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【ジュネーブモーターショー2019】アストンマーティン、電気駆動SUV「ラゴンダ」やV6搭載「003」、「ミッドシップ・ヴァンキッシュ」など出展
雑誌に載らない話vol284
2017年度の乗用車の世界販売ナンバーワンとなったのはフォルクスワーゲン・グループだった。このフォルクスワーゲン・グループは販売台数だけではなく、30兆円を超える売上高を記録し、営業利益は過去最高の1兆8200億円に達している。
■モビリティサービス・プロバイダー
もちろんフォルクスワーゲン・グループは、2018年度はさらに売上高、営業利益を拡大させる計画だ。そのフォルクスワーゲン・グループは2017年3月に、パーソナル モビリティを再定義し、その中心には自動運転という技術があるとしている。
そしてフォルクスワーゲンという自動車の設計、開発、製造、マーケティングは、今後も重要な役割を果たすが、その一方で、スマートモビリティソリューションの新たな部門が設立されている。つまり世界最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン・グループはモビリティサービス・プロバイダーを目指すというのだ。モビリティサービス・プロバイダーとは、移動手段サービスを提供する事業であり、サービス提供企業と考えるとわかりやすい。
自動運転車は、共有モビリティビークルと位置付けられ、モビリティサービス・プロバイダーの提供車両となる。もちろん、個人で車両を購入することができるが、こうした自動運転のできるクルマであれば、共有(シェアリング)で十分とされる。
共有車両は、好きな時に呼び出して利用でき、乗り捨てることができる。子供たちを学校に送迎し、両親をオフィスまで連れて行き、共有車両は自動で駐車スペースを探し駐車する。また注文した品物を回収し、空港に到着した来客を出迎え、息子をスポーツから連れて帰ってくる。これらはすべて、ボタン操作、ボイスコントロール、スマートフォン・アプリを使用して実行される。
こうした夢のような、現在のクルマ社会を超越した時代は本当に来るのか?
実はフォルクスワーゲン・グループだけではなく、世界的なメガサプライヤーのボッシュも、次世代の主力事業はモビリティサービス・プロバイダーと位置付けている。そのためにすでに様々な準備を整えており、ライドシェアリング(相乗りサービス)などに対する布石【https://autoprove.net/supplier_news/bosch/165210/】も着々と進めている。
ボッシュだけではなく、コンチネンタル、ZFなどのメガサプライヤーも、足並みを揃え、モビリティサービス用のハードウェア、ソフトウェアの準備を着々と進めているのだ。
クルマを共有し、利用者は好きな時に好きなだけ使用するという発想は、自家用車の稼働率の低さや、都市部における自家用車の増大による交通渋滞の拡大など、従来型の自家用車の効率の低さに比べ、社会的には共有型のクルマのほうが遥かに高効率とする論理が出発点となっている。
実はこの発想は、Googleカーの登場から始まったといってもよいだろう。Googleは自動運転実験車を開発した目的は、自ら自動車メーカーになるためではなく、通勤や移動のためのシェアリングカーを目指すためであった。自動運転のシェアリングカーであれば、運転免許証を持たない人や高齢者など、交通弱者も利用でき、社会的に存在意義のあるクルマと考えたのだ。
■シェアリングというインパクト
自動運転のシェアリングカーという着想は、既存の自動車メーカーやメガサプライヤーに大きな衝撃を与えた。冒頭に取り上げたフォルクスワーゲン・グループやボッシュだけではなく、日本の自動車メーカーもモビリティサービス・プロバイダーの可能性を探りつつある。
日本の自動車メーカーの動向をピックアップしてみると、以下のようになる。
【日産】
・2013年9月
日産自動車、超小型モビリティを活用したワンウェイ型大規模カーシェアリング「チョイモビ ヨコハマ」を横浜市と実施
・2017年3月
日産自動車、超小型モビリティを活用したラウンドトリップ型カーシェアリング 「チョイモビ ヨコハマ」を横浜市と開始
・2017年4月
日産自動車、JTBコーポレートセールスと共同でEVを活用したカーシェアリング「ゼロエミッション・ツーリズム」を実施
・2018年2月
ルノー・日産自動車・三菱自動車、滴滴出行と中国でのカーシェアリングに関する協業覚書を締結
・2018年2月
日産自動車とDeNA、無人運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride」の実証実験を開始
【トヨタ】
・2015年9月
パーク24と東京都内で「Ha:mo」を活用したパーソナルモビリティ・シェアリングサービスの実証実験を一挙拡大
・2016年5月
Uber社とライドシェア領域での協業を検討開始
・2016年10月
カーシェア等のモビリティサービスに向けたモビリティサービス・プラットフォームの構築を推進
・2016年10月
カーシェア等のモビリティサービスに向けたモビリティサービス・プラットフォームの構築を推進-米国カーシェア事業者「Getaround」社との協業を開始
・2017年8月
タイ・トヨタ、チュラロンコン大学と協業し、Ha:moカーシェアリングサービスをバンコクにて導入
・2017年8月
カーシェア事業用アプリを開発し、米国ハワイ州で実証を開始
・2018年1月
モビリティサービス専用EV「e-Palette Concept」をCESで発表
【ホンダ】
・2002年3月
アメリカン・ホンダモーター、シアトルに本拠地を置き、「Flexcar」カーシェアリングプログラムを行なっているMobility Inc.(以下、Flexcar)に18.4%出資
・2013年7月
超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプβ」を使った社会実験プロジェクトをさいたま市と共同で開始
・2017年1月
AI、ビッグデータ ロボティックスを活用したオープンイノベーションを加速
・2017年6月
生活の質を高める、新価値提供に向け、AI・ビッグデータ・ロボティクス技術を活用したオープンイノベーションを中国でも加速
・2017年5月
東急不動産ホールディングスとHondaが、既存の郊外型住宅団地「季美の森」で高齢化社会対応型スマートコミュニティの実証実験を2018年夏より開始
・2017年12月
中国のNeusoft傘下のReachstar社に出資し、カーシェアリング事業で提携 -電動化・カーシェアリング事業を加速
このように時間を追ってみると、日本の自動車メーカーも次世代の事業として大なり小なりモビリティサービスを意識して準備を進めていることがわかる。いうまでもなく、ここで取り上げた日本の自動車メーカーだけではなく、欧米の大手自動車メーカーの動向もほぼ共通している。
フォルクスワーゲン・グループやボッシュなどのメガサプライヤーのように明確にモビリティサービス・プロバイダーとなる、とまで宣言しているメーカーはまだ少ないが、カーシェアリング、ライドシェアリングの動きが近未来のモビリティで大きな成長を遂げると考えていることは間違いない。
■カーシェアリング、ライドシェアリング
多数の人がクルマを共有するカーシェアリング、同じ職場に通勤する人や、同じショッピングセンターに出かける人が1台のクルマに相乗りするライドシェアリングという発想は新しいものではないが、大きなブレークスルー技術になったのは間違いなくスマートフォンの登場である。
ユーザーはスマートフォンのアプリでクラウドサーバーと通信し、サーバーは各車両と常時接続による通信することで、ユーザーの希望する時に車両を提供できるということが可能になったのだ。
その代表でありパイオニアはアメリカに本拠を置くUber(ウーバー)、中国に本拠を置く滴滴出行(ディディチューシン)などのITライドシェア企業だ。Uberは、アメリカの企業のウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリで、現在は世界70カ国・地域の450都市以上で展開している。
滴滴出行は中国の400都市の5億人以上のユーザーへ交通サービスを提供しており、「タクシー配車サービス」、「私用車配車サービス」、「ヒッチ(ソーシャルライドシェア)」、「ディディ・ショーファー」、「ディディ・バス」、「ディディ・テストドライブ」、「ディディ・カーレンタル」、「ディディ・エンタープライズソリューションズ」、「ディディ・ミニバス」、「ディディ・ルクゼ」、自転車シェアリングなど、現在考えられるすべてのサービスをスマートフォン・アプリを通じて提供し、事業としても成長を続けている。
日本のニュースで話題になっている、中国人の「白タク」営業と呼ばれているのは、もはや中国では常識のサービスのひとつだ。Uberにしろ、滴滴出行にしろ、時間のある自家用車オーナーが登録し、利用希望者がアプリを通じて至近の距離にいる登録済みの自家用車オーナーを検索し、目的地や料金で合意することでタクシー、ハイヤーのように使用できるのだ。アメリカでも中国でも既存のタクシーと併存しているが、企業が運営するタクシーより、アプリに登録している自家用車オーナーのほうが遥かに多いので、利用者にとってはUberや滴滴出行の方が利便性が高いのだ。
例えば上海で夜が遅くなった時に、配車アプリでタクシーを探してもタクシーを捕まえるのに2時間以上もかかることは珍しくないが、滴滴出行のアプリを使えばより早く、うまくすれば数分でアプリ登録車を捕まえて利用することができるのだ。Uberも滴滴出行も利用者が運転手を評価すると同時に、運転手も利用客を評価する相互評価システムを採用することでサービスの質や信頼性を確保している。自家用車のドライバーにとっては、Uberや滴滴に登録することで収入を得ることができる仕組みだ。
このようにUber、滴滴出行は登録された「白タク」を利用するという業務形態であることは否定できず、そのために既存のタクシー業界や法規制との軋轢はあり、実際に日本では国交省により禁止されているが、本来は遊休状態の自家用車をシェアリングすることで、クルマの利用効率を高めることに意義があり、スマートフォン・アプリ、クラウドサーバーによる広範囲な通信ネットワークによる展開に対し、地域ごとのタクシーは太刀打ちできないのが実情だ。
こうしたUberや滴滴出行のサービスが充実すれば、もはや利便性のために個人個人が自家用車を購入する必然性も俯瞰的にいえば低くなってくる。
またライドシェアリング(相乗り)は、同じ方向に通勤する人々が1台の車に相乗りするというシステムだが、アプリを使用することで瞬時に最適なクルマを選び出すことができる。こうした現在のシェアリングサービスをしているのは、中国ではアリババ、テンセント、百度という3巨大IT企業の通信・クラウド技術であり、Uberは独自のシステムを構築している。
しかし、近未来に目を向けると、個人ドライバーの自家用車は利用する必要がなくなり、ライドシェア、カーシェア専用の自動運転車両が登場すれば、こうしたカーシェアはまったく新たなフェーズを迎えることになる。その時には、自動車メーカーの事業の大きな柱になるのは自動運転車を製造・販売ではなく、シェアリング・サービスそのもということになるのだろう。
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