次期BMW M3とM4の発表は2020年9月
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ドイツでも新型コロナウイルスの影響は小さくなかったが、BMW Mディビジョンの歩みを鈍らせることはなかった。次期M3とM4を2020年9月に発表し、年内中に生産と販売を開始するという計画に変更はないようだ。
発表まで数ヶ月。開発を終了させ、BMWの取締役会で量産の承認を得なければならない。そんな忙しいさなか、AUTOCAR英国編集部は、次期BMW M3とM4のプロトタイプへ試乗する機会を得た。
分厚いカモフラージュをまといつつ、かなりの距離を走り込んでいる次期Mモデルのテスト車両。ドイツ東部、ザクセンリンク・サーキットにたどり着くまでに、厳しい試験が繰り返されてきたのだろう。
自動車として、最新の技術水準を獲得していることは間違いない。ボディには彫りの深いキドニーグリルと、膨らみを増したフェンダーパネル。広げられたトレッドいっぱいに、シリアスなデザインのホイールとタイヤが収まっている。
掲載が許された写真からは、その姿を想像してもらうしかないが。
ザクセンリンクのピットレーンに佇む、次期M3とM4。低く身構えたようなフォルムで、少し特別なクルマだということがひと目でわかる。ボディサイズは5代目のF80型M3や、初代F82型M4と比べて、かなり大きくなっている。
次期モデルはセダンとクーペとで、カタチもだいぶ違う。車高の低いM4に対し、M3の方は全体的に高さがある。
標準で480ps、コンペで510psを獲得
ボディスタイルはこのほかに、2021年半ばまでにM4のカブリオレと、初めてとなるM4グランクーペも登場予定だ。また最近のBMW Mモデルの戦略に習って、M3とM4の両方へコンペティション仕様の追加も計画されている。
約束された性能は、四輪駆動のM340i xドライブやM440i xドライブを凌ぐ。3シリーズと4シリーズの頂点を飾るために。
M3もM4も、ボンネットに収まるのはMディビジョンが開発した新しいS58ユニット。ツインターボで加給される3.0L直列6気筒エンジンで、長く用いられてきたS55ユニットの後継型だ。
標準モデルの最高出力は480ps、最大トルクは61.1kg-m。現行型と比べると、29psと5.1kg-mの増強となる。
英国へ導入されるクルマの場合、標準の後輪駆動のM3とM4には6速MTか、トルクコンバーター式の8速ATが用意される。どちらにも、電子制御されるMスポーツ・デフが組み合わされる。
M3とM4のコンペティション仕様では、ソフトウエアに変更を加えることで30psを上乗せ。最大トルクは変わらないが、510psを獲得するという。この最高出力は、ライバルモデルに並ぶ数字となる。
ただし、標準のM3やM4とは異なり、コンペティション仕様で選べるトランスミッションは、8速ATのみ。伝統を破るように、四輪駆動のxドライブもオプションで選択できるようになるそうだ。M3やM4が後輪駆動ではなく、四輪駆動を獲得するのは次世代が初となる。
鋭いレスポンスとリニアなパワーデリバリー
開発途中のBMW M3のプロトタイプに乗り込み、エンジンをスタート。ドライブモードをM1にする。マルチファンクション・ステアリングホイールには、プリセットを個別に登録できるボタンが2つ付いている。
最新のツインターボ直列6気筒エンジンは、従来のユニットより、刺激的なエグゾーストノートを放つ。ザラついた感じは抑えられ、より深みのある音だ。
1速に入れ、ピットガレージを出発。ザクセンリンクのコースへ出る。
S58ユニットは従来のS55ユニットより、明らかにシャープだ。回転数が上がるに連れ、メカニカルノイズが高まり、排気音のボリュームが大きくなる。それだけでなく、低回転域でもかなりのパンチ力を秘めている。
先代のM3に搭載されていたエンジンも、素晴らしい性能を備えていた。S58型ではトルクバンドが広がるとともに、高回転域でのパワーの上昇感も向上。鋭いレスポンスと、リニアなパワーデリバリーを実現している。
アクセル操作に対するレスポンスも、磨かれた印象。過激さを感じる性格ではないものの、右足の操作に対してより正確に、力強く応えてくれる。
6速MTの感触には変化はないようだ。ストロークは長めで、タッチはややゴムっぽい。
BMW M信者はこれで満足かもしれないが、この6速MTは、高精度のエンジンや加速感とのマッチングが良いとはいえないと思う。Mのエンブレムを背負うモデルとして、期待通りではない。それ以外のドライブトレインは素晴らしいだけに、惜しい。
この続きは後編にて。
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