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松下信治SFシート喪失を改めて考える。矛先を向けるべきなのは彼を放出したチームなのか?|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

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松下信治SFシート喪失を改めて考える。矛先を向けるべきなのは彼を放出したチームなのか?|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

松下信治がスーパーフォーミュラ第3戦をもってTGM Grand Prixのシートを失ったというニュースは、ここ最近のソーシャルメディアの動きから察するに、レースファンの間である種の混乱を引き起こしたと言えるでしょう。その一方で、松下の異例とも言えるキャリアの軌跡を追ってきた人たちにとっては、さほど驚くニュースではなかったのではないでしょうか。

要するに、スーパーフォーミュラにおける今季の松下は、首の皮一枚繋がった状態で奇跡的に生き長らえていたに過ぎないのです。

■松下信治はなぜシーズン途中でスーパーフォーミュラのシートを失ったのか? 本人も覚悟していた“その日”が来るまでのコト

2020年、資金不足によってF2最後のシーズンを途中で終えることになった松下は、国内レースに復帰してスーパーフォーミュラではB-Max Racingに加入することになりましたが、チームは翌年にはモトパークとの提携を解消して1台体制に縮小するなど、松下にとってはタイミング的に不運だったとも言えます。ただその中でも2022年には雨の鈴鹿戦で優勝を飾るなど、注目を集めるような結果も残しはしましたが、「スーパーフォーミュラで長期的に活躍する資格のあるドライバー」であるとホンダを納得させることはできなかったようです(その判断の善し悪しは別として)。

2023年もB-Maxに残留となった松下ですが、この年のB-Maxのシートは元々笹原右京にオファーが行っていたと言われており、笹原がそれを受けずにトヨタ陣営に移籍したことで、松下は救われた形となりました。しかし結局、2024年も“ノブ”の居場所は用意されていませんでした。そして開幕直前となり、ドライバー探しに難航していた独立系チームのTGMに拾われる形で、既にチームが活用予算を確保できていた序盤3戦だけ出走することができたのです。

言うまでもなく、松下がスーパーフォーミュラのグリッドから姿を消したことは、非常に残念なことです。その速さ、これまでの実績、そしてどこか異端で周囲とは一線を画するような雰囲気が、多くのファンを作ったことは間違いありません。また、GP2/F2で長らく活躍してF1のテスト走行も行なったことで、海外でも一定の知名度がある稀有な日本人ドライバーのひとりでもありました。

つまり松下はスーパーフォーミュラが欲しがるべきドライバーだと言えます。ただ、その松下さえ、ホンダの明確な後ろ盾なくしては数レースでシートを失うことになってしまうという事実は、選手権全体が憂慮すべき兆候だと言えます。

ホンダやトヨタに選ばれたドライバーはメーカーからのサポートを受けてスーパーフォーミュラに参戦することができますが、TGMはそういったメーカーの後ろ盾を持たない独立系チームであり、基本的にはドライバーがスポンサーなどを通して参戦資金を持ち込むことで運営されています。

確かにTGMがドライバーに求める金額は高額な部類に入ると言われていますが、だからといって今回の件についてTGMに批判されるいわれはないのではないでしょうか。彼らは潤沢な資金のあるドライバーを安易に起用するという道を選ばずに、序盤3戦分だけとは言えど才能ある松下を走らせて上位を目指すための資金を捻出した訳で、これは賞賛に値すると言えます。

しかもTGMがやっていることは何も珍しいことではなく、F2のような海外のシングルシーターカテゴリー、そしてインディカーの半数以上のチームでは、ドライバー選考においてはまず予算の問題を考慮することから始まります。スーパーフォーミュラのほとんどのチームは、ホンダとトヨタの潤沢な資金援助によって、そういった問題からずっと守られてきたのです。

その結果、スーパーフォーミュラのグリッドのほとんどがメーカーと繋がりのある日本人ドライバーで構成されるようになっています。一方でTGMは外国人ドライバーと交渉するなど、当初から異なるアプローチをしており、それがグリッドに毛色の異なるドライバーを並べることに貢献していると言えます。こういったやり方に追随するチームが増えれば、スーパーフォーミュラはもっと面白いものになるでしょう。

結局のところ、ホンダとトヨタはこれまで外国人ドライバーの獲得に積極的な姿勢を見せて来ませんでした。JRP(スーパーフォーミュラのプロモーター)の近藤真彦会長も以前、外国人ドライバーを迎え入れるためにホンダやトヨタにも要請をする必要があると話していましたが、まさにそういった方針転換がない限りは、TGMが外部からやってくるドライバーのほぼ唯一の受け皿である現状は変わりないでしょう。

ホンダのエンジンを搭載しながらも独立系チームとして参戦してきたTGMは、先日の富士テストではメーカー側の提案から大津弘樹と大草りきを起用しました(第4戦富士では大津を起用)。しかしながら、単にホンダ系のファクトリードライバーふたりを起用するTGMに魅力があるかと言われれば、おそらくそうではないでしょう。スーパーフォーミュラのファンは、他と全く異なるビジネスモデルで運営されるチームが存在することを喜ぶべきだと思います。例え、資金が底をつくことによるシーズン途中のドライバー交代があったとしてもです。

最後に、松下が再びスーパーフォーミュラでレースをする機会を得られることを、祈るばかりです。しかしホンダの考えが変わらない限りは、それは難しいでしょう。ただし、彼がTGMに再び乗れるだけの資金を工面することができれば、話は別ですが……。

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みんなのコメント

2件
  • no1********
    持込スポンサーや資金に左右されるマイナースポーツはスキルだけでなくマーケティングも実力の内。レーシングスクールでもマーケティングは学習項目にある位だし…。むしろ金やそれを拵える知名度さえあれば成績良くなくてもシートは安泰だしチャンスも多くなる…。
  • yas********
    松下選手は英語堪能だし,レース実績もあるのでインディカーに行って活躍されたらいいと思う。
    ホンダはダメだろうから,シボレーかフォードエンジンのチームでレースしてほしい。
    SF、F2出身レーサーも多いし。
    スポンサーが必要とはもちろん思うが,F1を本気で目指して頑張ってきたのだから,きっと応援者は出てくる。
    早くサーキットで戦ってほしい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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