今年(2020年)4月の販売台数をもとに、軽自動車をランキング。トップ10にランクインしたクルマたちについて、自動車評論家の松田秀士氏に「推せるところ」と「考え込んでしまうところ」をそれぞれ上げてもらった。
モデルの評価は本文をご覧いただくとして、みごとなまでにスーパーハイトモデル(N-BOX、タント、スペーシア)とハイトモデル(N-WGN、ワゴンR、ムーヴ、デイズ)というふたつの売れ筋カテゴリーに属する車種で大勢を占めることになった。
あの熾烈な燃費競争は狂乱だった? それとも…?? ミライース対アルトエコ超絶燃費決戦の軌跡
ランキング上で存在感を見せたのが、今年新型に切り替わったハスラーとセダンモデルのミライース、ムーヴ派生のムーヴキャンバスである。
1位から順に見ていこう!
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※本稿は2020年6月のものです
車両解説:松田秀士氏/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年7月10日号
■1位 ホンダ N-BOX(1万4012台)
大ヒットした初代モデルをキープコンセプトにした現行の2代目モデル。こちらも大ヒット!
◎推せるところ……スーパーハイト系軽のなかでは室内静粛性が高く乗り心地もいい。適度なサスペンションのストローク感が後席での居住性をより高めている。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトにより後席床周りがフラットで、後席を座面ごと跳ね上げることで広大なスペースが出現する。ホンダセンシングによりADAS(運転支援システム)が充実している。
×考え込んでしまうところ……Aピラーが立っていることでルーフがダッシュボードよりも前に伸びていて、道路上方の信号や標識、看板が見えにくい。
・価格帯:141.1万~212.9万円
■2位 ダイハツ/スバル タント/シフォン(8623台)
軽スーパーハイトワゴンのパイオニアモデルで現行型は昨年7月登場。DNGA採用
◎推せるところ……降車時に予約しておけばキーを持って近づくだけでスライドドアがオープンする機能は、荷物で両手が塞がっていたり、また営業車的に使用する個人事業主にも便利な機能。半ドアでも自動でドアが閉まるイージークローザー装備は力の弱い高齢者にも優しい。スライドドアが閉まりきる前でも自動ドアロック予約が可能。左側前後ドア間にBピラーがないので開口部が大きい。
×考え込んでしまうところ……開口部の大きさゆえか、室内に若干ロードノイズが籠る。
・価格帯:124.3万~197.4万円
■3位 スズキ/マツダ スペーシア/フレアワゴン(6951台)
スズキのスーパーハイトモデルで、現行型は’17年登場の2代目。パレットの後継車
◎推せるところ……フロントガラス投影式のヘッドアップディスプレイを採用しているので視線移動が少なく疲れにくく安全。空気を循環させて前後席間の温度差を解消するサーキュレーターを装備している。全車マイルドハイブリッド化により燃費がいい。後席への乗り込み時、床(ステップ)が低く子供や高齢者に優しい。
×考え込んでしまうところ……多少ロードノイズが耳障り。低速時にステアリングのセンター付近がファジーで操舵感覚がダル。
・価格帯:135.8万~194.3万円
■4位 ダイハツ/トヨタ/スバル ミライース/ピクシスエポック/プレオ+(5723台)
2017年登場の2代目モデル。実は初代モデル比で最大80kgも軽量化されている
◎推せるところ……余計な装備品を外したグレードのチョイスが可能なことで圧倒的な低価格を実現。しかも低燃費。運転し始めてすぐに自分の身体の一部であるかのように感じるちょうどいいサイズ感。視界がよく運転がしやすいので気軽に乗れる。ダンパーのサイズが大きく乗り心地とハンドリングをサポートしている。
×考え込んでしまうところ……価格を考慮するとない物ねだりになるがインテリアにもっと上質感がほしい。安いがゆえに装備はOPやグレードによって異なる。チルトステアリングはG SAIIIにのみ装備される。
・価格帯:85.8万~137.2万円
■5位 スズキ/マツダ ハスラー/フレアクロスオーバー(4753台)
ヒットした初代から今年1月にバトンタッチ。キープコンセプトのようだが、違う点も多々
◎推せるところ……個性的なシルエットはさらにデザインが進化して健在。マイルドハイブリッドでNAもターボも燃費と走りを進化。ターボはモーターアシストのブーストアップによる加速が楽しめる。新プラットフォーム採用で車高に合わせたサスペンションが乗り心地と静粛性をアップ。オプションだが、9インチのタッチディスプレーが直感的操作で、走行中でも容易にモード変更可能。ヒルディセントやスノーモードも採用されている。
×考え込んでしまうところ……車線逸脱アラートはあるがLKA(レーンキーピングアシスト)ではない。
・価格帯:136.5万~174.6万円
■6位 ホンダ N-WGN(4681台)
昨年7月にFMCされた現行型は2代目で、軽ハイトモデルのなかでも有数の実力車
◎推せるところ……走行中のロードノイズを含めて室内静粛性が高い。横転予防のためにストロークさせず硬めのサスペンションが多い軽自動車のなかで程いいホイールストロークを実現して乗り心地がよく、路面からの外乱(凸凹路面)に対して安定した走行姿勢を維持する。ACC(アダプティブクルーズコントロール)+LKA(車線内中央維持)などのADAS(運転支援機能)を装備し、その制御も上質なものを採用している。
×考え込んでしまうところ……センタータンクレイアウトゆえ乗り込み時のステップ高が若干高い。
・価格帯:129.8万~182.7万円
■7位 スズキ/マツダ ワゴンR/フレア(4033台)
初代は軽ハイトモデルを確立したパイオニアで、現行型は2017年に登場した6代目
◎推せるところ……ハーテクトと呼ばれる新プラットフォームの採用により、ボディ剛性がアップ。これによるサスペンションのきめ細かな動きが乗り心地とハンドリングの両立を達成している。マイルドハイブリッドシステムによる燃費のよさ。さらにモーターがアシストする加速感。停止状態からブレーキを離した時にEVモードのモーターでのクリープを行って発進に繋げて燃費を節約する。
×考え込んでしまうところ……電動アシストはバッテリーの充電量が豊富な時で、このような状態は稀だ。
・価格帯:109.8万~177.6万円
■8位 ダイハツ/スバル ムーヴ/ステラ(3782台)
ダイハツのワゴンR対抗モデルで、現行は2014年登場の6代目でクラス最古参
◎推せるところ……走りがいい。軽量高剛性のDモノコックボディ、Dサスペンションの採用でハンドリングが大幅に進化している。フロントサスは1人乗りでバンプストッピングラバーまで15mmほどの余裕があり、ステアするとそこでロールが抑えられダイレクト感のある操舵フィール。ブレーキも応答性がよく踏力コントロールによる加減が良好。
×考え込んでしまうところ……ドラポジが見直されたがハイトアジャスターで上げるとペダルに当たる位置がズレてしまう。
・価格帯:113.3万~178.2万円
■9位 ダイハツ ムーヴキャンバス(3427台)
現行型ムーヴをベースとする派生モデルで、OEMモデルが存在しない車種
◎推せるところ……フロントはタント、両側スライドドアレールはウェイク、後部フロアはムーヴを使ったいいとこ取り。30代未婚女性親同居世代をターゲットというマーケティングが素晴らしい。サイズアップしたフリクションコントロールダンパーにより乗り心地がいい。置きラクボックスという後部座席を利用したバスケットモードは使い勝手がいい。4カメによるパノラマモニターは駐車が安心。
×考え込んでしまうところ……ターゲットを未婚、子育て終了、親同居女性としているが、限定しなくてもいいクルマ。
・価格帯:127.6万~171.0万円
■10位 日産 デイズ(2951台)
昨年FMCを受けた2代目。日産の軽としては初のプロパイロットを採用した
◎推せるところ……副変速機を廃したわりにはNAモデルの加速感は良好。自立直進性が高く高速道路での安心感が高い。ボディ剛性が高くステア操作に対する応答性が高い。スイッチをONにしてプロパイロットが路面を読みACC+LKAのアシストが入るまでが早いので実用的。ACCは0km/hからなので渋滞対応する。
×考え込んでしまうところ……チルトはあるがテレスコがないのでドラポジのステアリングが少し遠い。5000rpm付近のエンジンが少しノイジー。
・価格帯:129.6万~181.1万円
2020年4月の軽自動車 24位までの販売台数ランキング
* * *
■もちろん売れてないクルマにも“いいクルマ”はたくさんある!
11位には惜しくもトップ10入りを逃したスーパーハイトモデルのニューカマー、ルークスが2868台で控えるほか、安定した人気を誇り、独自の立ち位置を持っているクロカン4WDのジムニーも1231台で14位につけた。2015年登場と古参モデルとなったアルトラパンも1066台の16位で1000台超えを果たしている。
今後はハスラー対抗のダイハツタフトも登場。覇権争いの行方がさらに楽しみだ!
日産 ルークス
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みんなのコメント
先代モデルの中古価格の高騰が物語るモデルチェンジ失敗の証。
高速道も多少うるさいですが、常識範囲内のスピードなら問題なし。