並外れたディテール
2014年のクリスマス当日、15歳の筆者は幸運にも、サンタクロースからレゴ・テクニックのオフローダーをプレゼントされた。
【画像】細部にこだわる大人向けのブロック玩具【レゴ・テクニック・マクラーレンP1を写真で見る】 全5枚
クリスマスから新年にかけてずっと、ダイニングテーブルでブロックの袋から本物のクルマのような模型を組み立てていた。この数日間は熱中しすぎて、まるで溶け合って1日になってしまったかのように感じられた。
あれから10年が経ち、筆者は今でもレゴに癒やされている。クルマをテーマにしたレゴのセットは、クルマに関する執筆活動という筆者のキャリアの基礎を築いたとも言えるだろう。
デンマークの大手玩具メーカーであるレゴは近年、「レゴ・テクニック・アルティメット・カー・コンセプト」シリーズの一環として超絶技巧のラインナップをリリースし、数々の名車を蘇らせている。
これまでに、ポルシェ911 GT3、ブガッティ・シロン、ランボルギーニ・シアン、フェラーリSP3デイトナが発売されている。フェラーリは、今も筆者の実家のダイニングテーブルに置かれたまま、完成を待っている。ごめんね、お母さん。
これらのセットに盛り込まれたディテールのレベルは並外れており、組み立て難易度の高さから箱の側面には「対象年齢18歳以上」の表示が付いているほどだ。
では、レゴは一体どのようにして、スーパーカーを本格的なテクニックセットに変身させているのだろうか?
最も開発に苦労した部品は…
それを知るために、レゴ・テクニックのデザイナーであるカスパー・レネ・ハンセン氏に話を聞いた。同氏は、レゴの最新アルティメット・カー・コンセプトモデル、1/8スケールの「レゴ・テクニック・マクラーレンP1」の生みの親だ。
「マクラーレンとのコラボレーションは2年ほど前に始まった」とハンセン氏は説明する。「P1の採用が決まった後、2022年12月に開発を開始し、その約1年後に完成した」
「マクラーレンから提供されたCAD(コンピューター支援設計)ファイルやスケッチ、技術情報を活用して、多くの調査研究を行うことができた。クルマのプロポーションを把握するために1/8スケールのモデルを作成し、その後、試作品の製作に取り掛かった。試作品は20個近く製作した」
ハンセン氏は、レゴP1のディテールのレベルは「他に類を見ない」と主張している。実車から引き継がれた機能の数々を考えると、筆者も同感だ。
レゴP1には、実車のP1と同じ7速トランスミッション(ステアリングホイールの後ろにある小さなパドルでギアチェンジが可能)、ホイール、ディヘドラルドア、可変リアウィング、V8エンジンが搭載されている。
さらに、ドライブモードの実装にも成功した。コックピット内の小さなスイッチを前方に倒すと、トランスミッションとV8エンジンが「始動」し、実車のハイブリッドモードを模した動きをする。
スイッチを後方に倒すと、車体下部の小さな電気モーターが働くEモードに切り替わる。
レゴP1は、既存のレゴ・テクニック部品3800個を駆使して作られており、専用に新しく作られた部品はわずか8個である。中には設計が非常に難しい部品もあり、その1つがホイールだという。
「可能な限り完璧に近づける必要があったため、開発には非常に苦労した。モデルの重量に耐えられること、そしてスポークが折れないよう十分に頑丈であることを確認する必要があった」とハンセン氏は語る。
マクラーレンとの蜜月
P1はレゴにとって初めてのマクラーレンモデルではない。2015年以来、レゴは同社と何度か提携し、セナGTRや2022年型F1マシンのMCL36を含む多数のテクニックモデルを開発している。
レゴがマクラーレンに新製品の話を持ちかけた際、P1がふさわしいと考えたのは、マクラーレンのデザイン責任者であるトビアス・シュールマン氏だ。同氏は、「レゴ社と初めてこのアイデアについて話し合ったとき、これは当社の象徴であるアルティメット・シリーズでなければならないと確信した」と説明する。
「P1は2013年のジュネーブ・モーターショーで発表された当時、ハイブリッド技術を搭載する非常に特別なクルマだった。10年後にレゴモデルとして復活させるには、ふさわしいタイミングのように思えた」
ソーラスGTを手掛けたことでも知られるシュールマン氏は、両社の「強力なチームワーク」により、P1のユニークでコンパクトなサイズを忠実に再現したものになったと語っている。
「限界に挑み、最高の成果を引き出そうとするという点で、レゴと当社のやり方は非常に似ている」
「わたしが最も感銘を受けたのは、レゴがP1の形状だけでなく、可動式ピストン、トランスミッション、ドライブモードなど、技術的な側面も再現している点だ。このプロジェクトに参加できたことは、非常に素晴らしい経験だ」
シュールマン氏は、マクラーレンとレゴのコラボレーションが今後も続くと確信している。そして、「世界一の仕事をしている」と豪語するハンセン氏が関わっているのであれば、ブロックでできたマクラーレンがさらにたくさん登場することだろう。
これはレゴ愛好家にとっては朗報だが、筆者の銀行口座にとっては悪いニュースだ。
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