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消えたカテゴリーの面影を偲ぶ 世界一豊かだった日本車文化の象徴たち

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消えたカテゴリーの面影を偲ぶ 世界一豊かだった日本車文化の象徴たち

 クルマは形状や用途などによってさまざまなカテゴリーに区分けされる。しかし、長い歴史のなかでいつの間にか消えてしまったカテゴリーもある。今回はそうしたいにしえのカテゴリーにスポットを当て、代表的な車種をあげつつ、それらが消えてしまった理由を考えていきたい。

文/長谷川 敦、写真/トヨタ、日産、三菱、ホンダ、スズキ、FavCars.com

消えたカテゴリーの面影を偲ぶ 世界一豊かだった日本車文化の象徴たち

日本の秘書は運転しなかった!? 「セクレタリーカー」

日本では「友達以上恋人未満。」のキャッチコピーで1991年にデビューしたトヨタ サイノスだが、北米市場ではセクレタリーカーとしての需要が見込まれていた

 最初に紹介するのは、かつてアメリカ(北米)で脚光を浴びた「セクレタリーカー」だ。「セクレタリー」とは秘書のことで、直訳すると「秘書のクルマ」。つまり秘書に象徴される働く女性が通勤に使用するクルマということになる。

 80~90年代のアメリカでこうしたセクレタリーカーに注目が集まり、ライトウェイトクーペがセクレタリーカーの代表としてもてはやされた。日本で言えば軽自動車感覚だが、そこは国土の広いアメリカ、ライトウェイトクーペでも十分に小さいクルマだった。

 日本車でセクレタリーカーとして数えられたのが、トヨタ サイノスや日産 NXクーペ、三菱 エクリプスなど。いずれも手軽に乗れてちょっとオシャレなクルマを望んでいたアメリカの働く女性にウケてヒットモデルとなった。

 しかし、我が国ではそもそも働く女性がクルマで通勤するケースがアメリカに比べて少なく、セクレタリーカーというカテゴリーそのものに需要がなかった。加えて実用車の人気はクーペからSUVへと移り変わり、カテゴリーとしてのセクレタリーカーもあやふやになってしまった。

 アメリカではまだまだ働く女性が通勤用のクルマを必要としているものの、近年ではジェンダーフリーの観点から「秘書=女性の仕事」という認識もNGになっていることもあり、あえてセクレタリーカーというくくりでクルマを語ることはほぼなくなっている。

需要はあっても車種は変わった? 「ショーファーカー」

これぞ究極のショーファーカーとも言うべき日産 プレジデント・ロイヤルリムジン(1993年発売)。全長5.7mの車体に4.5リッターV8エンジンが搭載された

「ショーファー」とはフランス語で「お抱え運転手」の意味。つまり、専属運転手がいるような人が購入するクルマがショーファーカー(ショーファードリブン)だ。

 ショーファーカーの代表的だった国産車が日産 プレジデントやトヨタのセンチュリー。どちらも大柄な4ドアセダンであり、お値段もそれなりのもの。かつて黒塗りのセンチュリーが走っていると、後部座席には年配の紳士が乗っているなどという光景に出くわしたものだ。

 自身では運転せずに、お抱え運転手を雇えるような富裕層や、運転を他人に任せて車内でも仕事をしたい実業家などは現在でも存在する。つまりショーファーカーの需要は現在もあるはずなのだが、あまりこの言葉を耳にする機会は少なくなり、高級4ドアセダンも減ってきている気がするとは思わないだろうか?

 どうやら最近はトヨタ アルファードなどのハイクラスミニバンがショーファーカー的な使われ方をされているようだ。車内の広いミニバンは乗り心地も良く、最近の風潮では“いかにも”なショーファーカーは敬遠される傾向もある。たとえお抱え運転手がいても、エコなHVなどに率先して乗るのがハイクラスのステータスというわけ。

 とはいえトヨタ センチュリーは国内唯一のショーファーカーとして継続生産されているし、海外ではショーファーカーのために作られたまだまだクルマも多い。

趣味性と実用性の狭間に消えたか? 「ミドシップライトウェイト」

660ccエンジンをミドシップに搭載して、理想的な重量配分を実現したホンダS660。2021年からの衝突被害軽減ブレーキ搭載義務などの影響もあって生産終了に

 この項で紹介するのは、カテゴリーがなくなったというより、該当するクルマが著しく少なくなったことで消滅の危機に陥りつつあるものだ。

 それほど排気量の大きくないエンジンを軽量な車体にミドシップ(運転席と後輪の間)搭載し、キビキビとしたハンドリングを楽しめるのがミドシップライトウェイトスポーツ。かつては通好みのカテゴリーであり、それなりにバラエティに富んだ車種が存在していた。

 しかし、ロードカーユーザーのスポーツカー離れは進んでいて、今では実用性に難のあるミドシップライトウェイトのニーズは限定されてしまう。その証拠に、軽自動車規格ながらグイグイ走れるミドシップライトウェイトスポーツカーのホンダ S660が22年3月をもって生産を終了した。

 トヨタのMR2&MR-S、そしてマツダのAZ-1、ホンダ ビートなど、かつては日本にも存在したミドシップライトウェイトだが、ホンダ S660の終了でついに国産車のラインナップから消滅することになる。

 レーシングカーと同じレイアウトを採用し、走りに特化したミドシップライトウェイトスポーツ。ミドシップレイアウトそのものはスーパースポーツカーのなかで生き残る可能性があるが、誰でも買えるミドシップライトウェイトはもはや風前の灯か?

モノは同じでも呼び名が変わった! 「RVとSUV」

1991年発売の2代目三菱 パジェロ。当時の日本国内はRVブームであり、その尖兵が2代目パジェロだった。やがてこのパジェロもSUVと呼ばれるようになる

 この記事を読んでいる間に「そういえばRVってあまり聞かなくなったな」と思った人がいるかもしれない。RVとは「レクリエーション ビークル」の略で、その名称どおりレクリエーション(娯楽、休養)に用いられるクルマのこと。

 悪路の走破性が高く、走る場所を選ばないクロスカントリーモデルが休日に利用されやすいこともあってRVと呼ばれるようになり、いつしかクロカン=RVのイメージも固まっていった。

 しかし、今度はSUVというカテゴリー名が登場する。こちらは「スポーツ ユーティリティ ビークル」を意味し、日本語で言えば「スポーツ向きの万能車両」といったもの。つまり車体&エンジンのサイズや車体形状などに準じたカテゴリー名ではない。

 ここまで読むと、RVとSUVに大きな違いがないように思えるだろう。実際にそのとおりで、要するにメーカーが「ウチのこのクルマはSUVです」と言えばSUVだし、「RVです」と言えばRVということになる。このあたりメーカーのイメージ戦略も関わっていて、現在ではSUVのほうがRVに比べてメジャーになっている。

 RVというカテゴリーが消えてしまったわけではないが、現代の日本ではSUVのほうがより定着していて、RVがなくなったように思えるだけとも言える。

バブル景気が生んだバブリーなカテゴリー 「ハイソカーとデートカー」

ハイソカーの象徴とも言うべき2代目トヨタ ソアラ。安価なクルマではなかったが、1986~1991年の販売期間に30万台を売り上げるというヒット作になった

 80年代末~90年代初頭にかけてのバブル景気では、その勢いに乗って新たなクルマの区分が生まれている。ここから紹介するふたつのカテゴリーはメーカーが正式に呼称したのではなく、ユーザーやマスコミがなかば勝手に呼んでいたものだが、バブルを象徴する存在として覚えている人も多いだろう。

 まずは「ハイソカー」。ハイソカーの「ハイソ」は「ハイソサエティ」の略で「上流階級」のこと。だから上流階級の人々が乗るようなクルマをハイソカーと呼ぶかというと、ことはそう単純でもない。

 バブル景気で好調だった日本では、本来なら手が出しにくい価格帯のクルマでも、頑張れば購入できるのではないかという夢が見られた。そんなムードに乗って、ちょっと高級なクーペやセダンを「ハイソカー」と呼んでもてはやす空気があった。

 そうした名誉ある(?)ハイソカーに選ばれたのがトヨタのソアラやクレスタなど。もちろんメーカー公認ということではないので、どのクルマをハイソカーと呼ぶのかは個人の判断によっていた。

 そしてバブル期に流行したもうひとつのカテゴリーが「デートカー」。こちらもメーカー主導ということではなく、カップルで乗るクルマがそう呼ばれていた。

当初はホンダ プレリュードや日産 シルビアのようなスポーツ系のモデルがデートカーに相当したのだが、やがてトヨタ bBに代表されるトールワゴンがデート向きのクルマと言われるようになった。

 最後に紹介したハイソカーとデートカーはバブル景気の勢いから生じた文字どおり泡のごとき呼び名であり、世の中が落ち着いてくるとそれらの呼称も自然に消滅してしまった。

(編集部注/この他、ハイラックス以外に姿を消した「ピックアップトラック」部門や、カローラフィールダー、レヴォーグ、マツダ6ワゴン以外の車種がなくなった「ステーションワゴン」部門など、絶滅危惧種といえるカテゴリーもある。セラやbBオープンデッキ、X-90、ラシーン、ツインのような、「これ、どのカテゴリーにも入れられなくない?」というクルマはめっきり見かけなくなった。思えば20年前の日本車は今よりずっと選択肢が豊富だった。自動車の技術は進化し、安全性能も動力性能も快適性も格段に向上していることは間違いないが、「豊かになっているか」と言われると、少し考えてしまう)

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みんなのコメント

15件
  • 消えたカテゴリー
    「国内専売」
  • ディーラーの都合で、グリルだけちょこっと変えて同じ車を別名で売るようなアホな国は他にはないでしょう。
    売りつけることが優先で、性能を重視してこなかったことがよくわかる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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