最もパワフルなパワートレインは安くない
text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ボルボV60 T8ツインエンジンは、ボルボが提供する最もパワフルで先進的なパワートレインを搭載した、かなり魅力的なファミリカーだ。T8というグレード名が与えられているが、プラグイン・ハイブリッドモデルで、40kmの距離をEV状態で走行できる。
「ポールスター・エンジニアード」というトリムグレードを選べば、ブレンボ製のブレーキに調整式のオーリンズ製ダンパーを装備。よりシャープな操縦性を獲得する。
英国へも間もなく上陸予定で、控えめなアピアランスひ秘めた性能というクールさが、更に高まる。まだ試乗はできていないが、価格は6万ポンド(840万円)位にはなるだろうから、出回る数も限られるだろう。
ポールスター仕様でなくても、V60 T8ツインエンジンの英国価格は5万905ポンド(712万円)からと安くはない。V6ターボエンジンを搭載したメルセデスAMGのC43エステートとほぼ同じ金額となる。
この予算を準備すれば、超スムーズなV6ターボディーゼル・マイルドハイブリッドを搭載したアウディS4アバントも手に入る。374psを発生する最高の直列6気筒を搭載した、BMW M340iツーリングも買えてしまう。
ではV60 T8ツインエンジンの魅力とは。5万ポンド(700万円)で380psを超える4気筒エンジンモデルは、ボルボのみ。しかも環境に優しいプラグイン・ハイブリッドで、純EVとして走ることも可能。
読者の優先順位に応じて選べばいいわけだが、ボルボのコンセプトに賛同する読者もいれば、そうでない読者もいるだろう。
快適で洗練された高速クルーザー
フロントタイヤを駆動する2.0Lの4気筒ガソリンエンジンには、ターボチャージャーとスーパーチャージャーをドッキング。クルマを貫くドライブシャフトはなく、後輪は電気モーターで駆動する。
バッテリーは従来のT8インタラクションよりも大容量化された11.6kWhで、ホイールベース内に収まっている。おかげで荷室容量は、V60の529Lという大空間から目減りしていない。
最新のハイスペックのボルボだけあって、V60 T8ツインエンジンの車内は豪奢で快適。柔らかなレザーにコントラストが映えるステッチ、芸術的な金属製のトリムでインテリアはコーディネートされている。
もし今晩長距離ドライブが急に決まっても、このクルマなら強く不満を抱くこともないだろう。落ち着いた車内からは、ドイツ製のライバルが「スポーティ」と呼ぶような、デザインの仕掛けもない。とても新鮮で爽やか。
一方で車内はダイナミクス性能を表現するものでもある。エンジンとモーターが組み合わさり、システム総合での最高出力は386psにも達する。2tを超える車重を有しているが、その重さを伴いながらクルマは向きを変えていく。
クルマのコーナリング時の振る舞いは全体的に引き上げられているが、リアタイヤが電気モーターで動いているという実感は、ほとんど感じ取れない。ステアリングに伝わってくる感覚も希薄だ。
結果として、姿勢制御でやや締まりに欠ける、速いステーションワゴンといった印象となる。増えた車重に、ドライバーが馴染めることもなさそう。ゆったりと腰を掛けて、上質な車内に包まれながら、洗練された高速クルーザーとして走らせるのが一番だろう。
基本的に滑らかな走りながら気になる点も
英国郊外の傷んだ道では、サスペンションの許容値を迎えることも。車重が増えているからツインエンジン以外のV60と比べると、サスペンションへの負荷も高くコーナリング時の負荷も大きい。だが基本的に安心感のある、落ち着いた滑らかさを保てている。
T8ツインエンジンの駆動機構自体は2016年から存在してきた。純粋なEV状態からエンジンが駆動するハイブリッドモードへの切り替えは、今の基準で見ても極めてシームレスに行われる。
リアタイヤのモーターとエンジンが両方動き出す必要のある時は、やや精彩を欠く。電気モーターが即座にリアタイヤを駆動し始める一方で、トランスミッションは必要なギアの選択に時間を要する傾向がある。
エンジンとモーターとが同調したパワフルさを味わうには、明確な時間のタメが生じてしまう。他のメーカーのものの方が、すべてをトランスミッションを介して伝えることもあり、より機能的で振る舞いも自然だと思う。
プラグイン・ハイブリッドとしての実用性は、充電環境に依存する。家庭用充電器程度の充電容量の場合、1時間あたり9.6km走行ぶんの電気を蓄えることが可能。
WLTP値での航続距離は51kmとなっているが、今回のテストから判断すると、流れの速い高速道路ではそこまで走ることは難しいだろう。二酸化炭素の排出量は39g/kmに留まり英国の税制面では有利。
ロンドン中心部を走行する場合、超低排出ゾーンが制定され、近い将来規制値を超えるクルマには罰金が課せられるだろう。その点でもT8ツインエンジンはメリットだ。
クルマの日常利用の環境次第で90点
ボルボV60 T8ツインエンジンを選ぶかどうかは、日常的な利用環境に依存する。EV状態で走行できる範囲内で通勤や日常的な移動がまかなえるなら、あるいは通勤距離が片道30kmほどでも仕事先で充電できるのなら、90点が付けられるクルマだ。
ボルボの長距離移動は安楽で素晴らしく、荷室容量も犠牲になっていない。本気を出せば、鋭い加速で追い越しも即座に完了できる。エクステリアやインテリアの考え抜かれたデザインは、一部のライバルには備わらない、トップクラスの完成度を得ている。
反面、バッテリー容量ではまかなえない長距離を走行するなら、優れた効率性を発揮できず、ガソリン代が嵩んでくる。ドライバーが満面の笑顔になれるステーションワゴンをお探しなら、BMWを真っ先に覗くべき。
保守的に5万ポンド(700万円)に見合うユニットを欲する場合でも、ライバルモデルには6気筒エンジンがラインナップされている。こちらを優先すれば、ボルボV60 T8ツインエンジンの評価は低くなるはず。
その中間点として、BMW 330eにツーリングが登場することを期待してしまう。優れたEV状態での航続距離に煮詰められたハイブリッドシステム、秀逸な操縦性が、まとめて手に入ることになるだろう。
ボルボV60 T8ツインエンジンのスペック
価格:5万905ポンド(712万円)
全長:4761mm
全幅:1850mm
全高:1433mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:40.0-58.7km/L
CO2排出量:39g/km(WLTP)
乾燥重量:2061kg
パワートレイン:直列4気筒1969ccターボチャージャー+スーパーチャージャー/電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:386ps(システム総合)
最大トルク:65.1kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック
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