現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「背の低いミニバン」今なら受け入れられる? ホンダの原点回帰は新しいのか、“時代に逆行”なのか

ここから本文です

「背の低いミニバン」今なら受け入れられる? ホンダの原点回帰は新しいのか、“時代に逆行”なのか

掲載 15
「背の低いミニバン」今なら受け入れられる? ホンダの原点回帰は新しいのか、“時代に逆行”なのか

ホンダらしさ爆発? 新EV「0(ゼロ)シリーズ」

 ホンダは2024年1月上旬にアメリカのラスベガスで開催された「CES 2024」において、新たなEVラインナップとなる「0(ゼロ)シリーズ」を発表しました。2026年の発売を予定しており、そのイメージを示す「SALOON(サルーン)」と「SPACE-HUB(スペース・ハブ)」という2台のコンセプトカーが登場しました。

【画像】ホンダの「新EVシリーズ」を見る

 その特徴は「Thin(薄い)」「Light(軽い)」「Wise(賢い)」の3つのキーワードと、ホンダ伝統の「MM思想(マンマキシマム・メカミニマム:人のための空間を広く、機械の空間は狭く)」を掛け合わせたものです。「SALOON」は、4人乗りでありながらも、まるでスーパーカーのようなワイドで低い、迫力あるスタイルです。

 そして、「SPACE-HUB」は、スライドドアを持つミニバンでありながらも、絶妙に背が低いように見えます。ちなみに今回の発表では、実際の寸法は明らかにされていません。

 しかし、撮影などで近寄ってみると、明らかに人の背の高さと変わらないものでした。全高1935mmの「アルファード」のような見上げる高さではないのです。「SPACE-HUB」の全高は1800mmを切っているようにも思えます。

 あれ? これって要するに“背の低いミニバン”、つまりは「オデッセイ」のEV版ということになるのではないでしょうか。

EVに適用すれば“全てが良し”? ホンダの「MM思想」

 もともとホンダは「MM思想」を体現した製品を数多くヒットさせてきました。燃料タンクを、後輪まわりではなく、車体の真ん中の床下に置くことで、室内を広くしたのが「フィット」と「N-BOX」です。これも「MM思想」そのもの。

 また、背の低いミニバンとしてヒット作となったのが「オデッセイ」でした。特に、現行モデルは、床を薄くすることで、低い背のまま室内空間を広くしています。これも「MM思想」と言えるでしょう。

 そうしたホンダ独自のヒットの法則が「MM思想」です。EVに当てはめれば、全高を低くすることで、空気抵抗が小さくなるほか、機械が小さいので、クルマは軽くなります。軽く抵抗が少なければ、搭載する駆動用バッテリーが小さくても航続距離を稼ぐことができます。さらに、バッテリーが小さければ、価格は安くなり、充電にかかる時間も短くなります。薄く、軽くなれば、すべてが良い方向に転がり、まさに“賢い選択”というわけです。

 ホンダは、EV時代も「MM思想」で勝負をかけるということでしょう。

 しかし、現実社会は、理屈や理想だけでは通らぬもの。嗜好品という側面もあるクルマも、売れる理由は理屈や理想だけではありません。

 具体的に言えばミニバンです。日本は世界屈指のミニバン人気市場。そこで、圧倒的な強者となっているのが「背が高く大きなミニバン」です。Lサイズクラスでいえば、トヨタの「アルファード」が席捲しています。全高1935mmの見上げるような高さ、圧倒的な存在感の強さで人気を集めているのです。

 実のところ「背の低い」を売りにするホンダの「オデッセイ」も、時代の要請に合わせて、2013年に登場した現行モデルは、1500mm台であった先代や先々代より、100mm以上も背を高くしています。2023年に再販となった最新モデルは全高が1695mmあります。「アルファード」の1935mmと比べれば、十分に背が低いですが、ちょっと前の「オデッセイ」と比べれば、それでも背が高くなっています。

“小さく賢いEV”の逆風

 ミニバンの世界でも、理屈から言えば、背が低い方が、空気抵抗が小さくて軽くなり、運動性能的には有利。しかし、現実には理屈ではなく、背が高くて立派なクルマが好まれています。軽自動車のベストセラーカーであるホンダの「N-BOX」も、非常に背が高く、広い空間が売り。実際のところ、「N-BOX」の全高は1790mm(2WD車)もあって、「オデッセイ」よりも背が高いのです。

 また、EVの世界でも、小さく賢いクルマよりも、大きくて立派で、バッテリーを大量に搭載した高額なクルマばかりというのが現実です。「小さくて賢い」を売りにした「ホンダe」は残念ながら、発売終了となってしまいました。

 そういう意味で、ホンダの「0(ゼロ)シリーズ」は、EVにおいては、重くてデカイという「世界の潮流に逆行」しているという見方もできます。

 しかし、ホンダの「MM思想」が間違っているわけではありません。過去に何度もヒットを生み出していますし、理屈的には、非常にまっとうで有用です。逆に、今のミニバン人気が少々いびつともいえるでしょう。

 ですから、本格的なEV時代が到来したときに、顧客がどのような価値を求めるかは、まだわかりません。小さく、軽く、賢く、そして「MM思想」がEVに通じるのか。それとも日本のミニバン市場のように、見栄えの良い、大きくて重いクルマが人気となるのか――そこで重要となってくるのが、新しい「0シリーズ」のスペック(性能や価格)です。そのスペックが、ユーザーのハートをつかめるかどうかに注目です。

※一部修正しました(1/28 18:37)

こんな記事も読まれています

損保大手3社、決算は最高益を更新、自動車保険料は値上げ検討[新聞ウォッチ]
損保大手3社、決算は最高益を更新、自動車保険料は値上げ検討[新聞ウォッチ]
レスポンス
これからさらに気をつけたい紫外線! バイクや人にどのような影響を与えるのか
これからさらに気をつけたい紫外線! バイクや人にどのような影響を与えるのか
バイクのニュース
覆面パト“装い”事故… 「パトカーもどきカスタム」どこからが違反? 過去には「白黒パトカー仕様」で検挙事例も
覆面パト“装い”事故… 「パトカーもどきカスタム」どこからが違反? 過去には「白黒パトカー仕様」で検挙事例も
くるまのニュース
プジョーの次世代EVは航続800km 、680馬力ツインモーター搭載…仏 VIVATECH 2024 出展へ
プジョーの次世代EVは航続800km 、680馬力ツインモーター搭載…仏 VIVATECH 2024 出展へ
レスポンス
デンソー、ルネサス株を売却 保有の半数以上 政策保有株の見直しで
デンソー、ルネサス株を売却 保有の半数以上 政策保有株の見直しで
日刊自動車新聞
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「インド」の捉え方と日系サプライヤー進出の落とし穴
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「インド」の捉え方と日系サプライヤー進出の落とし穴
レスポンス
スバル新型「4ドア・セダン」初公開! 進化版WRX S4!? 改良「水平対向ターボエンジン」搭載! SNSの反響は? 今週末に発表へ
スバル新型「4ドア・セダン」初公開! 進化版WRX S4!? 改良「水平対向ターボエンジン」搭載! SNSの反響は? 今週末に発表へ
くるまのニュース
世界初の量産ストロングハイブリッドバイク カワサキ「NINJA 7 HYBRID/Z7 HYBRID」発売日延期
世界初の量産ストロングハイブリッドバイク カワサキ「NINJA 7 HYBRID/Z7 HYBRID」発売日延期
バイクのニュース
マクラーレンF1、没後30年のアイルトン・セナに捧げる特別カラーリングを公開。黄・緑・青のマシンがモナコ駆ける
マクラーレンF1、没後30年のアイルトン・セナに捧げる特別カラーリングを公開。黄・緑・青のマシンがモナコ駆ける
motorsport.com 日本版
スバルは『レイバック』搭載アイサイトXなどを展示予定…人とくるまのテクノロジー展2024
スバルは『レイバック』搭載アイサイトXなどを展示予定…人とくるまのテクノロジー展2024
レスポンス
昭和だなぁ……としかいいようがない! かつて公道で子どもが普通にやっていた危険な行為4選
昭和だなぁ……としかいいようがない! かつて公道で子どもが普通にやっていた危険な行為4選
WEB CARTOP
〈人とくるまのテクノロジー展2024横浜〉各社の出展概要(上)電動化や脱炭素、最新技術一堂に
〈人とくるまのテクノロジー展2024横浜〉各社の出展概要(上)電動化や脱炭素、最新技術一堂に
日刊自動車新聞
[15秒でわかる]日産『タウンスター・エバリア』…新型ミニバンを欧州発表
[15秒でわかる]日産『タウンスター・エバリア』…新型ミニバンを欧州発表
レスポンス
【世界一豪華なオークション】RMサザビーズ モナコオークション その2 イタリア車編 アルファ、ランチア、ランボ&フェラーリ!
【世界一豪華なオークション】RMサザビーズ モナコオークション その2 イタリア車編 アルファ、ランチア、ランボ&フェラーリ!
AutoBild Japan
出口”通り過ぎた! もし高速道「インター」間違えたらどうする!? 意外と知らない「救済」措置とは
出口”通り過ぎた! もし高速道「インター」間違えたらどうする!? 意外と知らない「救済」措置とは
くるまのニュース
「トゥクトゥク通学」学生の問題意識から生まれたレンタルサービス、実証試験を開始
「トゥクトゥク通学」学生の問題意識から生まれたレンタルサービス、実証試験を開始
レスポンス
グッドイヤー WEC LMGT3用タイヤに投入するサスティナビリティへの取り組みを発表
グッドイヤー WEC LMGT3用タイヤに投入するサスティナビリティへの取り組みを発表
Auto Prove
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「中国EVはなぜ脅威なのか」北京モーターショーで見た中国国産EVの今と未来
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「中国EVはなぜ脅威なのか」北京モーターショーで見た中国国産EVの今と未来
レスポンス

みんなのコメント

15件
  • kab********
    RBのようなオデッセイをもう一度作って。
  • mis********
    みんなで似たような車作らなくても、一味違った発想ってすごく良いと思うんだけど、、ホンダさんって迷走してるみたいにコロコロ変わるからな〜なんか微妙〜
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

480.0516.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

8.0563.0万円

中古車を検索
オデッセイの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

480.0516.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

8.0563.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村