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むしろ「モンデオ」の後継車? フォード・カプリ AWDへ試乗 目標はファミリースポーツカー

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むしろ「モンデオ」の後継車? フォード・カプリ AWDへ試乗 目標はファミリースポーツカー

基礎骨格はVWのMEB エクスプローラーの双子

人生経験の長い読者なら、フォード・カプリという名車をご記憶かもしれない。2024年7月にまったく新しい電動クロスオーバーが発表され、この名称が正解なのか、英国では賛否両論が巻き起こった。

【画像】むしろモンデオの後継車? フォード・カプリ 競合サイズの電動SUV オリジナルのMk3も 全165枚

オリジナルのカプリの延長にあるという認識だったのか、話題を喚起するためのマーケティング上の理由だったのか。恐らく、フォードはどちらの意図も抱いていたはず。

少なくとも、マニアから羨望を集めそうな、ブルーカラーと表現される労働者層へ向けたクーペではないことは明らか。全長は4634mm、全幅が1872mm、全高は1626mmで、日産アリアとサイズ感は近い。

もちろん、パワートレインは電気モーター。車重は、オリジナルの2倍以上となる2174kg。ずんぐりとしたプロポーションで、40年前の記憶とは異なり、颯爽と走れるようには見えないだろう。

新しいカプリが基礎骨格とするのは、フォルクスワーゲン・グループが開発したバッテリーEV専用のMEBプラットフォーム。最近発表された、フォード・エクスプローラーも同様で、フォルクスワーゲンでいえばID.4とID.5の関係性に近いといえる。

目標はファミリー層向けスポーツカー

フォードで開発ディレクションを担ったウルリッヒ・ケスタース氏は、双子だと明言している。ただし、カプリとエクスプローラーはカタチがだいぶ違う。ルーフラインだけでなく、フロントガラスの位置も異なる。

開発プロセスは、カプリ主導で進められたらしい。「ファミリー層へ向けたスポーツカー」を目指して。軽快な走りと実用性を融合させるため、高い水準が自ずと求められ、クルマとしての能力の幅も広がったという。

駆動用モーターとバッテリーの構成は、シングルモーターの後輪駆動では、170psに52kWhか、286psに77kWhの2択。ツインモーターの四輪駆動では、339psに79kWhの容量が組み合わされる。これも、フォルクスワーゲン・グループ譲りだ。

前後のタイヤの間隔、ホイールベースは、カプリとエクスプローラーで同一。リアのオーバーハングが伸ばされ、全長は約200mm長い。クーペ風のシルエットと、広い荷室を叶えている。

電費を良くするため、カプリでは空力特性へ特に気が配られた。空気抵抗を示すCd値は0.26で、エクスプローラーの0.29より小さい。結果として、同じ容量の駆動用バッテリーでも、僅かに長い航続距離を獲得している。

サスペンションは、構造は共通するもののチューニングが異なる。快適性を担保しつつ、可能な限りフォードらしく楽しい走りを実現するため、エクスプローラー以上に開発には時間が割かれたという。このバランスは、古くから同社の強みとなってきた。

インテリアはエクスプローラーと共通

スタイリングの印象は、見る人によって異なると思う。筆者は、エクスプローラーの方が記憶に残ると感じた。このクラスの電動SUVは選択肢が少なくないが、そこへ埋もれない、しっかりした個性があるからだ。読者はどうお感じだろう。

MEBプラットフォームは、3段階の最低地上高を想定して開発されている。カプリでは最も低い仕様が選ばれており、四輪駆動では10mm高くなる。それでも、エクスプローラーより低い。

ボディと異なり、インテリアはエクスプローラーと共通する部分が多い。ダッシュボード回りは、基本的に同一。荷室も含め空間は広々としていて、小物入れが多いことなど、優れた部分も一致している。

リアシートに座ると、僅かに頭上の余裕が少ないことがわかる。パノラミック・ガラスルーフはオプションだ。内装の雰囲気は、良くいえば落ち着いている。

ダッシュボード中央のタッチモニターは、15インチと巨大。車載機能の殆どは、このインフォテインメント・システムへ集約されている。操作性が良いとはいえず、大画面を有効には活かせていないが。

パワーは充分 姿勢制御や操縦性の洗練度は高い

運転した印象も、エクスプローラーと似ている。実際に乗り比べても、普通に認識できるほどの違いはないといっていい。だが、ライバルの中で1番動的能力が高いとは表現できないまでも、優れた体験を提供してくれる。

今回試乗したカプリは、ツインモーターの四輪駆動。パワーにまったく不足はなく、カーブでのトラクションも高く、キビキビと狙ったラインへ導ける。姿勢制御や操縦性の洗練度は高く、落ち着いてもいる。

ステアリングホイールは軽く操れ、反応は正確。気張るほどボディロールは増していくものの、しっかり抑制されている。運転の充足感は高い。

乗り心地は硬めだが、不快に感じるほどではない。英国の市街地では一般的な、傷んだアスファルトでは揺れが目立っていたけれど。

航続距離は、カタログ値で556km。実際にも、530km近くは走れる様子。充分な距離といえ、これまでの生活へすぐに馴染めるだろう。

英国価格は、エクスプローラーより約2000ポンド(約39万円)お高い。トリムグレードは、セレクトとプレミアムの2段階が用意される。

背が高く重たいフォード・モンデオの後継車?

電動クロスオーバーとして生まれ変わった、カプリ。背が高く重たくなった、フォード・モンデオの後継車のように筆者は感じた。ファミリー層向けのスポーツカーという、開発の狙いには届いていないかもしれない。

フォードへ期待するとおり、軽快で滑らかに走り扱いやすく、家族で移動するのに適した実用性は備える。製造品質もしっかり高い。とはいえ、ブルーカラーのドライバーズカーとまでは呼べないだろう。

◯:不満ない動力性能 感心するほど長い航続距離 優れた操縦性と姿勢制御
△:個性の薄いインテリア タッチモニターは扱いにくい エクスプローラーの方が個性的かも

フォード・カプリ AWD エクステンデッドレンジ・プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万6175ポンド(約1090万円)
全長:4634mm
全幅:1872mm
全高:1626mm
最高速度:178km/h
0-100km/h加速:5.3秒
航続距離:556km
電費:6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2174kg
パワートレイン:非同期モーター(前)+永久磁石同期モーター(後)
駆動用バッテリー:79.0kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:339ps
最大トルク:69.1kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

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