2020年6月の登場から2年が経過した4代目ハリアー。ミドルグレードとなると400万円を超える高額車でありながら、2021年は74,575台を売り上げ、登録車販売台数ランキングでは7位と、トヨタ車のなかでも、不動の人気車種となっている。
しかし、残念ながら生産が追い付いておらず、ここ最近のハリアーの登録台数は、8月3271台、9月2583台、10月はなんとわずか876台。ハリアーの月販目標台数は3,100台ではあるが、人気車種であるだけに、トヨタとしては、歯がゆい思いをしていることだろう。
つ…強い……国内最激戦区SUVで首位に君臨し続けるハリアーの魅力と超強力ライバルたち
ただ、ハリアー人気は高まる一方であり、2022年9月にはマイチェンも行い、プラグインハイブリッドの「Z」グレードを追加している。なぜハリアーはこれほどまでに人気なのか!?? ハリアーが売れまくっている理由とライバルに対する長所と短所を考察しよう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
上質感とサイズ感が「ちょうどよい」
4代目ハリアーの人気の理由、そのひとつが「ちょうどよい上質感」だ。シンプルながらもエレガントさと逞しさが融合した流麗なクーペフォルムは、歴代ハリアーの中でも特に美しいスタイリングで、他のどのSUVにもない、ハリアーだけが持つ世界観だ。特に、Cピラーからリアエンドへの流れるような造形は、国産クロスオーバーSUVタイプの中で、最も秀逸なデザインではないだろうか。
インテリアの質感も高い。上質な革で覆われ、「馬の鞍」をイメージしたデザインのセンターコンソールは、インストルメントパネルとのつながりがすっきりと美しく、また、ダッシュボードの素材も質感高く、ウッド調加飾やパイピング加飾を随所に配し、心地よい上質感を演出している。
乗り心地も絶妙だ。重厚感としなやかさを併せもった乗り味が、非常に心地よく、徹底したNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)対策によって、ハリアーの上質感がさらに引き上げられている。開発担当者によると、吸遮音材と制振材を、効果をより発揮するよう配置したほか、高遮音ガラスを採用するなど、走行時の質感向上にもこだわってつくりこんでいるそうだ。
また、「ちょうどよいサイズ感」もハリアー人気を支える要因のひとつだと思われる。現行ハリアーのボディサイズは、全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mmと、先代ハリアー(4725×1835×1690)と比べて、数字の上ではほんのちょっと大きくなっているのだが、それでも、日本市場においても大きすぎることはなく、でも高級車としての優雅さや迫力は感じられるという、ギリギリちょうどよいサイズ感だ。これ以上大きくても、これ以上小さくても、いまのハリアー人気はなかったのではないだろうか。
SUVを好む方のなかには、未舗装路や悪路などのオフロード走行に憧れをもつ方もいるが、実際に日本国内で走るのは95%がオンロードだ。アメリカ人好みなワイルドなRAV4とは真逆の都会派デザイン、かつ、オンロードでの快適な乗り心地(もちろんRAV4並みにはオフも行けるが)。ハリアーは、トヨタが日本市場で求められるクロスオーバーSUV像を研究し尽くして具現化した、ベストなクロスオーバーSUVなのだ。
ただ、ここにきて、手ごわいライバルが続々登場
しかし、ここにきて、このハリアー人気を脅かしそうな手ごわいライバルが続々登場した。日産新型「エクストレイル」と、マツダ「CX-60」だ。
新型エクストレイルは、VCターボe-POWERと最新のCMF C/Dプラットフォーム、4輪駆動制御のe-4ORCEなど、日産がいま持てる技術をフル活用して、満を持しての日本市場登場となった。最大の長所は「走りの質感の高さ」だ。
オンロードでもオフロードでもe-4ORCEの制御でグイグイ曲がり、ロードノイズや風切音はワンランク以上静か。動性能にも上質感が与えられた、という印象を受ける。インテリアの質感も非常に高く、12.3インチの液晶メーターと、同じく12.3インチのナビゲーションモニター、そして、10.8インチの大型ヘッドアップディスプレイもサイズが大きく見やすい。センターコンソール周りやダッシュボード周りなども上質だ。
日産新型「エクストレイル」。VCターボe-POWERと最新のCMF C/Dプラットフォーム、4輪駆動制御のe-4ORCEなど、日産がいま持てる技術をフル活用して、満を持しての日本市場登場となった
CX-60は、直4ガソリン、直6ディーゼル、直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッド、直4ガソリンPHEVという4つのパワートレインを用意して登場した。長所は、日本で神話的な人気の「縦置き直6エンジン」を搭載しているという事実と、驚異の燃費性能だ。
3.3L直6ディーゼルのWLTCモード燃費は19.8km/L(XD 2WD)、直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドは21.0km/Lにもなり、同社CX-5の2.2L直4ディーゼルが17.4km/Lであったことを考えれば、CX-60ディーゼルの効率は抜群にいい。インテリアの質感も、上級グレードのプレミアムとなると抜群に高くなる。タンカラーとスウェード素材を用いた内装は、特に「映える」だろう。また2トーンのステアリングホイールや、ボリューム感のあるタンカラー本革シートなど、国産の中でもトップクラスに高い質感だといえる。
マツダ「CX-60」。長所は、日本で神話的な人気の「縦置き直6エンジン」を搭載しているという事実と、驚異の燃費性能だ
ハリアーだけが絶対的に優位という状況ではなくなった
これら2車種とハリアーは、たった2年程度しか(登場時期が)違わないが、それでも後出しとなったクルマのほうが、デザインも技術的にも優位に感じる。特にデジタル面(メーターディスプレイなど)では顕著だ。ただ、ハリアーも2022年9月のマイナーチェンジで、新レイアウトの12.3インチの大画面ディスプレイを設定、エアコンパネル変更も併せて行うなど大改修を行い、上級グレードのメーターパネルには、全面液晶12.3インチTFTカラーメーター、マルチインフォメーションディスプレイを採用した。ライバルに対して見た目で損をする前に、最新仕様へとアップデートしており、抜かりはない。
ハリアーは、2022年9月のマイナーチェンジで、新レイアウトの12.3インチの大画面ディスプレイを設定、エアコンパネル変更も併せて行うなど大改修を行うなど、ライバル車の傾向をしっかりキャッチアップしている
ちなみに価格も、エントリーグレード比較だと、ハリアーの312万円(S)という価格に対し、エクストレイルが319万円(S)で、CX-60は299万円(25S、2022年12月頃販売開始予定)。上級グレード比較では、ハリアーハイブリッドGが433万円で、PHEVになると620万円、エクストレイルはe-4ORCE Gで449万円で、CX-60はPHEV Premium Modern(2022年12月頃販売開始予定)で626万円と、こちらもよい勝負となっている。また、身内になるが、新型クラウンクロスオーバー(435万円~640万円)も、ハリアーにとってライバルとなりうるだろう。
身内ではあるが、新型「クラウンクロスオーバー」もハリアーにとってライバルとなるだろう
都会派クロスオーバーSUVの名士であるハリアーだが、新型エクストレイルも、CX-60も、そして新型クラウンクロスオーバーも、完成度が非常に高いモデルだ。逆に人気になりすぎてしまっているハリアーよりも、これら3モデルのほうが新鮮に映る。ここにきて続々登場してきたライバルたちによって、ハリアーだけが絶対的に優位という状況ではなくなったといえる。
ハリアーの快進撃は今後も続くのか、それともライバルによる逆襲がこれから始まるのか。いずれにせよ、生産が安定しなくては、販売台数での考察は難しい。ますます熱くなる国産クロスオーバーSUV市場、今後が楽しみだ。
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