レクサスが発表した新しいコンパクトSUV「LBX」の、技術面における注目ポイントを世良耕太が解説する。
アクセルペダルにもこだわる
新型トヨタ・プリウスの超カッコいい“GRエディション”が出た!──GQ新着カー
6月5日、レクサスの新型LBXが公開された。日本での発売は2023年秋以降が予定されている。コンパクトなボディながら、エクステリアもインテリアもラグジュアリーなムードに満ちあふれている。
世界初公開にあわせて提供された資料を参照すると、LBXの価値は見た目だけでは判断できないことが伝わってくる。“走り”を徹底的に鍛え上げているのが特徴だ。
プラットフォームはトヨタのコンパクトカー向け、「GA-B」を刷新し、適用している。採用第1号は2020年発売の「ヤリス」で、その後、「ヤリス・クロス」や「アクア」、「シエンタ」に採用されている。クロスオーバーであることを考えると、LBXに近いのはヤリス・クロスということになるだろうか。
ヤリス・クロスのハイブリッドGは、全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm。ホイールベースは2560mmだ。LBXのスリーサイズは4190×1825×1560mm、ホイールベースは2580mmである。LBXはヤリスクロスより10mm長く、60mm幅広く、30mm低い。スタンスが広く、低く構えたフォルムというわけだ。
LBXは「ドライバーとクルマとの一体感」にこだわり、着座位置を下げた。合わせて、ドライビングポジションや操作系を見直している。ヤリス・クロスはクロスオーバーらしいカジュアルな運転環境を構築しているが、LBXは運転に対して能動的に向き合えるような環境づくりに徹しているように感じられる。着座位置を低くしたことは重心高の低下にもつながり、運動性能の向上に寄与する。
アクセルペダルは新型プリウスでも採用したオルガン式を採用。GA-Bプラットフォームでは初採用で、通常は上位機種で用いる技術をおごった格好だ。LBXのペダル配置はプリウスと同様、アクセルペダルとの踏み替え操作にこだわったブレーキペダルの踏面角としている。このあたりも、走りへのこだわりが感じられる。
GRヤリス並のボディ補強しっかりした走りを支えるのがプラットフォームの改良だ。ヤリス・クロスなどとおなじGA-Bを、レクサス専用に手をくわえている。ボディ骨格の接合に用いるスポット溶接は打点ピッチを短くして高剛性に。さらに、構造用接着材の採用部位を拡大した。また、サスペンションからの入力を受け止めるフロントサスタワー間をつなぐカウル構造を見直して着力点剛性を向上。インパネ内部構造を補強してステアリングコラム剛性を高めている。
これらの施策で思い起こすのは、徹底的にボディ補強に取り組んだ「GRヤリス」だ。レクサスはLBXの開発にあたり、GRヤリス並のボディ補強に取り組んでいる。ラグジュアリーなムードを全身で色濃く漂わせているが、LBXは走りに対して相当に強いこだわりをもって開発されたのがうかがえる。重心点より高く遠いルーフは薄肉化して軽量化。さらに、ボンネットフードをアルミ化して軽量化したのも運動性能の向上に効くポイントだ。
一方で、ルーフパネルには振動減衰効果の高いマスチックシーラーを適用。不快感につながる振動や音を効果的に抑える技術で、快適性に限らず走りの向上にも効くのが特徴だ。
こうしてLBXに施された専用の技術を追ってみると、土台となっているプラットフォームは共通ながら、ヤリスやヤリス・クロスと共通というより、GRヤリスに近い内容であるのが伝わってくる。となると、走りに関しては相当に期待して良さそうだ。
手が入っているのはボディ骨格だけではない。フロントサスペンションがマクファーソンストラット式なのはヤリスやヤリス・クロスなどとおなじだが、ジオメトリーを一新しているのだ。
直進安定性を向上させつつ旋回姿勢に移行した際にアンダーステアを抑える方向のジオメトリーとし、限界域まで車両との一体感と安心感を味わえる特性にしたという。車輪やブレーキユニット、サスペンション部品を支持するナックルは通常のスチールに比べて高剛性かつ軽量なアルミ鍛造製をおごっている。
リヤは2WDがトーションビーム、AWDはトレーリングアーム式2リンクダブルウィッシュボーンで、やはり形式的にはGA-Bの技術を踏襲。路面からの入力を減衰するショックアブソーバー(ダンパー)は、動き出しから素早く反応する新開発品を適用した。ステアリングを切り込んだ際の応答性と乗り心地(とくに突起を乗り越えた際の動き)に効果が期待できる。
コンパクトカーの走りの概念を変えるLBXに設定されるハイブリッドシステムは、1.5リッター直列3気筒自然吸気エンジン(M15A-FXE)と、モーター出力を向上した軽量でコンパクトなトランスアクスル、高い電池出力のバイポーラ型ニッケル水素電池で構成される。
アクアが搭載するシステムをベースに高出力化した内容だろう。最高出力などのスペックは公表されていないが、「アクセル操作に対する電池とモーターによるアシストを大幅に強化し応答遅れが少なく、立ち上がりが早い電気リッチな加速感を実現」と、レクサスは説明している。強化したボディが宝の持ち腐れにならない程度に、動力性能も強化されているはずだ。
これまでの説明で、LBXは単に既存のGA-Bプラットフォームを流用して構築したモデルではないのがおわかりいただけただろう。ましてや“ヤリス・クロスのレクサス版”では決してない。走りや快適性を向上させる最新の技術が投入しているのも、LBXの価値の向上につながっている。
AHB-Gブレーキシステムもそのひとつだ。モーターの回生による制動力と油圧ブレーキの制動力を状況に応じて使い分ける協調回生ブレーキは従来、前後輪をおなじ圧力でしか制御できなかった。LBXが採用したAHB-Gブレーキシステムは、前後独立してブレーキ力を制御することが可能。これにより、ブレーキ力の制御によって車両姿勢をコントロールすることが可能になる。より具体的にはピッチ制御で、制動時に前のめりになる動きを抑え、制動時に安定した姿勢保持が可能になる。
「高級車の概念を変える」のがLBXの開発コンセプトというが、投入された数々の技術を俯瞰するに、コンパクトカーの走りの概念を変える能力が与えられていることが伝わってくる。
既存のラグジュアリーカー、既存のコンパクトカーの概念を打ち破る存在になるのは間違いない。
文・世良耕太 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
レクサスRXだってRAV4ベースのGAKプラットフォームなのに
そもそも利益率アップのために始めたブランドなのに、
専用設計で利益率下げたら本末転倒
LS,LC,LXを除いて如何に大衆廉価車ベースのデラックスモデルで儲けるかの経営判断でしょ