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FFでも退屈じゃない 最新F40 BMW 118i Mスポーツに試乗 モダンなハッチバック

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FFでも退屈じゃない 最新F40 BMW 118i Mスポーツに試乗 モダンなハッチバック

変化するBMWのドライバーを支える

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)

【画像】1シリーズとライバルのAクラス 全102枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


英国にも上陸した3世代目となる新しいBMW 1シリーズ。このF40型になって多くの意見が上がるようになったが、筆者としては今の時代にあるべき姿だと思っている。

1980年代のサルーンのイメージが強い層にとって、本物のBMWではない感じる人もいるだろう。だが現代の1シリーズのターゲットとする層が描くイメージは、大きく異なっている。E34型の5シリーズを愛車としてきたドライバーには、少し理解しにくいモデルかもしれない。

2019年のいま、BMWを購入しようという30歳前後のドライバーにとって、BMWといえばX1やX3、2シリーズ・アクティブツアラーが代表されるモデル。実際、街なかでこれらを目にする機会も多い。BMWの変化するドライバー層を支えることが、1シリーズの大切な役目なのだ。

新しい1シリーズの後ろ姿は、3シリーズのように、どこかレクサスっぽい。フロントやサイドは、エッジの立った織り目が多用されたデザインだだが、強い個性までは得られていないと思う。

一方で新しい1シリーズのスタイリングには、かつてのBMWのイメージを継承している部分もある。充分に考えられ、不格好とは感じられないスタイリングだと思う。読者はいかがだろうか。

エンジンは、英国ではディーゼル版が115psの116dから始まり、190psの120d xドライブが最もパワフルなものとなる。ガソリン版は今回試乗する140psの118iから始まり、M135i xドライブが頂点を飾る。

グレードはSEとスポーツ、Mスポーツとおなじみのラインナップ。オプション・パッケージも従来どおり用意される

広く実用性の上がった車内

SEとスポーツに装備されるサスペンションは通常のコイルスプリング。Mスポーツには車高が低くなり、引き締められたスプリングが付く。アダプティブダンパーはオプション。ただしアダプティブダンパーを選ぶと、19インチのアルミホイールやMスポーツ・プラス・パッケージは組み合わせられない。

この試乗車には、Mスポーツ・サスペンションに19インチのアルミホイール、ランフラットではないタイヤと6速マニュアルが組み合わされていた。ATの場合、エンジンによって7速ツインクラッチか、通常の8速ATが割り振られる。

クルマの骨格となるプラットフォームは、ミニ・クラブマンやBMWのコンパクトモデルなどと共通。全長や全幅が異なり、着座位置も違うため、他のモデルとの共通性は感じにくい。しかし左右のタイヤの間隔、トレッドはミニやBMW X1と同値となる。

先代と比較して車内は広くなり、使いやすさも向上。後席シートや荷室の広さは立派なものだ。FF化に伴う恩恵だといえる。一方でインテリアの質感はさほど良くなっていない。組付けの良くないプラスティック製部品が目に付く。高価な素材を用いたソリッドで惹きつける雰囲気は、感じ取りにくい。

テクノロジー面は充実している。エントリーグレードでも8.8インチのタッチモニター式のナビを含むインフォテインメント・システムと、部分的にモニター式となるメーターが付く。1500ポンド(20万円)のオプションを選べば、より大きなインフォテインメント・モニターに全面モニターのライブコピット・プロフェッショナルと呼ばれるメーター、ハーマン・カードン製オーディオが装備される。

アップル・カープレイなどのスマートフォン接続機能は標準装備ではない。BMWコネクテッド・ドライブの1つとして付いてくる機能だ。

活発なエンジンと良く調律された操縦性

ロータリーダイヤルのiドライブ・コントローラーが残されており、インフォテインメント・システムの反応や操作性は良好。モニター式のメーターは、読みやすさよりグラフィック性が優先され、レイアウトも良いとはいえず、あまり好きにはなれなかった。

試乗車は19インチホイールにMスポーツ・サスペンションを備えていたが、先代の1シリーズよりも上質で角の取れた走り味を備えている。3気筒ガソリンエンジンは相当に静かでスムーズ。パワーの発生も即時的で回転域を問わずトルクも豊かで、活発な加速力を簡単に引き出せる。

5000rpm以上まで回したいと思えるユニットではないものの、必要ならいとわない。6速MTはロングギアに設定されているが、実環境での燃費はそれなり。いくつかの走行パターンを平均させた今回の試乗では、14.0km/L程度に留まった。高速道路を気をつけて走らせれば、もう少し伸びるだろう。

クルマの乗り心地は硬め。だがスポーティなサスペンションを装備していることを考えれば、充分に落ち着きがあり、路面からの入力を良く処理してくれている。クルマの姿勢制御も良好で、ハンドリングも正確性が高く無駄がない。だが過度に機敏だったり、ドライバーを誘ってくるタイプでもない。

BMWの技術者が、駆動方式の変化を正当化させるべくクラス最高のハンドリングを与えたのでは、と期待するなら少しがっかりするかもしれない。BMW 1シリーズのダイナミクス性能の味付けは、良く調律された実用性に振ってある。

コーナーにハイスピードで突っ込むというより、スマートに漸進的にクルマは向きを変えるタイプ。過去のモデルを振り返って、プレミアム・ハッチバックを本当の「ドライビングファン」に仕立てることは、間違いだと考えたのかもしれない。

ドライバーが退屈に感じることはない

ステアリングホイールには充分なフィードバックがあり、フロントタイヤの状況を掴み取ることができる。だが高いグリップレベルと精度に優れたハンドリング、ダンパーの設定などを組み合わせ、高速での移動を安楽に行えるように仕立ててある。1シリーズのドライバーが求めるものなのだろう。

新しい1シリーズは、ドライバーが得られる満足度で測れば、多くのライバルとなるファミリー・ハッチバックを凌駕している。優れたFFの現代的なハッチバックだ。先代が採用していたFRというレイアウトは、多くの恩恵を与えることはなかったといえる。

この1シリーズは、世間一般の「標準的なドライバー」に合わせるために、選べる手段の中から取捨選択したクルマ。BMWは数年間の調査を経て、このクラスの多くのドライバーが、駆動方式を気にしていないことに気付いたのだ。

コンパクト・ハッチバックのルールブックに準じた、メルセデス・ベンツAのクラスを追いかける新しいBMW 1シリーズが成功を収める可能性は高い。古いしがらみから脱し、ダイナミクス性能で頂点を取ることはなくとも、ドライバーが退屈に感じることはないだろう。

BMW 118i Mスポーツのスペック

価格:2万7230ポンド(362万円)
全長:4319mm
全幅:1799mm
全高:1434mm
最高速度:212km/h
0-100km/h加速:8.5秒
燃費:16.6-16.1km/L(WLTP複合)
CO2排出量:-
乾燥重量:1290kg
パワートレイン:直列3気筒1499ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:140ps/4600-6500rpm
最大トルク:22.3kg-m/1480-4200rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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