日産車以外のEVユーザーでも契約可能。新プログラムは個人に紐付けするので複数台所有でも一枚のカードで対応できる
外部充電のみで走行する純粋なEVのことをBEV(バッテリーEV)といいます。EVをパートナーにカーラフを楽しむには充電器が必須です。そして、現時点では大きく2つの充電方法があります。
ひとつは自宅や事業所など設置したコンセントを利用した普通充電。普通充電にはパブリックなところに設置された無料タイプ、時間貸しの有料充電器もあります。いずれにしても、日本では200Vが主流ですが、最大アンペアの違いにより3kWと6kWがあります。当然、同じ時間であれば6kWタイプのほうが多くの電力を充電することができます。
もうひとつが、言わずもがな「急速充電」です。EVユーザーでなくとも、自動車販売店やコンビニエンスストアの駐車場、高速道路のサービスエリアや道の駅などに設置されているのを目にしたことはあるでしょう。基本的には時間貸しという概念で運用されています。こちらも20kW級~90kW級まで様々な種類があります。当然、数字が大きい急速充電器のほうが同じ時間に充電できる電力量は多くなります。
つまり、充電器の種類によってバッテリーの回復具合は変わってくるのです(車両が対応している必要はありますが)。そのため同じ10分であっても充電できる電力量が異なります。このあたり、燃料の給油と同じ感覚でいると混乱してしまうでしょう。
バッテリーの残量によっても電気の入り方は変わってきます。たとえば充電率50%の状態と80%の状態を比べると、同じ急速充電器をつないだとしても10分後の回復量は違うものです。50%からであれば70%くらいまで回復するようなクルマの場合、80%からでは90%程度までしか充電できないこともあります。つまり時間貸しの急速充電器であれば、効率よく入る領域でのみ使うほうが同じ料金でたくさん充電できますからオトクといえます。
本質的には充電器の時間貸しという概念はマッチしていないといえます。
しかし、これまで日本のEVユーザーの間では、そうした課題は共有されていなかったのではないでしょうか。なぜなら、日本を走っているEVの大半が日産リーフであり、そのオーナーには「ゼロエミッションサポートプログラム2(ZESP2)」という定額で充電し放題のサービスが提供されてきたからです。EVオーナーでなくとも「旅ホーダイ」というキャッチコピーを目にしたこともあるでしょうが、月額2000円という破格の料金で日産ディーラーやサービスエリアなどの急速充電器が使い放題というものです。この内容であれば効率的な充電を考えるインセンティブはわきません。空いている急速充電器につないだら時間いっぱい(おおむね30分)充電するという風に単純化して考えがちです。もちろん充電時間が長いことはうれしい話ではないので、必要なぶんだけ充電する「ちょい足し」という考え方もあります。
そうした充電インフラの使い方が変わってしまう変化が起きました。件の日産が提供している「ゼロエミッションサポートプログラム」が改定されることが発表されたのです。2019年12月16日からはじまる「ZESP3」では急速充電器の使い放題プランというのが消えました。急速充電器の使用回数については10分単位で計算され、月々10回分が含まれるプレミアム10、20回分が含まれるプレミアム20、そして40回分が含まれるプレミアム40という3タイプから選ぶようなカタチになっています(そのほか、完全従量制のシンプルプランもあります)。
料金はプレミアム10が4000円、プレミアム20が6000円、プレミアム40が10000円とこれまでのZESP2から比べると大幅な値上げとなっています。3年契約にすれば毎月1500円が値引きになるといいますが、それでもプレミアム10で2500円ですからZESP2を契約しているユーザーからすると負担増になることは間違いありません。ただし、ZESP2では従量制だった普通充電についてはプレミアムプランであれば完全無料となっています。
つまり、これまでのようにまずは急速充電器につなぐという使い方はしづらくなります。急速充電の使用についても10分単位ということは10分を1秒でも過ぎると20分ぶんを使ったことになります。ですから、バッテリーが急速充電でたくさん受け入れられるときに10分限定で使うことが賢い利用法となるわけです。前述のように急速充電器によって同じ時間でも充電能力は異なりますから、ハイスペックな急速充電器を使うほうがスマートといえるでしょう。副次的な要素として急速充電器につないだままドライバーが長時間戻ってこないために後続のクルマが充電器に列をなすといった状況も改善されることでしょう。
ケース・バイ・ケースで最適な充電器の利用法をユーザーが考える必要性が出てきたといえます。より便利になっていく世の中の風潮からすると利便性が悪くなるというのは逆行しているように思えますが、EVの普及過渡期としてはこうした変化はあり得る話とも感じます。
実際、リーフオーナーの中には、普及を促すキャンペーンとしての「旅ホーダイ」には、持続性がないサービスとして批判的な声もありました。このタイミングで無理を是正することはEVのさらなる普及に向けては前向きな変更といえる面もあるでしょう。
ところで、日産の新しいZESP3はユーザー負担が増えるばかりではありません。従来のZESP2はクルマに紐づけされていたので、複数台所有をしている(個人ユーザーでは少数派だと思いますが)場合、クルマごとに契約する必要がありました。新しいZESP3は個人に紐づけされるよう改定されています。つまり、複数のEVを所有しているユーザーでは実質的にコストダウンにつながる可能性もあります。さらにいえば、車両との紐づけがなくなるということはクルマを乗り換えたとしても継続して使えますから、日産以外のEVオーナーとなってもZESP3を利用することは可能となります。
いまや輸入車にもEVはありますが、ブランドによっては急速充電を利用できるプログラムの月料金が5000円を超えることもあります。場合によっては日産のZESP3に乗り換えたほうがオトクになるというケースが出てくるかもしれません。日産のZESP2に契約しているユーザーからは値上げと感じられる新サービスですが、業界的にはまだまだリーズナブルな設定といえるからです。
日産ZESP3についてまとめると、従来サービスの利用者からすると値上げに感じる。急速充電の使用を自主的に制限するなど普通充電主体の運用に変わっていく可能性を感じる。個人で複数のEVを所有していると日産の新サービスは便利に使えそうだ。他社の充電サポートプログラムに契約している場合コストダウンにつながることもある、といったところでしょうか。日本のEV市場においては最大派閥といえる日産の動きは、EVそのものの使い方やイメージも変えることになりそうです。
文・写真:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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