2017年までに日本・北米・欧州の全車に設定される予定
今年秋以降に発売を予定している新型レクサス「LS」のジャパンプレミアが6月26日、東京国際フォーラムで行われた。
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発表会の席では、3.5リッターV6エンジンにマルチステージハイブリッドシステムを組み合わせた「LS500h」日本仕様の実車が展示されるとともに、「目指したのは世界でもっとも安全なクルマ」という新型LSに搭載される先進予防安全技術の数々が紹介された。
2015年9月に発売された「LX」よりレクサス各車に順次採用されている「レクサスセーフティシステム+」は、フロントグリル内側にミリ波レーダー、フロントガラス上部に単眼カメラを搭載し、下記の機能を実装。2017年までに日本、北米、欧州の全車に設定される予定となっている。
●歩行者検知機能付衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ(PCS)
ミリ波レーダーとカメラで前方の車両や歩行者を検知し、警報→ブレーキアシスト→自動ブレーキで、衝突の回避と被害軽減をアシストする。自動ブレーキの作動速度域は、車両が約10km/h~最高速、歩行者が約10~80km/h。自動ブレーキの速度低減量は、車両が約40km/h、歩行者が約30km/h。
●レーンディパーチャーアラート(LDA)
カメラで車線を認識し、クルマが車線をはみ出そうになると、ブザーとディスプレイ表示、ステアリングの振動でドライバーに警告する。なお、一部車種には、電動パワーステアリングを制御し、車線内を走行しやすいようにステアリング操作をサポートする「レーンキーピングアシスト」(LKA)が設定されている。
●オートマチックハイビーム (AHB)
カメラで対向車のヘッドライトや先行車のテールランプを検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替え。夜間の前方視界を広げながら、他の車両のドライバーが眩惑するのを防ぐ。
●レーダークルーズコントロール
ミリ波レーダーで先行車との車間距離の検知し、先行車の車速に合わせて速度を調節。設定した車速の範囲内で、一定の車間距離を保ちながら追従走行する。また、前にいる車両の車線変更をミリ波レーダーとカメラの両方で検知して、加減速制御をよりスムースに行う。
この「レクサスセーフティシステム+」に対し、新型LSに採用される「レクサスセーフティシステム+A」は、単眼カメラをステレオカメラに換装。さらに前側方レーダーと後側方レーダーなども追加することで、新たな機能を数多く盛り込んでいる。大幅に進化した機能を紹介しよう。
ブレーキだけじゃなく自動操舵で衝突回避を支援
●プリクラッシュセーフティ(歩行者注意喚起・アクティブ操舵回避支援)
従来のプリクラッシュセーフティに対し、世界初の「歩行者注意喚起」と「アクティブ操舵回避支援」が追加された。
「歩行者注意喚起」では、前方の歩行者と衝突する可能性をクルマが検知すると、大型カラーヘッドアップディスプレイに、歩行者がいる方向をアニメーションで表示する。
「アクティブ操舵回避支援」では、自車線内の歩行者や、ガードレールのような連続した構造物と衝突する可能性が高くなった際、減速するだけでは難しくともステアリング操作によって衝突を回避できるとシステムが判断した場合、警報とブレーキ制御に加え、自動で操舵制御も行うことで衝突を回避、または衝突時の被害を軽減する。
なお、従来からの「プリクラッシュセーフティ」も進化。新たに自転車や夜間の歩行者検知が可能になったうえ、歩行者を検知した際の速度低減量が最大で約2倍の60km/hに拡大されている。
具体的には、一般道で車道を歩く歩行者がいた際、歩行者のいる方向が「歩行者注意喚起」で大型カラーヘッドアップディスプレイに表示され、その後「プリクラッシュセーフティ」で警報→ブレーキアシスト→自動ブレーキを作動。それでも歩行者を回避できない場合は「アクティブ操舵回避支援」で自動操舵を行い、歩行者をかわすことができるようになった。
●レクサスコドライブ
従来からの「レーダークルーズコントロール」に、新たに「レーントレーシングアシスト(LTA)」と「レーンチェンジアシスト(LCA)」を加えた「レクサスコドライブ」が採用された。なお、「レーンチェンジアシスト」は日本仕様にのみ搭載される見込み。
「レーントレーシングアシスト」は、通常時はカメラで白線を検知。渋滞で車間が詰まった場合や、車線が薄かったりこすれていたりして車線を認識できない場合でも、先行車の走行軌跡をカメラで検知し追従することで、「レーダークルーズコントロール」および「レーンキーピングアシスト」を継続する。
また、ナビゲーションの地図情報と車速を照らし合わせ、カーブへの進入速度が速い場合には、大型ヘッドアップディスプレイとマルチインフォメーションディスプレイへ警告を表示し、自動で減速を行う。
「レーンチェンジアシスト」は、ウインカーを作動させると、システムが周辺の道路環境を確認、適切なタイミングで自動的に操舵・加減速し車線変更を行う。
さらに、ミリ波レーダーとカメラの検知範囲拡大により、従来からの「レーンディパーチャーアラート」および「レーダークルーズコントロール」も進化。「レーンディパーチャーアラート」はアスファルトと草・土・縁石などの境界を検知し、「レーダークルーズコントロール」はより滑らかに加減速することが可能になった。
これらにより、カーブや渋滞が多い高速道路・自動車専用道路でも、より安全に車線を維持しながら追従走行でき、さらにレーンチェンジも自動で行えるよう進化している。
そして、「レーントレーシングアシスト」連動型の「ドライバー異常時停車支援システム」も搭載された。このシステムでは、「レーントレーシングアシスト」制御中に居眠りや急病などでドライバーの無操作状態が続いた場合、音やディスプレイ表示、緩い減速でドライバーに警告。その後クルマを自動的に自車線内へ減速・停車することで、重大な事故の発生を防いでくれる。
しかも、走行中は自動でハザードランプとホーンを作動させて周囲のクルマへ異常を伝え、停車後はドアロックを解除し「ヘルプネット」へ自動的に接続して救命要請も行うことで、ドライバーをいち早く救命・救護するよう支援するという優れものだ。
●上下2段式アダプティブハイビームシステム(AHS)
従来の「オートマチックハイビーム」を進化させたもので、ヘッドランプに片側上段8個、下段16個のLEDを搭載。各LEDの点灯・消灯を制御し、照射・遮光エリアをきめ細かく調整することで、先行車や対向車を眩惑せずにハイビームで走行できる頻度・範囲を拡大する。
●フロントクロストラフィックアラート(FCTA)
前側方レーダーで前方を交差する車両を検知、接近してくる方向を大型ヘッドアップディスプレイで表示する。それにも関わらず自車が前進しようとした場合は、ブザーやマルチインフォメーションディスプレイなどにより警告することで、交差点での出会い頭事故を防ぐ。
●ロードサインアシスト(RSA)
カメラやナビゲーションの地図情報から交通標識の情報を取得し、ヘッドアップディスプレイとマルチインフォメーションディスプレイに表示。交通標識の見落としを減らし、安全運転を促す。
このほか、下記の安全技術が採用されることも発表された。
●パーキングサポートブレーキ(静止物、後方接近車両、後方歩行者)
従来からの「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」、「リヤクロストラフィックオートブレーキ(RCTAB)」に加え、「対後方歩行者サポートブレーキ」を採用。リヤカメラで歩行者を検知し、警報およびブレーキ制御を行うことで、車両や人の往来が多い駐車スペースでの事故発生および被害を軽減する。
●パノラミックビューモニター(サイドクリアランスビュー/コーナリングビュー付き)
真上から自車周辺を見下ろしたような映像を表示し安全確認をサポートする「パノラミックビューモニター」に、新たに「サイドクリアランスビュー」と「コーナリングビュー」が追加された。
「サイドクリアランスビュー」は、車両前側を後ろから見たような映像を12.3インチワイドディスプレイに表示。狭い道でのすれ違いや路肩へ幅寄せをした際に、車両側方の隙間をより直感的に確認できる。
「コーナリングビュー」は、「サイドクリアランスビュー」表示中に、旋回時の運転操作に合わせて自動で車両の斜め後方から見たような映像を表示。狭い道で右左折をする際の安全確認や、車道へ出る際の縁石への乗り上げ防止をサポートする。
●デジタルインナーミラー
車両後方カメラの映像をルームミラー内のディスプレイに表示。後席の乗員やヘッドレストなどに視界を遮られていない状態の映像で、後方を安全確認することを可能にした。さらに、夜間や雨天時の視認性向上、リヤウインドゥサンシェード使用時の視界確保、後席乗員のプライバシー保護にも寄与する。なお、切り替えレバーを操作すれば、デジタルミラーモードと鏡面ミラーモードとを、好みに応じて切り替えられるようになっている。
●ミリ波レーダー・カメラ連携ポップアップフード
バンパー内部の圧力センサーに加え、ミリ波レーダーおよびステレオカメラでも歩行者および自転車との衝突を識別。エンジンフードを持ち上げるタイミングを調整することで、歩行者および自転車ライダーの頭部への衝撃を軽減する。
セーフティシステム+Aなら交通死亡事故の5割弱に効果がある
発表会ではトヨタ自動車の伊勢清貴・先進技術カンパニープレジデントによるプレゼンテーションも行われ、トヨタブランドの車両を含めた安全技術に関する今後のロードマップが示された。
トヨタでは「レクサスセーフティシステム+」と「トヨタセーフティセンス」を2017年末までに日米欧のほぼ全ての乗用車に設定することを計画しているが、それによってカバーできる事故形態は、2015年に発生した交通死亡事故の約2割にすぎない。
しかしながら、新型レクサスLSでは「レクサスセーフティシステム+A」などの予防安全技術を採用することで、この死亡事故形態カバー範囲を5割弱までに拡大。現時点でもっとも幅広く死亡事故をカバーする「世界でもっとも安全なクルマ」を目指している。
その後は新型LSに採用された技術を普及させるべく、次世代「レクサスセーフティシステム+」および「トヨタセーフティセンス」を2018年より全車展開開始。と同時に、高齢者に多いペダル踏み間違い事故を低減する「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」の設定車種を、2016年度の約3割から、2018年度までに約9割へと拡大させる。
そして、「レクサスセーフティシステム+A」をさらに進化。ドライバーが運転したいときは運転を楽しめ、運転したくない・できない時は安心してクルマに運転を任せることができる「モビリティチームメイトコンセプト」に基づき、自動車専用道路におけるETCからETCまでの合流・分岐・追い越しなどを自動で行う「ハイウェイチームメイト」を2020年頃に、一般道での自動運転を行う「アーバンティームメイト」を2020年代前半に商品化する目標を明らかにした。
伊勢プレジデントは「新型LSの技術は自動運転につながる技術であることは間違いありません。今後も安全を最優先に自動運転技術の開発を進めていき、『事故ゼロ社会』を早期に実現したいと思っています」と話し、新型LSが「事故ゼロ社会」という究極的な目標の達成に向けた大きな一歩になることへの自信をうかがわせている。
新型LSの「レクサスセーフティシステム+A」が、果たしてどれほど事故を防ぎ、またドライバーの操作に近い感覚で運転をアシストしてくれるのか。その真価を試せるのは今年の秋、もう間もなくだ!
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