マツダが新たに投入する3列シートSUV「CX-80」の魅力とは。ひと足はやく実車を見た、今尾直樹がリポートする。
全長5.0m&全幅1.9m以下にこだわる
新型CX-80の撮影会は房総半島の南東部、千葉県いすみ市にあるグランピング場で開かれた。簡単なブリーフィングのあと、案内されるままにそのグランピング場の塀に囲まれた一角に足を運んでみると、そこにCX-80が1台、ひっそりと置かれていた。「メルティングカッパーメタリック」という名称の「溶かして固めた銅の表面に薄くサンドブラストをかけたような表情を持つ」国内初採用のペイントをまとったそれは、マツダのフラッグシップらしく、エレガントで、直截に申し上げると、高級そうに見えた。
新型CX-80は、2022年に発表された新世代ラージ商品群第1弾たる「CX-60」のホイールベースを250mm延ばした3列シートのミッドサイズSUVである。後輪駆動ベースのプラットフォームを採用するラージ商品群を、さらに上へグイッと進出ためのカギを握る勝負作、あるいは野心作といえる。
3列シートのSUVということでは「CX-8」の後継にあたる。エンジン横置き、前輪駆動ベースのCX-8は2017年の発売以来、国内での累計販売台数が10万台に達している。マツダとしては大きな数字で、この買い替え需要に応える必要もある。そのため、CX-80の価格帯は幅広く、CX-8に近いところからはじまっている。
ボディ・サイズはCX-80のほうがCX-8より若干大きい。全長×全幅×全高=4990×1890×1710mmで、CX-8比65mm長くて45mm幅広く、20mmほど低い。一方、ホイールベースは3120mmもある。これは前述したように2列のCX-60より250mm、3列のCX-8と較べても190mm長い。にもかかわらず、全長を5.0m以下、全幅を1.9m以下にこだわったのは、国内とヨーロッパでの取りまわしのよさを慮ってのことだ。
リムジンみたいに広い筆者の主観によれば、CX-80の魅力はインテリアの華やかさにある。メルティングカッパーメタリックの展示車は2列目シートがキャプテンタイプ(3人がけのベンチシートもある)、シート表皮に純白のナッパレザーが用いられていて、ヨーロッパのプレミアム・ブランドを彷彿とさせる。どのブランドということはない。そういう意味ではマツダのオリジナリティはちゃんとある。
CX-8と較べると、室内空間は、2列目シートのヘッドルームは8mm、ショルダールームは103mm広がっている。足元は、資料に数字がないので、こう申しあげたい。リムジンみたいに広い。
3列目シートのヘッドルームは30mm増で、シートに約25mm深く座らせることで姿勢を安定させているという。マツダの主張によれば、リヤのクオーターウインドウの大型化により、広々感はむしろ向上している。床下格納式にしてはクッションの厚みがあり、短距離の移動なら使えそうだ。
Bピラーから前のコンポーネントはCX-60と共有で、3.3リッター直列6気筒ディーゼル・ターボとそのマイルドハイブリッド、さらに2.5リッター直列4気筒ガソリンとモーターのPHEVの3種類がパワーユニットとして設けられている。CX-60同様、ギヤボックスはすべてトルコンレスの8速ATとの組み合わせで、グレード構成もCX-60に準じている。
マツダの魅力はそこにあるデザインの責任者に話を訊けたので紹介しておこう。
CX-60とCX-80、両方を手がけた玉谷聡がその人である。長いホイールベースと、相対的に短い全長、狭めのトレッドと低めの全高を特徴とする、ダックスフンド体型で、いかにグレースフル(優雅な)デザインに仕立てるか?
玉谷によると、開発を始めた当初からフロントのドアを共通とすることが決まっていた。
「単純な話、60ではスポーティ、スピーディに見せるためにBピラーから後ろのウインドウグラフィックは下におろしていきたい。でも、80では3列目シートがあるから、もうちょっと真っ直ぐにしたい。そこで、60と80がギリギリ許容できるラインを最初にざっくり見ておいて、60をフィニッシュしてから80に取りかかる。そんなやり方をしました」
CX-60はクーペっぽくて、CX-80はワゴンぽい?
「ひらたくいえば、そうですけど、CX-80ではいままでのマツダの〈かっこよさの方程式〉を外したんです。かっこよさというか、『美しさの方程式』。ボディが強くて、キャビンがタイト。マツダの“魂動(こどう)”デザインのかっこよさのベースがそれです。でも、CX-80では、どっちかというと水平方向で落ち着かせていきながら、骨格をつくるという、ちょっと違う方程式を用いています。それと、後輪駆動なので、後輪にしっかりと荷重をかけて跳躍していくような、地球上の地面を走る動物の原理原則に従い、そういう重心の取り方を心がけた。あとは面のコントロールをライブで、光の移ろいをきちっと表現する、そういう質感を出そう、と」
こんなことも話した。
「ホントはCX-60もスタイリングの観点から、もうちょっと幅を広げたかったんです。最初は1850mmでスタートして、結果的に1890mmになったんですけど、これは室内幅をきちっととりたかったのと、FR(後輪駆動パッケージ)にして回転半径をきちっとするには、1850mmではできないことがわかったから、だったんです」
前輪の操舵角に見合う空間を確保するためのプラス40mmだった。
「つまり、造形しろはぜんぜん増えていない。光をバーっと動かすには全幅があったほうがいい。だけど、商品性(取りまわしのよさ)を考えると1890mmがギリギリ。という話があって、CX-60はフィニッシュしました」
デザイナーとしては、察するに、満足できなかったらしい。
「次に80ですけど、最初は『やりたくないなぁ』と、思いました。だって、胴体だけが250mm延びるんですから。かっこよさ、美しさの方程式からいったら、胴長になってカッコ悪くなる。いろいろ悩んでいたなかで、いままでの方程式を外した。違うものを表現しよう。という発想なんです。キャビンを小さくして、ボディを強くして、という“魂動”のスポーティさとは異なる豊かさって、僕は若い頃からあると思っていて、ぜんぜん違うジャンルのクルマで、競合もしませんけど、ロールス・ロイスのセダン、クーペの骨格のつくり方とかボディ、大きな面を微妙にツイストさせながら使ったりする、あのやり方が船みたいにきれいなんですよね。すごくいい。そういう豊かさをマツダの造形のなかに込められないかなと思って、キャビンをわざと大きく見せて、2列目、3列目のシートの空間がリッチにありますよ、ということをひと目でわからせるようにしたい。と考えたんです。
CX-8は違うんですよ。リッチな空間はつくっているのに、そうじゃない見せ方をしている。今回はその逆なんです。実際、ヘッドルームを30mmぐらい上げたりして、乗るみなさんが“いい空間だね、”と、感じられる操作をしている。3列目シートも、広くはないけど、ちゃんと飛行機みたいに自分用の窓があって、前からの景色がつながって見えるようにしたりしています」
なるほどCX-80のサイド・ビューはロールス・ロイスの「シルバー・スピリット」等を思わせないこともない。
「じつはリフトゲートとリヤのコンビライトはアメリカ向けのCX-90を持ってきているんです。Bピラーから前はCX-60。真後ろは90で、その間しかつくれない。われわれは、そこに思いを違和感なく全部つめこもう、と。なかなかむずかしかったですよ」
そう語った玉谷の顔には、やり切った充実感と自信がうかがえた。志(こころざし)は高く。いつもながら、マツダの魅力はそこにある。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
60の時はアストンの名前出してたよな。なんていうかさ、大衆車メーカーなんだから、身の丈にあった話した方がいいと思うんだよね。
300万円台からの大衆車でアストンやロールス語られても、失笑しか起きないのよ。
全くフラットな視線で見れば大した事無い振動等も色眼鏡掛けて見られると、またCX-60の二の舞いになると思われてしまう。
出来れば悪い前評判を覆す程の完成度の車で有って欲しいと共にマツダは高級車メーカーでは無いのでCX-8の様にコスパの良い価格での販売を願う。