私が自動車ライターとなってから、そろそろ5年ほどになるでしょうか。ありがたい限りですね。自分ではクルマが好きな方だと思ってきましたから、関連するイベントや、カーライフに関することなど、クルマに近いところで記事を書かせていただける。これは幸せなことだと思っております。ありがとうございます。読者の皆様のおかげですね。
ライターとしては後発の人間故、執筆した記事を公開する場としては、雑誌よりはWEBが多いでしょうか。(出版社の編集部の人が中心に書いていることも多い雑誌は、やはりキャリアの長い方が外部でも多いかもしれませんね)かつて自分自身は、毎月毎号小遣いを握りしめて書店で雑誌を購入していました。ですから、最近、どんどん雑誌が少なくなってWEBに集約されていくこの流れ、自然なことなのかもしれませんが、ちょっと寂しい気もいたします。今は自分もライターですから、そんなところで書かせていただける機会があれば何よりですが、そうでなくても、自動車雑誌、姿を消してほしくないなと思うものです。
クルマがあるなら旅をしてみませんか?回鍋肉が食べたくて千葉の喜楽飯店へ
今回編集部から「クルマがあるから行ける場所」について何か書いてほしい、という依頼が来ました。なにかこれ、冒頭でお紹介した雑誌の話、WEBがどんなに主流になっても雑誌の魅力はカバーしきれないのではないか、という話に似ているような気がするのです。
インターネットの普及で、ほとんどの課題は解決できるかのようにさえ思えます。GoogleやYahoo!の検索窓に調べたい事柄を打ち込むと、それに関する回答や、関連するサイトがたくさん出てきます。そういったものそれぞれの精度は、得てしてばらつきもありますが、いろいろ見て総合的に判断すると、案外解決に至ることは少なくありません。本当に便利になったと思います。
けれどもこれ、調べたいものがわかっている場合はよいのですが、名前をど忘れしてしまった場合やうろ覚えの場合、また、それに類する要素にどのようなものがあるのかといったことに対する興味がわいたとき、すなわち検索対象が「もやっ」としている場合、なかなか検索というのは手を焼くとは思いませんか?もちろん、そういった中で検索して一定の回答を得ることのできる能力、いわば「検索力」のようなものも問われるわけで、たくましく検索結果を導き出し突き進む「検索猛者」のような人もいますが。雑誌など書籍の場合、読みたい特集以外にもぺらぺらとしていると「おお、これこれ!」というようなことに遭遇したりする。WEBとは違うところだと思うのです。
クルマで出かけるというのも、どこそこに行く、という明確な目的地への移動はほぼ問題ないのですが、そうでない場合にこそ醍醐味があって、こういうスポットとの出会いというのは、検索したいものが明確ではないときの検索とよく似ているような気がします。
その地域の歴史に裏付けられた、伝統を今に伝える建造物、その時間に通ったからこそ見える景色。逆に、例えば桜で有名なエリアながら時期をずらしたからこそ発見できた、など「行ってみたからこそわかること」との出会いに会えることがクルマ旅の魅力ではないかと思うのです。
とはいえ、なかなか遠くなじみのない場所、ふらりと立ち寄るのは、それなりに勇気がいるものです。けれどもそんなのも、一度ではなく二度三度と通ることで「なんかいつも気になるんだよなあ」と思うことが出てくるでしょう。そういうところから順番にちょっと立ち寄ってみるのです。そうすると思いがけず、「ああ、ここかあ!」「前に見たことあって気になっていたんだよな!」「(今回の目的地もさることながら)ここも来てみたかったところ!」だったりするものです。
クルマがあるからこそ行ける場所とは?これにしいて答えるとすれば「わかりません」ということになるでしょう。けれども、むしろ私がクルマ旅をするときに楽しみにしているのは「そう思える場所に遭遇すること」なのかもしれません。結構あるものです、面白いスポット。ちょっとしたことも含めるとかなりたくさん。しかも、それを地元の人はごく普通のことだと思っていたりして、「そんなのとるに足らないことでしょ」と、紹介されないことも少なくないのです。下手すると一生気づかずに済ませてしまうことも少なくないでしょう。
これはクルマ旅に限らないのかもしれませんが、あまり「目的」をがちがちの目的にしないほうがいい。そんな風に最近感じるものです。この世は行間の旨味に満ち溢れている。そして、期待値を超えるものに遭遇することがある。これには「目的値」を設定した行動では絶対に至ることはない、そんな風に思うわけです。クルマは行動力を具現化するソリューションであり、その経験値があるかないかが、これからの個人の強みになり、個性の表現を可能にすることのように思うのであります。
これから秋、クルマで出かける口実が自然の中に転がっている季節。楽しみで仕方ありません。
[ライター・画像/中込健太郎]
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