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ラリー参戦用マシン「ハイゴ-ポルシェ 911」、40年という時を経て蘇ったディーター・ロッシュアイゼンの夢【動画】

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ラリー参戦用マシン「ハイゴ-ポルシェ 911」、40年という時を経て蘇ったディーター・ロッシュアイゼンの夢【動画】

Heigo-Porsche 911

ハイゴ–ポルシェ 911

ラリー参戦用マシン「ハイゴ-ポルシェ 911」、40年という時を経て蘇ったディーター・ロッシュアイゼンの夢【動画】

一堂に会した4台のラリー仕様「ハイゴ–ポルシェ」

ハイゴ-ポルシェは、イギリスで発見されるまでほぼ30年間姿を消していた。このラリー参戦用ポルシェは、約40年前にディーター・ロッシュアイゼンによって作られている。その後、ヴァルター・ロールらによってセットアップされたレプリカモデルが3台製作され、今回初めて一堂に会することになった。

ロッシュアイゼンの子供の頃から描いていた夢は、輝くペトロール・ブルー・メタリックとグランプリ・ホワイトのカラーリングだった。それは1979年に彼と友人たちで組み上げられた、ハイゴ-ポルシェ 911 SCとして実現する。

1976年、ロッシュアイゼンはテスト部門のメカニックとしてポルシェに入社する。そして1980年にクラウス・ヘッセとコンビを組んで、国内ラリーや国際ラリーへの参戦をスタートした。

「このシーズン、残念なことに我々は資金を使い果たしてしまいました。そこでレーゲンスブルクで行われた国際ラリー参戦の祝勝会で、ハイゴ-ポルシェを売ることに決めたのです」

当時、まだ20代半ばだったロッシュアイゼンは、ドイツを代表するラリードライバーのヴァルター・ロールから、ある英国のバイヤーを紹介されたという。

30年の月日を経て、再び果たされた愛車との邂逅

それから30年の月日が経った2009年11月、ロッシュアイゼンに1本の電話が掛かってきた。電話の主はイングランドのストーク=オン=トレントに住むスティーブン・デイビス。税務コンサルタントの彼は、最近シェフィールドで1台のクルマを購入したというのだ。

「ボロボロの布で覆われたあのクルマを、私は裏通りにある自動車修理工場で発見したんです」と、デイビス。現在69歳の彼は今回のミーティングのために、ドイツのバイエルン州シュトラウビングまで1800kmをドライブしてきた。

デイビスが購入したポルシェ 911 SCは、ラリーでお馴染みのロスマンズ・タバコのカラーリングが施されていた。「ガレージに放置されていたため、工場の汚れがこびりついていましたよ」と、デイビスは笑う。

このクルマでデイビスは、様々なイベントやラリーに参加した。そしてある日、ワークショップにおいてロスマンズ・カラーの下にある別のカラーリングについて尋ねられた。もちろん彼は過去の姿を知らなかった。その後資料をあたり、かつてこの911 SCには別のカラーリングが施され、ヴァルター・ロールのドライブでラリーに参戦していたことを突き止める。

ヴァルター・ロールによって繋げられた“縁”

ラリーファンならば、ロールの名前を知らない者はいない。デイビスはつてを頼って彼に連絡を取り、ロールから彼の友人であるロッシュアイゼンの電話番号を教えてもらったという訳である。

「最初、このクルマがまだ存在しているなんて信じられませんでしたよ」と、ロッシュアイゼンは振り返る。デイビスがロールケージ用に開けられた穴を当時の写真と比較したことで、ロッシュアイゼンの疑念は晴れた。

「我々のマシンは、特にロールケージのウインドウフレームへの溶接方法が独特でした。1979年、私たちはこのハイゴ-ポルシェをジャンプによるねじれにも負けないよう、ラリー専用に作り上げたのです」

カラーリングのアイデアは、当時のポルシェのデザインスタジオで働いていたジンジャー・オステルによるものだった。

「ジンジャーは911を照明の下に置いて、ペトロール・ブルー・メタリックとグランプリ・ホワイトをクルマに照射しました。マルクトレドヴィッツ・ラリーが開催されたとき、クルマをチェックするためにパルクフェルメに向かっていると雪が激しく降ってきました。降り続く雪の光跡とグランプリホワイトのボディが完璧に調和して、信じられないほど美しかったことを覚えています」と、ロッシュアイゼンは目を細める。

より美しく素晴らしい、2台目のハイゴ-ポルシェ

デイビスは、写真をもとに911 SCを当時のコンディションへと戻すことを決める。30年近く放置されていたポルシェのレストア作業は2010年に完成。その年、英国・バーミンガムのストーンリーパークで開催された、国際的なヒストリックモータースポーツショー「レースレトロ(Race Retro)」で公開された。

「スティーブは電話で私に『あたなのレーシングスーツもパッキングしたから、一緒に特別なコースを走ろう』と言ってくれました。あれは非常に心に迫る瞬間でした。私は自分のクルマとはもう二度と会えないと思っていましたから・・・」と、ロッシュアイゼン。

ドイツに戻ると、ロッシュアイゼンはレストア・ワークショップのオーナーである友人のラファエル・デュエスを訪ねた。そこで彼は白い911 Gモデルと出会う。彼はデュエスにこのクルマをどうする予定なのか質問した。すると「特に何もないね。この2年間はずっとリフトの上に置かれっぱなしだよ」と、答えたという。

やることはひとつしかなかった。彼らは2台目のハイゴ-ポルシェを作ろうと思いついたのだ。

ロッシュアイゼンとデュエスに、以前のスポンサーである「ハイゴ・オートテクニック(Heigo Autotechnik GmbH)」のマネージングディレクターであるヘルムート・ヘイルマンが加わり、プロジェクトを立ち上げる。彼らの目標は以前のラリーカーよりも、さらに美しく素晴らしく仕上げることだった。

1年半後、プロジェクト「ハイゴ–ポルシェ II」が完成。そして、セットアップテストの担当ドライバーとして白羽の矢が立ったのが、彼らの旧友ヴァルター・ロール。その後も彼はチャンスがあるたびに、ヒストリックラリーやイベントでハイゴ–ポルシェのステアリングを握っている。

1台のミニカーがつないだ3台目のハイゴ-ポルシェ

時をさらに進めよう。

ロッシュアイゼンはレストアしたハイゴ-ポルシェのミニチュアカーを友人たちに配っていた。そして、そのミニカーを偶然手に入れた男がいた。

「2005年、ディーターがこのミニカーをプレゼントしてくれたとき、『私もこのポルシェが欲しい!』と、すぐに思ったのです。すごくかっこよかったですから」と、語るのはクラウス-ヨルゲン・オースだ。フランクフルトで通信会社を経営する彼は、ビジネスパートナーのウド・ミュラーと共同でこの夢を実現することにした。

2013年、ふたりはデュエスにハイゴ–ポルシェ 911 SC RS Evo IIIの製作をオーダーした。このクルマもまた、ロッシュアイゼンとヴァルター・ロールによってセットアップされている。このEvo IIIには最高出力340psを発揮する3.4リッター水平対向6気筒エンジンを搭載。1979年のオリジナル仕様より62psもパワフルだ。

「ダックテール型エンジンカバーとターボエクステンションは、FIAグループ4公認パーツが取り付けられています」と、ロッシュアイゼンは自慢気に語る。

今もラリーフィールドを疾走する、色褪せない夢

「ラファエル、ディーター、そして私は、いろいろな足まわりを試し少しずつ開発作業を進めました」。ドイツ選手権の一戦であり、ヨーロッパ最大級のヒストリックラリーイベントを併催するエイフェル・ラリーで、ゼロカーとしてハイゴ-ポルシェのレプリカをドライブしたロールは振り返る。

「エイフェルでは、最新のラリーカーとの良い比較ができました。Evo IIIは余計な装飾もなく、正しい目標に向かっていると実感できました。シートに座れば、誰もが『自分はなんでもできる』と感じるでしょう。完璧なドライブを披露できるか、そうではないか。そのふたつにひとつなのです」

「この911をドライブすると、自分とクルマが一体になるんです」とウド・ミュラー。 「このクルマは私にいろいろな物を与えてくれます。限界を超えてドライブすることは何にも代えがたい体験ですから」と、クラウス・ユルゲン・オースは笑顔で付け加えた。

最初のアイデアから40年。完璧なドリフトを披露するために生まれたロッシュアイゼンの夢は、再びラリーフィールドを駆け抜けることになった。そう、ラリーという言葉の意味どおり「その場所に帰ってきた」のである。

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