新車試乗レポート [2024.12.21 UP]
大人好みに進化したアウトランダーPHEV【九島辰也】
文●九島辰也 写真●三菱
アウトランダーPHEVがマイナーチェンジしました。2022年型としてフルモデルチェンジしたばかりなのに、大きく手が入っています。通常のモデルサイクルであれば4年後くらいにマイナーチェンジを施し、7、8年後あたりでフルモデルチェンジします。途中マーケットが飽きないようにフェイスリフトなんかを交えたりして。トヨタあたりを見ているとそんなルーティンです。
もちろん近年は各社年次改良を積極的に進めているので、毎年のように細かい変更はあります。ですが、今回のアウトランダーは駆動用バッテリーを刷新したり、足回りも大きく手を入れたりしていますから年次改良の枠を出ています。やはり少々早めのマイナーチェンジと言ったところでしょう。
三菱 アウトランダーPHEV
振り返ると、三菱自動車という会社は他社のモデルサイクルとは異なる動きをします。例えば先代のアウトランダーは2012年にデビューしましたが、それを2021年型まで引っ張ってきました。しかもその間何度か大きく手を入れています。つまり、早めのマイナーチェンジを繰り返すことで、息の長いモデルサイクルを成し遂げようという考えです。
そうした動きの理由は会社の規模に準じます。ekクロス EVやデリカミニなんかが街を賑わせていますからラインナップは豊富なように見えますが、実はそれほど多くありません。つまり、そこからもわかるように大きな投資を頻繁に行うことができないんです。よってフルモデルチェンジの回数を少なくするためあの手この手でモデルサイクルを長くします。
それを踏まえるとアウトランダーの今回のテコ入れは順当かもしれません。従来型は人気もあってクルマの仕上がりもよくできていますから、それほど焦らなくてもいい気もしますが、ひとつのモデルをどんどん進化させていくのが彼らの手法です。
では新型はどこが変わったのか。
三菱 アウトランダーPHEV
テーマは「洗練」と「上質」だそうです。これまでも上質感はありましたが、それをさらにアップグレードすることを試みました。具体的にはデザインでそれをアピールしたり機能の追加を行ったりしています。9インチだったセンターモニターは12.3インチに拡大されましたし、デジタルルームミラーもグレードによっては標準装備されます。駆動面ではバッテリーを刷新し容量アップを図りました。それによりEV走行距離が延びたのはもちろん、エンジン始動頻度を低下することで燃費を抑えることができます。開発陣は「歴代最大のEV走行領域」とし、EVモードでの加速性能が大幅に向上したと胸を張っていました。
三菱 アウトランダーPHEV
そんな新型アウトランダーですが、個人的に一番進化を感じたのは乗り心地です。ダンパーやコイルのバネレートなどを見直したことでさらに高級感のある乗り味に変化していました。あたりの柔らかさは車格が2クラスくらいアップしたような感じです。
その辺を開発陣に伺ってみると、「オーストラリアからのフィードバックで乗り心地の硬さが指摘されていました」と聞きました。確かに舗装路でもギャップの多いオーストラリアでは少し柔らかめの方がいいでしょう。振動をバネ下で吸収してもらった方がロングドライブでの疲労が軽減されます。でも、乗った感じ単純に柔らかくしたのではないように思いました。路面からの入力に対し当たりは柔らかいのですが、その先にしっかりした芯を感じます。それがクルマを安定させキャビンをフラットに保つと言ったところでしょう。
そんな風に感じるのは従来型を乗っていたからだと思います。ロングタームテストとして2022年秋頃から一年間日々の足としてアウトランダーを使っていました。なので、その時の“味”が身体に染み付いています。そもそも好きなんですよね三菱車の味付けが。
三菱 トライトン
ということで、三菱はトライトン、アウトランダーと立て続けに好みのモデルを輩出してきました。トライトンは日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025の10ベストにも入りました。嬉しいですよねピックアップトラックがセダンやコンパクトハッチバック、コンパクトSUVと同等に評価されるのって。クルマのバラエティの多さとそれぞれの個性を楽しませてくれます。しかも、最近はカタチだけでなくパワーソースもさまざまだからより楽しい。自動車業界の転換期ですが、転換期だからこそ楽しめるのも事実ですね。
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