ハイパーレブ/ManiaxCars編集長のケン太郎す。これまで『OPTION』や『R30&R31 Magazine』なんかでも書いてきたけど、運転免許証を取得して30年弱、国産車を中心に、中古車ひとすじ30ン台を乗り継いできた立場から、その楽しさや思うことなんかをツラツラと書いていきたい。
ボルボ740GLを売り飛ばして手にした6万円を元手に、神奈川のいわゆる町の中古車屋さんで購入したレオーネセダンRXII。
【6/30発売!!】ハイパーレブVol.229 『86&BRZ』 No.11 86&BRZによる最高速アタック!300km/hの壁を突き破った4台のスーパーチューンドの走りとメイキングに迫る!!
走行10万km、車検4ヵ月付き、現状販売で車両本体価格2万9000円、税込3万450円という超リーズナブルプライス(笑)。
「名義変更とかも自分でやるなら、諸費用はいらないよ~」と中古車屋のオヤジがいうんで、ぴったり3万450円を支払って乗って帰ってきた。
が、走り出してすぐ異変に気付いた。やたらとクルマがまっすぐ走りたがる…というか、ステアリングを切ると明らかにブレーキング現象が出てるのだ。
「はは~ん、センターデフがロックしてんだな」と思ってサイドブレーキ脇のダイヤルスイッチを確認すると、『OFF=センターデフフリー』になってんじゃん。
あれ?
試しに『ON=センターデフロック』状態にしてみるけど、当然、状況は変わらず。
再び『OFF』にしてみるも、なんにも変らない。
そこで初めて現状を理解した。
「あちゃあ~、センターデフロック状態で固定されちゃってんじゃん!」と。
でもまぁ3万450円で買ったクルマだし、そのうち直せばいいやと思ってそのまま乗ってましたよ2週間ほど。
ただ、センターデフロック状態では80km/h以上出すなっていう但し書きが運転席側ドアの内張りだかサンバイザーだかに書いてあったから高速では飛ばせないし(その代わり直進安定性がおそろしく高く、ホント矢のようにまっすぐ走ってくれた、笑)、交差点を曲がるにもリヤタイヤを引きずるし、Uターンする時には必ずエンストするし、それ以前の問題としてこの状態で普段乗りするのはクルマに負担をかけまくることから、修理のため、ついにスバルディーラーの門を叩く決心をした。
足を運んだのは井の頭通り沿いの店。センターデフがロックしたままで解除できない旨を営業マンに伝え、クルマを預けた。
ショールームで出されたジュースを飲んでると、さっきの営業マンがやってきてこう言ったのである。
「そろそろお車の買い替えなどいかがですか? インプレッサとか…」
ってオマエ! 2週間前に買ったばかりのクルマなんだよ!!
…と言いたい気持ちをグッと抑え、
「いやぁ~好きで乗ってるんで、まだ乗り替えるつもりはないんですよ~」と、笑顔で返すオレ。うん、実にオトナな対応だ(笑)。
そうこうしてるうちにセンターデフのロックを解除できない原因が判明した。ロック/解除はバキューム(負圧)でやってるんだけど、その配管にゴミが詰まっていてロック状態のままになってたらしい。
それを洗浄したらちゃんとロック/解除ができるようになったとのことで、修理代はたったの3000円で済んだんだから万々歳だ。
こうしてオレは意気揚々とスバルディーラーを後にしたのである。
それ以外の不具合っていうと、4段階に切り替えられるエアコン風量調整のうち最小と最大しか使えなかったことだけど、ちゃんとエアコンが効いてるんだし、そんなのはたいした問題じゃない。
あと、140という特殊なPCDを持つことから、ホイールは今やレアものに違いないIRS(イワシタラリーサービス)の14インチが装着されてたんだけど、左フロントだけ同じようなデザインのエンケイ製を履いていたのも買ってから気が付いたポイントだ。おそらくダート走行でホイールを曲げただか割っただかして、仕方なく1本だけ交換したものと思われる。
そういや通常のシフトレバーとは別に、各ギヤでHi/Loの2段階に切り替えられる副変速機がついてるのも面白かった。つまり、5速×2=10速MTってことだ。コレ、初代シティや初代ミラージュにも同じようなのが搭載されてたから、80年代にごく一部の車種で一瞬ハヤったメカニズムだったのかもしれない。
使い方としては、たとえば3速Hiで走ってて、ちょっとだけエンジンブレーキを効かせたい時は副変速機レバーをLoにブチ込む…なんてやってたけど、本来はスタックしそうな悪路で1速+Lo=エクストラローみたいに使うのが正しいんだと思う。高速巡航を含めた普段乗りで燃費とかも考えると、副変速機は基本Hiに入れておくのが正解に違いない。
それから、最終型レオーネまでのスバルFF車の特徴として挙げられるのが、あからさますぎる前輪のポジティブキャンバーだろう。真正面から見ると内股っぽくなってて情けないことこの上ない(笑)んだけど、それ以上にコイツは独特なハンドリングをもたらすシロモノだった。
直進時からステアリングを切り始めたあたりまではいいんだけど、ステアリングを切り込んでいくとあるポイントから突然、前輪の接地感が希薄になるのだ(汗)。たとえば、本線に合流するまでの高速道路のランプとか、進入緩めの奥キツめなコーナーにそこそこのペースで入っていくと、ステアリングを切り足している途中で「ヤバイ! フロントが外に逃げる!!」と、アセることウケアイ。
もっとも、完全なオーバースピードでの進入とか、コーリンリング中のラフなアクセルオンとかがなければアンダーステアが顔を出すこともないんだけど、なんかフロントがアウトに持っていかれるような感覚に慣れるのにはちょっと時間がかかった。
エンジンは、1.8ℓSOHCフラット4にIHI製RHB5タービンを組み合わせたEA82T。インタークーラーレスってこともあって最大ブースト圧は0.5kg/cm2に抑えられ(圧縮比も7.7:1と低い)、このクラスのターボエンジンにしてはだいぶ控えめな120ps/5200rpm、18.2kgm/2400rpmというスペックだった。
なもんで速さは知れてたけど、低中速トルクがそれなりにあって扱いやすく、たったの67mm(ボア径はΦ92.0)というショートストロークゆえ、高回転域までスムーズかつシャープに吹け上がってくれるフィーリングはキライじゃなかった。
と、けっこう強く印象に残ってるレオーネセダンRXIIだけど、高速巡航時の風切り音の小ささにも感心した。「さすがは旧中島飛行機の機体部門=スバルが手がけたクルマだ!!」と、ひとりで勝手に解釈してナットクしたことを思い出した。
そんなレオーネセダンRXIIは車検満了が2週間後に迫った1999年12月上旬、取材でツインリンクもてぎに向かうため、後輩が乗るピックアップトラックのシボレーC10を従えて常磐道を北上していた。
降りる予定の那珂ICまで2kmの標識を通過。すると、後方からシボレーC10が猛然と加速してくるではないか。
「はは~ん、オレをブチ抜いて先に高速を降りようってことだな…」と理解したオレは、そうはさせるか! と、シボレーC10を引き離しにかかった。
ところが、5速120km/h巡航からギヤをひとつ落とし、アクセルペダルをグッと踏み込んだ瞬間、「ポンッ!!」という音が。
「なになになになに!?」と思って、ふとルームミラーに目をやると後方が白く煙ってる。もしかしてエンジンオイル吐いちゃった?
那珂ICはもうすぐそこだったんでユルユルと走って料金所を通過し、左手のパーキングに停車。ボンネットを開けてみると、ラジエターのアッパーホースがパックリと避け、そこから冷却水をブチ撒けたようだ。
ん~車検まで2週間という微妙なタイミングでのトラブル。珍しいクルマだし修理して車検を取り直すか、それともスッパリあきらめて乗り替えるか…これは判断が難しい。
2日後、駐車場に停めっぱなしのレオーネセダンRXIIを引き上げるため、知り合いに積載車を出してもらって那珂ICを目指してる道中、「クルマ、どうするんですか?」なんて話をしてると、「実は日産のディーラーマンで、R31スカイラインの2ドアクーペGTS24Vターボを手放すひとがいるんですよ。車両代7万円+諸費用でイケるみたいですけど」というんで、乗り替え決定~!
DR30乗りとして、「直6ターボのHR31にもぜひ乗ってみたい!」なんて思っちゃったんだから仕方ない(笑)。
で、年明けにレオーネセダンRXIIは近所のクルマ屋さんで廃車にしてもらうことにしたんだけど、当時つくってた雑誌の情報ページで「レオーネセダンRXII譲ります!」なんて記事を面白半分で書いたら、ホントに応募してくるヤツがいたんで驚いた。
なんでも、IRS製アルミホイール(1本だけエンケイ製だったけど、笑)がほしかったとのこと。それ以外にも使えそうなパーツをあれこれ外して持っていってもらったから、そのまま廃車にしちゃうよりもレオーネオーナーの役に立てたからヨカッタか!!
かくしてミレニアムな2000年はレオーネセダンRXIIと別れ、R31スカイライン2ドアGTS24Vターボを迎え入れることになったのだ。
で、このR31ってのがまたちょっと変わってて…という話は次回に続く。
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