ダウンサイジング化の波が押し寄せるなかで急速に浸透してきた3気筒エンジン。わずか2年前の記事でも「次期型フィットやヴィッツ(当時)などにも3気筒エンジンの搭載がウワサされている」などといった書かれ方をしていたことからも、その進歩のスピードがいかに早いかが伺える。
参考:【新時代の主役!? やっぱり安っぽい!?!?】今どき3気筒エンジンが急増する理由
ボルボXC90PHEV試乗 世界一過酷な日本の雪道に北欧生まれの最強ボルボが挑む!!
今回ここでは、国内メーカー・輸入車メーカーが苦心を重ね開発した楽しい3気筒エンジンとそのクルマたちを、モーターフォトジャーナリスト 諸星陽一氏がご紹介!
【画像ギャラリー】2年前から見ても隔世の感あり!! 3気筒エンジン搭載モデル26台をギャラリーでチェック!
※本稿は2020年12月のものです
文/諸星陽一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年1月26日号
■もはやコンパクトクラスの常識? 各社入魂の3気筒エンジンを一挙紹介!!!
世界中のクルマがダウンサイジングの波に飲み込まれるなか、4気筒から3気筒へのシフトが進行。
最初は迷いのあった3気筒エンジンだが、現在はビックリするほどの進化を遂げ、コンパクトカーの主流ユニットとして完成域へと達している。
●トヨタ M15A型エンジン(排気量:1490cc)
トヨタが進めるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)と組み合わせるために開発されたもので、ダイナミックフォースエンジンと呼ばれるシリーズの第4弾。
従来、トヨタのエンジン型式は「数字-アルファベット」の順で始まるが、アルファベットから始まるものがダイナミックフォースエンジンだ。
ピュアエンジン車用ユニットがM15A-FKS、ハイブリッド用ユニットがM15A-FXEという型式。
ヤリスクロスも同じエンジンを主力とするが、走りをキビキビさせるため最終減速比が低い
M15Aは標準タイプのヤリスのメインユニット。燃費向上のため高い最終減速比が組み合わされる
GRヤリスもRSグレードはこのエンジン
●トヨタ G16E-GTS型エンジン(排気量:1618cc)
GRヤリスのRZ、RC用に開発された専用エンジン。車種バリエーションが増えた近代においての専用エンジンは、レクサスLFA用LR型以来である。
最高出力は272ps、最大トルクは37.7kgmで、1Lあたりで168ps/23.5kgmという驚異的数値だ。
4気筒より軽く、排気干渉が少なくターボとの相性がいいために圧縮比も高めに設定可能となった。文句なしに世界最高レベルのスポーツエンジンとして完成されている。
従来の1.6L、従来の3気筒エンジンという概念をすっかり消されてしまうパワフルさと完成度を誇るG16E-GTSを積んだGRヤリス
ピストンの重量合わせなど従来のトヨタ車にはない規準で組まれるG16E-GTS
●ダイハツ/トヨタ 1KR型エンジン(排気量:996cc)
ダイハツ主導で開発され、ダイハツで生産されるが、トヨタの可変バルブ機構VVT-iが採用されるなど、両社の技術を融合したユニット。
自然吸気タイプは1KR-FEで現行ヤリスなどに搭載、ターボチャージドは1KR-VETで、ロッキー&ライズ、トールなどに搭載される。
5ナンバー、SUV、1Lと魅力の条件が揃ったライズ
ヤリスも最もベーシックなモデルは1Lエンジンとなる
最近人気のプチバン。ルーミーも1KR搭載車の1台だ
●スズキ K10C型エンジン(排気量:996cc)
「Kシリーズ」は軽自動車用660ccから1.5Lまで数種を用意。1LのK10までが3気筒だ。K10は1997年のK10Aからスタートし、現在は3世代目のK10C。自然吸気仕様とターボ仕様が存在している。
クロスビーはISGとの組み合わせによってマイルドハイブリッドとして成立させている。→
→一方こちらはインド生産となるバレーノで1Lは3気筒エンジンを搭載。1.2Lは同系列4気筒となる
●VW CHZ型エンジン(排気量:999cc)
アウトバーンが存在するドイツでは小排気量車でも高出力が求められる。フォルクスワーゲン&アウディが使用するCHZ型は、直噴方式のTSIにターボを組み合わせた仕様で、95ps/17.9kgm(搭載モデルにより若干の差がある)と、高性能を実現している。
ポロは標準タイプが1L 3気筒エンジンを搭載する
ポロをベースとしてSUV化したモデルがTクロス
フォルクスワーゲン最小モデルのup!も直3エンジンを搭載
●スマート/ルノー 281M09型/H4B型エンジン(排気量:897cc)
スマートとトゥインゴに搭載されるユニット。スマートは初代から、トゥインゴは現行から直3となる。ロングストロークタイプが増えるなか、内径×行程が72.2×73.1mmとかなりスクエアに近いディメンションが特徴。
スマートはダイムラーの子会社。設立時はダイムラー・ベンツとスウォッチの協業でスタートしている。現在のモデルはリアエンジン・リアドライブのRR方式
トゥインゴとしては3代目。初代と2代目は直4を搭載するFF車であったが、このモデルからスマート・フォーフォーと兄弟車となり、RR方式に変わった
●BMW/BMW MINI B38A15A型エンジン(排気量:1498cc)
バイエルンエンジン工場の略称であるBMWほど、エンジンにこだわりを持つ自動車メーカーも少ないだろう。BMWの3気筒はB38型と呼ばれるシリーズ。BMWは単室排気量500ccにこだわりを持ち、2Lは4気筒、3Lは6気筒というエンジン設計をしている。そうしたなかで、設計された1.5Lエンジンは当然3気筒である。
基本は内径×行程が82.0×94.6mmのロングストロークタイプの1.5Lで、それぞれを78.0×83.6mmとした1.2Lも存在する。多くのエンジンがFF用、FR用など駆動方式に合わせた設計となることが多いなか、B38はFF、FR、そしてハイブリッドと多用途性を持つのも大きな特徴だ。
2シリーズアクティブツアラーはベーシックモデルが1.5Lの直列3気筒を搭載
ターボ過給による効果もあり、1480回転で最大トルクの22.4kgmを発生する1.5L 3気筒は、SUVのX2とのマッチングもいい
ミニブランド買収で小型化、FFのノウハウを得たBMW
こちらはX1。ミニで得たノウハウが生かされたSUVだ
●プジョー/シトロエン/DS HN01型エンジン(排気量:1199cc)
グループPSAで使われている1.2Lユニット。パワースペックは複数存在する。今後はオペル、ヴォクスホール、そしてFCAの車種にも拡大される可能性を秘めている。
プジョー208は110ps仕様
DS3クロスバックに搭載されるユニットは130ps
110ps仕様のシトロエンC3
●ボルボ B3154型エンジン(排気量:1476cc)
XC40のPHEV用のエンジンがB3154。内径×行程は82.0×93.2mmで、これは4気筒2LのB420と同じ。つまりB420から1気筒減らして1.5Lとしたモジュラーエンジンだ。ターボ仕様となる。
モーターは80psのXC40PHEV
●三菱 3A92型エンジン(排気量:1192cc)
ダイムラーとの協業で生まれたユニット。75mmの内径に3種の行程、3気筒と4気筒で計6種の排気量を可能にしている。3A92は90mmの行程の3気筒版で、排気量が1.2Lとなる。
ミラージュは3気筒エンジンの軽さとコンパクトさを生かしたパッケージングで、車重は900kgに抑えられた
■今後は2気筒エンジンも注目!
ダウンサイジング化で3気筒が増えてきたクルマのエンジンだが、次のひとつの波となりそうなのが、EVのレンジエクステンダーや、シリーズハイブリッド用のエンジンとしての2気筒エンジンだ。
3気筒よりもコンパクトで、軽量化が期待できる2気筒エンジンだが、振動などの面での不利さもある。
すでに2気筒エンジンを採用しているFCAや、ホンダやスズキ、BMWといったバイクでの経験が豊富なメーカーの動向からも目が離せない。
【番外コラム】こいつらだって負けてない!!! 楽しい3気筒の軽エンジン
日本独自規格の軽自動車は、排気量が660ccまでとなる。
かつては4気筒や2気筒(550cc時代)もあったが、現在は3気筒のみ。クルマに使用する場合、660ccという排気量ならば、3気筒とのマッチングがいいという結論だ。
この規制は登録車の3気筒エンジン発達にも大きく寄与した。なにしろ660ccで100Nmを超える性能は、超の付くほど高性能なのだ。
しかもこのトルクをレギュラーガソリンで実現している。約10倍の排気量を持つ6.5Lのランボルギーニだって、700Nm程度なのだから。
ダイハツは3気筒のKF型にターボタイプを設定。最大トルクは10.2kgm。タフトなどに搭載
S660に搭載されるホンダのS07A型3気筒ターボの最大トルクは10.6kgm。NA仕様も6.6kgmを発生する
日産と三菱の軽自動車用BR06DETは10.2kgmを発生。NAでも6.1kgmを発生する高性能さ。デイズなどに搭載
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みんなのコメント
30年ほど前に軽自動車の規格が変わり660ccになったときに久々にダイハツの三気筒に衝撃を受けた。
三気筒なのに振動がかなり抑え込まれていた。
それからは代を追う毎に静かになっていった。
これはダイハツに限らず他のメーカーもである。
もはや四気筒にこだわる必要がないレベルにまで進化している。
この先どこまで進化していくのか楽しみでもある。
3気筒支持者は頭おかしい奴しか居ないようだ。