2024年にロールス・ロイスが製作したビスポークモデルを振り返る
2024年もロールス・ロイスのビスポークチームは、これまでにない独創的で意欲的なクルマを世に送り出しました。また、ニューヨークとソウルにビスポークオーダーを受ける「プライベートオフィス」を開設し、進化し続けています。2024年にロールス・ロイスが製作した7台のビスポークモデルを振り返ります。
映画『007/ゴールドフィンガー』の悪役のロールス・ロイスが蘇る! 黄金が随所に光る「ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー」とは
ユニークなビスポークモデルが数多く登場
2024年に製作されたロールス・ロイスのモデルはビスポーク需要を反映し、顧客の大胆かつ多様な発想を表現することとなった。光学現象から着想を得たモデルや黄金のパターを装備したモデルなど、これまでロールス・ロイスにはなかったユニークなディテールが施されている。これは、ビスポークチームの卓越した創造性、技術、比類なき芸術性の証である。
世界限定10台限定の「ファントム シンティラ」
「ファントム シンティラ」は、スピリット・オブ・エクスタシーの幽玄な美しさ、優美さ、遺産を表現している。内装には86万9500針もの刺繍が施され、マスコットの表情豊かなフォルムにインスパイアされた連続的なグラフィックが描かれている。マスコットはセラミック仕上げで、1910年にクロード・ジョンソンがオリジナルのマスコットを依頼するきっかけとなったギリシャ彫像「サモトラケのニケ」を想起させる仕様になっている。
ダッシュボードの装飾は「セレスティアル パルス ギャラリー」と呼ばれ、恍惚のスピリットの儚い存在を表現している。この作品は、スピリット・オブ・エクスタシーと同じセラミック仕上げの7本のリボンで構成されている。スターライト・ヘッドライナーはスピリット・オブ・エクスタシーの流れるようなガウンから着想を得て、1500個の電球によってアニメーションが流れる。
ロンドンのパノラマを表現した「ブラックバッジ ゴースト シティライト」
このモデルには、イルミネーテッド・フェイシアにロンドンのパノラマを表現したデザインが採用されている。このグラフィックは8372個のレーザーエッチングで構成されており、ピアノブラックのウッドパネルの表面にひとつひとつ手作業で配置されている。
特別なローズから着想を得た「カリナン インスパイアード バイ ローズ」
グッドウッドにあるロールス・ロイス本社の中庭で特別に栽培されたファントム・ローズから着想を得て製作された。ビスポークチームのデザイナーは様式化されたバラのモチーフを制作し、フロントとリアのヘッドレストに刺繍で反映している。
黄金が随所に光る「ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー」
映画『007/ゴールドフィンガー』の公開60周年を記念して、「ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー」を製作した。インスピレーションの源となったのは、同作品の悪役、オーリック・ゴールドフィンガーが所有する1937年製の「ファントムIII セダンカ・デ・ヴィル」だ。
オーリック・ゴールドフィンガーが使用した黄金のパターや、フロントシートの間のセンターコンソールに用意された「スピードフォーム」(車体デザインを示すミニチュアの型)など、映画の重要なシーンにちなんだ独創的な装飾が施されている。フロント・フェイシアの全幅にわたるギャラリーに配されたビスポークのアートワークは、手描きでフルカ峠の等高線地図を精密かつ芸術的に表現している。
世界に1台の幻想的な「スペクター ルナフレア」
米国の顧客のために製作された「スペクター ルナフレア」は、月の光が巻雲の氷の粒子に反射して生じる月暈(げつうん/つきがさ)から着想を得たボディカラーを採用し、オーダーメイドのホログラム塗装によって、幽玄な虹色の輪が現れる仕上がりになっている。
この月暈を再現するのに1年以上かけて開発が行われ、最終的には、特別配合の真珠光沢のコーティングを含む7層のラッカー塗装を施し、フレーク状のフッ化マグネシウムとアルミニウムを注入することにより完成した。ほの暗い環境では深いメタリック効果を演出し、明るい日光の下では虹色の万華鏡のような輝きを放つ。
創業120周年を記念した「ゴースト エクステンデッド シリーズII ザ エンカウンター」
この優美なモデルは、ロールス・ロイスの創業120周年を記念して製作された。チャールズ・スチュアート・ロールズとヘンリー・ロイスのイニシャルがそれぞれヘッドレストとCピラーに刻まれ、コーチラインには同社の歴史的な日付が施される。
インテリアは竹から作ったレーヨン生地「デュアリティ・ツイル」で仕上げられ、「デュアリティ」のグラフィックが刺繍されている。
天を駆ける龍をデザインした「ファントム イヤー オブ ザ ドラゴン」
上海のプライベート・オフィスの依頼により、中国で2024年2月10日に祝われる旧正月を記念して製作された。インテリアは、伝統的な龍のシンボルから着想を得て細部まで丹念に作り込まれている。
助手席のフロントパネルには手描きの龍のアートワーク、ヘッドレストには龍の刺繍が施される。スターライト・ヘッドライナーには677個のスターが描かれ、龍のデザインを採用している。
AMWノミカタ
「ビスポーク」という言葉は「あつらえ」や「特別注文」という意味で使われる。諸説あるが「Be spoken for(おっしゃられる通りに)」から生まれた言葉という説が濃厚である。とくにテーラーで洋服を仕立てるときに使われ、これにはカスタマーと「会話」をするという行為が重要となり、「会話」を通じて要望を具体化してゆく。
ロールス・ロイスは本来のこのビスポークの精神を重要視し、この「会話」をするためのプライベートスタジオを世界で5カ所に展開している。その目的は思いも寄らない発想をもつ顧客からの難度の高い注文と出会い、それを具現化することでクラフツマンの技を高め、唯一無二のブランドとしてその存在感を示すことである。
ベントレーも最近「ミューズ」と呼ばれるビスポークスタジオを本社近くに設立し、本格的にビスポークオーダーの獲得を目指している。パワートレインの選択肢が縮小し、いずれ電動化されるブランドにとって、それを補完する喜びを顧客に提供することが将来必要となってくるのであろう。「選択」から「創造」へ顧客のニーズが変わってゆくのかもしれない。
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