現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > どちらが「ベターなM」か BMW M3 CS vs M2 クーペ 舞台は雨のサーキットへ BBDC 2023(4)

ここから本文です

どちらが「ベターなM」か BMW M3 CS vs M2 クーペ 舞台は雨のサーキットへ BBDC 2023(4)

掲載 3
どちらが「ベターなM」か BMW M3 CS vs M2 クーペ 舞台は雨のサーキットへ BBDC 2023(4)

小川の流れるアングルシー・サーキット

審査2日目の午前9時。グレートブリテン島中西部に位置する、アングルシー・サーキットのピットレーンを照らすシグナルが、ブルーに変わる。予報通り、朝から雨。横なぐりの。コントロールタワーから見下ろすと、コースを横切るように小川が流れている。

【画像】英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023 ノミネート車両11台と審査の様子 全70枚

このサーキットには、緩やかに右へ弧を描く高速コーナーの先に、ロケットと呼ばれるヘアピンカーブがある。ブレーキング直前、高性能なモデルでは220km/hを超える。

こんなトリッキーなコンディションを可能な限り平穏にこなすなら、FFホットハッチのホンダ・シビック・タイプRが良いかもしれない。あるいは、四輪駆動のスーパーサルーン、アウディRS7 スポーツバック・パフォーマンスも好適だろう。

そんなことを考える筆者を横目に、のっけからイリヤ・バプラートが自然吸気のV10エンジンを容赦なく回す。8500rpmのレブリミットへ当てながら、ピットレーンを出ていく様子に、筆者も気持ちが奮い立たされる。

彼はBBDC選手権の審査員として初めての参加だが、まったく萎縮する様子はない。610psを発揮するランボルギーニ・ウラカン・ステラートにも、臆さない。むしろ、一般道で感じ取った好印象を、更に探ろうとしている。

驚くほど、ドライバーの自信を喚起するスーパーカーだ。ランチタイムまでに、全員の審査員がウラカン・ステラートのステアリングホイールを握った。サンドイッチを口にしながら、5名の誰もが称賛の言葉を漏らす。

安心してシャシーの能力を引き出せる

「笑いが止まらないほど懐が深く自在」と、ジェームス・ディスデイルが口火を切る。悪路にも対応するブリヂストン・タイヤは、アンダーステアを見事に抑制。黒魔術で生成されたコンパウンドなのでは?と冗談を交える。

高速コーナーでも僅かなオーバーステアを許容する、シャシーの手懐けやすさにも触れる。ヘアピンから2速で立ち上がる、ケータハム・セブンのようだと話す。

ウラカン・ステラートは、サーキットを前提にしていない。だが、ランボルギーニが緻密にチューニングを加えた結果が見事に機能。むしろ、得意分野になっている。

ポルシェ911 ダカールとの違いも、明らかになった。2台とも近い時期に発売され、同じような仕立てにあり、比較されがちな関係にある。たとえポルシェでも、ウラカン・ステラート級の一体感や楽しさを獲得することは、簡単ではない。

911 ダカールの強みは、ドライビングポジションと直感的なステアリング。それは一般道だけでなく、サーキットでも活きる。動力性能では僅かに劣っても、より自然な操縦性でドリフトに興じれる。

「安心してシャシーの能力を引き出せます。四輪駆動システムは、想像以上の仕上がり。前進しながら、思い切りテールスライドで振り回せます」。とアンドリュー・フランケルが微笑む。

ウラカン・ステラートで深いドリフトアングルへ持ち込むと、ドライブトレインの挙動が乱れる場面があった。派手にドリフトを続けるべきか、進行方向へなだめて加速するべきか、判断を迷うように。

ほぼ完璧なバランスと狙い通りのスタンス

911 ダカールは、より柔軟。ドライバーの意志に任されている。その正確な反応は、ポルシェという血統書に相応しい。それでも、秀抜のウラカン・ステラートを上回るほどの喜びかと聞かれると、即答は難しいだろう。

ドライバーズカーとしての評価軸は、喜びだけではない。思い通りに操れる充足感も、大切な指標の1つ。BMW M2 クーペがコーナーで体験させる、ほぼ完璧なバランスと狙い通りのスタンスは、間違いなく満ち足りた気持ちにしてくれる。

現在のBMW Mモデルで最も小柄ではあるが、最高出力は460psもある。ジュニアという表現が相応しいとは思えないものの、もう1台のBMW、M3 CSより扱いやすく、攻め込みやすい。

対するM3 CSは、大きく硬く、望まない瞬間でオーバーステアへ振られることもしばしば。濡れた路面では、アンダーステアへ転じることも。同時に、M2 クーペより熟成された操縦性でリカバリーしやすい。

サスペンションは見事。ボディを軽く感じさせる。

2台のBMWの評価は、審査員で別れた。ディスデイルはM3 CS推し。「サーキットでは、正確に速さを追求することもできますし、ドリフトマシンのように奔放に振り回すこともできますね」。M2は、締まりが弱いと印象を比較する。

M2 クーペ推しのフランケルは、「Mモデルとしての正解。突出した特長はないかもしれませんが、指摘するような弱点もありません」。と振り返る。M3 CSほどのドラマチックさはないとしても、充足感は高いと反論する。

個性としての違い 審査員の好みも異なる

プライヤーは、M3 CSを高く評価する。「M2よりベター。ドライでは、先代のM4 GTS並みに優れていると想像できます。ただし、全員がそう感じるとは思いませんが」

「あらゆる場面でのパフォーマンスを比較すれば、恐らくM2の方が完成度は高いと思いますよ。期待値よりグランドツアラー寄りかもしれませんが、より優れるでしょう」。と、控えめ(?)にわたし、リチャード・レーンも意見した。

バプラートも印象は異なる。「自分は、M3 CSの方が遥かに整っているように感じました」。M2 クーペの限界領域での特性は、さほど漸進的ではなかったと話す。M3 CSは、フロントアクスルを完璧に活用できている、とも付け加える。

時間をかけて意見を交わしても、平行線だろう。個性としての違いはあり、審査員の好みも異なる。2台のBMWが、魅了する走りを披露したことは間違いない。

BMWらしく、アクセルペダルの加減でコーナリングラインを調整でき、高速でアングルシー・サーキットを周回できたことは事実だ。M3 CSの方が、動的能力では洗練されている。躍動的な特性も宿す。

M2 クーペは、動力性能や正確性でM3 CSには届いていない。しかし懐が深く、ハードにプッシュせずとも、BMWらしい操縦性を楽しめる。加えて6速MTでもあり、しっかり身体を支えるバケットシートへ身を委ね、両手両足で操る楽しさへ浸れる。

どちらかがベスト3へ勝ち残る可能性は、充分にある。特に、ゴールドのホイールを履いたM3 CSは。

この続きは、BBDC 2023(5)にて。

こんな記事も読まれています

【輸入車BEV販売比率1位のアウディ】 急速充電ステーションを東京都千代田区にオープン
【輸入車BEV販売比率1位のアウディ】 急速充電ステーションを東京都千代田区にオープン
AUTOCAR JAPAN
フリード&シエンタの対抗馬はこれでいい! 日産にはキューブキュービックという3列ミニバンがあったじゃないか!
フリード&シエンタの対抗馬はこれでいい! 日産にはキューブキュービックという3列ミニバンがあったじゃないか!
ベストカーWeb
【MotoGP】クアルタラロ、タイヤ内圧違反でスペインGPスプリント3位失う。代わってペドロサが2017年以来の表彰台
【MotoGP】クアルタラロ、タイヤ内圧違反でスペインGPスプリント3位失う。代わってペドロサが2017年以来の表彰台
motorsport.com 日本版
ニュルの頭文字を掲げる電気自動車【ヒョンデ Nブランド】
ニュルの頭文字を掲げる電気自動車【ヒョンデ Nブランド】
グーネット
自由に闊歩するロバたちはゴールドラッシュの名残り!? オートマンは街まるごとテーマパークのような観光スポットです【ルート66旅_49】
自由に闊歩するロバたちはゴールドラッシュの名残り!? オートマンは街まるごとテーマパークのような観光スポットです【ルート66旅_49】
Auto Messe Web
ジャガー、してやったり! 完璧チームプレイで他チーム翻弄ワンツーフィニッシュ|フォーミュラE第8戦モナコ
ジャガー、してやったり! 完璧チームプレイで他チーム翻弄ワンツーフィニッシュ|フォーミュラE第8戦モナコ
motorsport.com 日本版
ボルボの雪上テスト現場へ潜入! EX30でエルク避けを体験 ソフト開発での重要性も増す
ボルボの雪上テスト現場へ潜入! EX30でエルク避けを体験 ソフト開発での重要性も増す
AUTOCAR JAPAN
MotoGPスペインGPスプリント|マルク・マルケス、転倒で勝利幻に……荒れた展開生き残りマルティンが制す
MotoGPスペインGPスプリント|マルク・マルケス、転倒で勝利幻に……荒れた展開生き残りマルティンが制す
motorsport.com 日本版
なんちゃってセレブが「オートモビルカウンシル 2024」に潜入。インパクト大賞は「ランボルギーニ」顔のソファです
なんちゃってセレブが「オートモビルカウンシル 2024」に潜入。インパクト大賞は「ランボルギーニ」顔のソファです
Auto Messe Web
複数年契約を結んだヒュルケンベルグはアウディF1の一員に「ドイツ製PUを搭載し自動車ブランドを代表するのは光栄なこと」
複数年契約を結んだヒュルケンベルグはアウディF1の一員に「ドイツ製PUを搭載し自動車ブランドを代表するのは光栄なこと」
AUTOSPORT web
フェラーリの『499P』理解度は約8割。「残り20%をうまくコントロールする必要がある」
フェラーリの『499P』理解度は約8割。「残り20%をうまくコントロールする必要がある」
AUTOSPORT web
6MT搭載! 新型「“FR”クーペ」公開! 830馬力超えV8搭載の「最強モデル」! 60年で“最も楽しい”「スーパースネーク」米に爆誕
6MT搭載! 新型「“FR”クーペ」公開! 830馬力超えV8搭載の「最強モデル」! 60年で“最も楽しい”「スーパースネーク」米に爆誕
くるまのニュース
レッドブルF1の技術責任者、退団か 「圧勝」支えたエイドリアン・ニューウェイ氏、チーム内騒動で不満?
レッドブルF1の技術責任者、退団か 「圧勝」支えたエイドリアン・ニューウェイ氏、チーム内騒動で不満?
AUTOCAR JAPAN
ニコ・ヒュルケンベルグ、今シーズン限りでハースF1を離脱。2025年にザウバーへ移籍
ニコ・ヒュルケンベルグ、今シーズン限りでハースF1を離脱。2025年にザウバーへ移籍
AUTOSPORT web
ランボルギーニがレースを目指す理由とは? 最高技術責任者とドライバーが語る「スピードを超えた情熱」の先にある「ランボ体験」の創造を知ろう
ランボルギーニがレースを目指す理由とは? 最高技術責任者とドライバーが語る「スピードを超えた情熱」の先にある「ランボ体験」の創造を知ろう
Auto Messe Web
新しい循環型ビジネスモデル 「ランドローバーのSDGs」 使用済みPHEV車のバッテリーパックを活用
新しい循環型ビジネスモデル 「ランドローバーのSDGs」 使用済みPHEV車のバッテリーパックを活用
AUTOCAR JAPAN
Moto2スペイン予選|アルデゲルがポールポジション獲得。日本勢は小椋藍17番手と苦戦
Moto2スペイン予選|アルデゲルがポールポジション獲得。日本勢は小椋藍17番手と苦戦
motorsport.com 日本版
レクサスが「新型プレミアムSUV」発売へ 14年ぶり全面刷新でめちゃ上質内装דカクカクデザイン”採用! 日本初投入の「新型GX」内外装の特徴は
レクサスが「新型プレミアムSUV」発売へ 14年ぶり全面刷新でめちゃ上質内装דカクカクデザイン”採用! 日本初投入の「新型GX」内外装の特徴は
くるまのニュース

みんなのコメント

3件
  • tkkas 0531
    M3のフロントマスクだけでも何とかならんのかあ

    綺麗どころの中に1人だけブスいてるみたいやわ



    スポーツカーはビジュアルが大切
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

958.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

294.9938.0万円

中古車を検索
M2 クーペの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

958.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

294.9938.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村