■スポーティカーや超絶燃費のクルマもあり!?
燃費の良さからCO2削減に有効とされ、欧州車を中心に爆発的に普及したのがディーゼルエンジンです。近年は一時期ほどの勢いはありませんが、ミドルクラス以上のクルマでは、まだまだ人気があります。
日本でも古くから乗用車にディーゼルエンジンを搭載していますが、ラインナップの数というといまでは少数派です。
そこで、これまでに登場したディーゼルエンジン車のなかから、ユニークなモデル3車種をピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン280D GT」
1977年に発売された日産5代目「スカイライン」通称「ジャパン」は、シリーズ初となるターボエンジン車がラインナップされたことで、大いに話題となります。
さらに、5代目スカイラインには2.8リッター直列6気筒の「LD28型」ディーゼルエンジン搭載車が存在し、「280D GT」というグレード名が与えられました。
LD28型エンジンは、直6ならではのスムーズな回転と静粛性に加え、当時としては高速型のディーゼルとして高く評価され、日本における乗用車用ディーゼルエンジンのパイオニア的存在です。
各部の寸法はガソリンエンジンのL型6気筒をベースしており、過流室式の燃焼方式を採用。自然吸気のため最高出力は91馬力と、ガソリンの「L20型」に比べスポーティなエンジンとはいえませんでした。
スカイラインのキャラクターにマッチしていなかったためか、同エンジンを採用した「セドリック/グロリア」ほどの人気とはなりませんでしたが、時代背景としてオイルショックもあり、低燃費なクルマが求められたための搭載だったのかもしれません。
なお、6代目スカイラインにも280D GTはラインナップされ、7代目からは消滅してしまいました。
●フォルクスワーゲン「ルポ 3L TDI」
1998年にフォルクスワーゲンの次世代スモールカー「ルポ」が発売されました。同社のコンパクトカー「ポロ」よりもさらに小さく、全長3530mm×全幅1640mm×全高1480mmと日本の軽自動車を少し大きくしたくらいのボディサイズの3ドアハッチバックです。
日本に正規輸入されたのは2001年からで、当初、日本仕様に搭載されたエンジンは1.4リッター直列4気筒ガソリンのみでしたが、欧州では1.2リッター直列3気筒直噴ターボディーゼルエンジンを搭載した「ルポ3L TDI」をラインナップ。
モデル名の「3L」は、100kmの距離を3リッターの燃料で走ることが可能であることを表し、燃費は33.3km/L以上を実現していたことになります。
低燃費化の手法はエンジンの熱効率向上にとどまらず、標準モデルより各ガラスを薄くし、ボンネットやドアだけでなくシートフレームまでアルミ製に変更。リアゲートとハンドルにはマグネシウム合金が使われるなど、各部に徹底した軽量化が施された結果、車重830kgを達成。
トランスミッションはシングルクラッチの5速AMTのみとされ、走行モードの「ECO」を選択すると、アイドリングストップや、走行中には積極的に高いギアを選択するなどのプログラムが実装されていました。
ほかにもフロントグリルやバンパーも専用形状のものが採用されて空気抵抗を低減し、軽量アルミホイールと低転がり抵抗タイヤが装着され、さらにエアコン、パワーステアリング、パワーウインドウをオプション設定とするなど、ストイックに燃費を追求したモデルです。
ルポ3L TDIは実験的なモデルでしたが、培った技術は後のTDIシリーズに活かされています。
■日本でも売ってほしかった!? スズキのコンパクトディーゼルとは
●マルチスズキ「セレリオ ディーゼル」
スズキのインドにおける子会社であるマルチスズキインディアで製造、販売されているコンパクトカー「セレリオ」は2008年に登場しました。
そして2014年には2代目がデビューし、翌2015年にスズキは軽量・コンパクトな800cc直列2気筒の「E08A型」ディーゼルターボエンジンを「セレリオ」に搭載しました。
出力は48馬力と平凡ですが、トルクは12.7kgmと1.3リッターガソリンエンジン並で、850kgほどの車体には十分にパワフルなものとなっています。
セレリオへの搭載にあたっては、エンジンの取り付け方法や車体剛性の最適化と、吸音材の追加などをおこない、エンジンから伝わる振動や音を軽減して快適性が高められていました。
現在もインドで販売されているセレリオですが、ディーゼルエンジンはラインナップから廃止されてしまいました。世界でも類まれな2気筒ディーゼルですが、短命に終わっています。
※ ※ ※
現在、国産メーカーではトヨタ、マツダ、三菱がディーゼルエンジンを搭載した乗用車をラインナップしており、輸入車ではBMW、ミニ、ボルボなどのディーゼルエンジン車がヒット中で、街中でも数多く見かけられるほどです。
最新のディーゼルエンジンは排出ガスの浄化装置の設置や、補機類が多いことから、ガソリンエンジンよりも高価になっていますが、燃料費の安さや独特な乗り味は大いに魅力的です。
いまは各メーカーとも電動化を最優先でおこなっているため、新たなディーゼルエンジンの開発は難しい状況ですが、ユニークなディーゼルエンジン車の登場に期待します。
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以前と言ってももう20年くらい前ですが。