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【旧車ヒストリー】そのハンドリングは欧州車をも超えたと評された…NISSAN プリメーラ その1

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【旧車ヒストリー】そのハンドリングは欧州車をも超えたと評された…NISSAN プリメーラ その1



賞賛とクレームと。アウトバーンを走るためのアシ。とりわけ初期のP10の走りは硬く、ユーザーからのクレームも少なくなかった。多少乗り心地を犠牲にしても、走行安定性やハンドリングを優先する。P10は国産車の価値観を変えたゲームチェンジャーでもあった。

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●文:月刊自家用車編集部

国産車の評価軸を一変させた、日産がつくった欧州セダン

バブル経済絶頂期ともいえる1989年から1990年にかけ、その後の日本車の評価を一変させる多くの名車たちが誕生している。R32スカイラインやユーノスロードスター、レガシィ、そしてセルシオにNSX。そんなきらびやかなクルマたちの中、地味なミドルセダンながら高い評価を受け、商業的にも大成功を収めたのが初代プリメーラ(P10)だ。サニーからシーマまで、フルラインナップともいえる日産セダン群にあって、プリメーラは特別な存在。欧州市場を強く意識したグローバルモデルで、アウトバーンを高速で突っ走れるスタビリティを最優先に開発はすすめられた。

スタイリングもパッケージングや空力に特化した飾り気のないもの。本場の欧州セダン以上ともいわれた硬い乗り心地には、多くのクレームもあったという。しかし、欧州カー・オブ・ザ・イヤーで日本車で初めて2位になるなど、目論見通りヨーロッパ市場で高い評価を得たP10は、国内でも走りや合理性を重視して選ぶ目の肥えたユーザーを中心に人気を拡大していった。

ファッション=衣服の変遷が文化史のカテゴリーとしてアカデミックな研究の対象になるように、自動車という商品も時代を明確に映す鏡なのだと思う。自動車は本来、人や荷物を運ぶ実用品だが、時代を画する商品企画やヒット作が生まれるとき、その市場や消費者は、何らかの変革や成熟のピークを迎えているものだ。

アメリカを意識した初代プリメーラ

1990年に登場した日産プリメーラも、日本の自動車史におけるメルクマール(指標)のひとつとなる一台だった。戦後によちよち歩きを始めた日本の乗用車産業や消費者にとって、当初の憧れや目標はアメリカ車だった。食うに事欠く貧しい日本人には、ロングノーズの下に大排気量エンジンを秘め、尻を沈めて走り去る巨大できらびやかなアメリカ車は、繁栄を謳歌するアメリカそのものだったのだろう。言葉を変えれば、無駄への憧れと言ってもいい。実際には、その大きさは水より安いガソリンを前提とした、広大な国土を安全快適に移動するための必然でもあったのだが、当時の日本人には、そんな文化的な背景を解する余裕などなかった。「デカいアメ車」は、必要十分な実用品の領域を超えた、贅沢品としての憧れだった。

欧州市場を視野に入れたときの課題

しかし、そのアメリカに追いつけ追い越せと死ぬほど働き、夢だった豊かさを手に入れた日本人は、世界がアメリカだけではないことに気づく。バブル景気で海外が身近になり、多様な文化や価値観を知ると、実用車でも個性的な欧州車に新たな羨望を覚えたのだ。’70年代に北米市場を席巻した日本車メーカーは、さらなる飛躍のために欧州の市場や交通環境の研究に力を入れるようになる。’90年までに世界一の走りを実現させるという、日産の「901活動」も、そうした流れの中で生まれた。

そもそも走りの評価に正解はない。それまでの日本車は、狭い山道が多い国内の道路環境に合わせて、ステアリング操作に対する応答の早さや、操作量に対する正確な動きといった、敏捷性を重視する価値観に基づいて開発されていた。早い話が「良く曲がるクルマがよいクルマ」だったのだ。しかし、901活動を通して、日産は長い直線が続く北米大陸はもちろん、速度無制限のアウトバーンに代表される欧州の高速交通環境では、よく曲がるだけでは優れたハンドリングとは言えないことに注視した。そこで、プリメーラは欧州でも通じる走りを目指したのだが、その意図は当時の日本人にはまだ十分理解できなかった。「乗り心地が硬い」というクレームが殺到したのである。

当時の写真で見るプリメーラ セダン2.0Ts(’90年)

スポーツシートやアルミホイール、4輪ディスクブレーキを標準装備するTeに次ぐグレード。Teにあるスポイラー類やABS 、ハロゲンヘッドタンプが省略されるが、その分20万円以上割安。

●主要諸元

セダン2.0Ts(’90年)

○全長×全幅×全高:4400mm×1695mm ×1385mm  ○ホイールベース:2550mm ⦆ ○車両重量:1150kg  ○乗車定員:5名○エンジン(SR20DE型):直列4気筒D O H C1998 cc  ○最高出力:150PS/6400rpm○ 最大トルク:1 9 . 0 kg ・m/4800rpm ○最小回転半径:5 . 4 m  ○ 1 0 モード燃費:1 1 . 4 km /ℓ ○燃料タンク容量:60ℓ(プレミアムガソリン) ○変速機:前進5段後進1段○サスペンション(前/後):マルチリンク式独立懸架/パラレルリンクストラット式独立懸架 ○タイヤ(前/後):195/60R1485 H ○価格(東京地区):206万5000円

―― インパネセンター部は少しドライバー側に向けて角度が付けられ、ここに使用頻度の高いハザードスイッチや空調、オーディオが置かれる。グレードによるインパネデザインの差は極めて少なく、最廉価の1.8Cuでもタコメーターが備わる。

―― 2.0TeとTsに採用されるオフブラックに赤いステッチのスポーツシート。穴あきヘッドレストは前後調整が可能。スポーツシートはシートバックの肩部分にワイヤーフレームを入れ、よりホールド性を高めている、またスポーツシート以外はエルゴノミックシートと呼ばれ、人間工学に基づきサイド部のクッションを座面より20 ~ 50%硬くしている。

―― アウディ80などと同じダブルリンク式のトランクヒンジ。リッドは90度以上大きく開き、かつアームが邪魔にならない。

―― トランク容量は480ℓ(VDA値)。奥行きや幅は普通だが深さがあった。

―― 全車にデュアルシートリフターが標準装備されるのもグローバルセダンならでは。

―― センターコンソール部にレイアウトされたパワーウインドウスイッチも欧州車風。ただ高速の料金所などで使いにくさもあった。

―― スポーツシートはもちろん写真のエルゴノミックシートもダイヤル式のリクライニング調整、ランバーサポート付き。

1989年東京モーターショーには「PRIMERA-X」が出品されていた

プリメーラを名乗るがこちらはコンセプトモデル。市販車とのデザイン共通はないようにも見えるが、手がけたのはP10と同じデザインチーム。四隅を曲面としたシルエットやハイデッキなど、P10の特徴がより強調されたデザインとも見てとれる。

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みんなのコメント

23件
  • yu*i****
    初代プリメーラ、当時母親が乗ってました、驚くほど素直なハンドリング、見た目以上に広く感じる室内、母親も大満足な車でした、たまに楽ちんデート車として借りてましたね。
  • fxnhe501
    「優れた車」のベンチマークがアメリカ車からドイツ車に変わったのは確かなんだけど、初代のプリメーラがアメリカ車を意識していたとは思えないな。確かに、インフィニティブランドでアメリカでも売られはしたんだけども。レパードは最後のモデルを除いて一貫してアメリカ市場を向いていた車だと思うけどね。

    理解されなかった和製シムカ1308ことT11(バイオレット・リベルタ)とVWサンタナのノックダウン生産、そしてT12ブルーバード(最後のオースター)のイギリスでの生産開始……という段階を経ての、和製オペル・ベクトラこと初代プリメーラだと思うのだけど。なんでこんな見出しが付くのかな?まともなこと書いてたら釣れないってか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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