイジ)
テストデータ
気に入っているトコロ
デザイン:BMWやアウディのドライバーですら、振り返って見ることがある。マツダのデザイナーの勝利だ。
インテリア:広々としているわけではないが、人間工学としても優れているし、素材感も上質。とても魅力的なデザインだと思う。
操縦性:ファミリー・ハッチバックを超える、操作の心地良いステアリングホイールやシフトレバーを備える。
気に入らないトコロ
窓:キーのボタンを長押しして、すべての窓を遠隔で開閉する機能は、夏の時期は重宝する。マツダ3には付いていないようだ。
センターコンソールのパネル:シフトノブの周囲にあしらわれたグロスブラックのパネルは、傷が付きやすい。
走行距離
テスト開始時積算距離:1207km
テスト終了時積算距離:1万4397km
価格
モデル名:マツダ3 2.0 180PS GTスポーツ(英国仕様)
新車価格:2万6675ポンド(357万円)
現行価格:2万7740ポンド(367万円)
テスト車の価格:2万7545ポンド(369万円)
ディーラー評価額:2万2178ポンド(297万円)
個人評価額:1万9714ポンド(264万円)
市場流通価格:1万8500ポンド(247万円)
オプション装備
マシングレー・メタリック・ペイント:670ポンド(8万9000円)
バーガンディ・レザートリム:200ポンド(2万6000円)
燃費&航続距離
カタログ燃費:17.2km/L
タンク容量:51L
平均燃費:15.3km/L
最高燃費:15.5km/L
最低燃費:14.8km/L
航続可能距離:775km
主要諸元
0-100km/h加速:8.2秒
最高速度:215km/h
エンジン:直列4気筒1998cc
最高出力:179ps/6000rpm
最大トルク:22.8kg-m/3000rpm
トランスミッション:6速マニュアル
トランク容量:358L
ホイールサイズ:7.0J・18インチ
タイヤ:215/45R18 89W
乾燥重量:1411kg
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:261ポンド(3万5000円/1カ月)
CO2 排出量:131g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:ホイールアライメント 36ポンド(5000円)
燃料コスト:908ポンド(12万1000円)
燃料含めたランニングコスト:908ポンド(12万1000円)
1マイル当りコスト:11ペンス(14円)
減価償却費:8175ポンド(109万円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:0.44ポンド(58円)
不具合:なし
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みんなのコメント
マツダ3には、せっかくのエクステリアとインテリアデザインに見合うパワートレインを用意して!
値段や経済性気にしてケチで中途半端なモデルだけ並べてたところで、どうせそこで狙ってる客は後席や荷室狭いだ、後方視界悪いだ、マツダはリセール心配だとか言って、結局買ってはくれないんですから。