RV車に4G63ターボをスワップしたハイパーワゴン「RVR」&「シャリオ」
三菱RVR(車名ロゴは頭文字はRが反転)は、1991年のRVブームの最中に颯爽と登場したモデル。それまでのRVと言えば三菱パジェロやトヨタ・ランドクルーザー、同ハイラックス、日産テラノが売れ筋だったのだが、三菱はなんと全長4290mm×全幅1695mm×全高1625mmという、コンパクトなRV車を投入したのだ。さらに運転席側にはヒンジドアを、助手席側には通常のヒンジドアに加えて後席用のスライドドアを採用。発売当初は4G63型2.0Lの自然吸気エンジンを搭載した(140ps/17.5kg-m)モデルで、噂では元祖ミニバンのひとつと言われる2代目三菱シャリオの先行投入車両として発売され大ヒットとなる。
GT-Rを超える可能性もあった「未完の大器」! 「三菱GTO」が名車になれなかったワケ
開発コンセプトを当時のリリースから引用すると、「週休2日制の定着や長期休暇の普及により余暇時間の拡大などに伴い、余暇を活用して自分の時間をより自由に、より豊かに楽しみたいと考える人々が増え、RVタイプのクルマの需要が着実に増していった。あるときはセダンとしてのタウンユースできびきびと走り、あるときはグランドツーリングカーとして余裕をもって走り、そしてあるときにはRVとして人や荷物をゆったりたっぷり載せて走れる多面的機能と性能を持った、おしゃれでコンパクトなユーティリティカー」とある。ちなみにRVRは「レクリエーショナル・ビークル・ランナー」の略で、筆者の解釈ではオールマイティに使える、走りも乗り心地も積載性もいいとこ取りをした一台だと思っている。
大ヒットしたRVRは好調に売り上げを伸ばすなかでターボモデルを追加
そんなRVRだが、当初は三菱も手探りなのか月間販売目標台数はたったの1000台。2.0Lのみで4WD以外にFFも設定されていたが、わずか3つのグレードしか設定していないことから実験的な要素もあったのだろうが、バブル期ということもあって大ヒット。遙か彼方の記憶だが、即座に注文した友人は数カ月待たされたことを記憶している(当時はそれが当たり前だったのだが)。
売れているRVRだけに、すぐに1.8Lエンジン仕様も追加。ディーゼル車のほか、フロントグリルガードや背面タイヤといったよりRVらしい「スポーツギア」を設定して、販売台数をさらに伸ばす。そしてランエボでお馴染みの4G63型2.0Lの直4DOHCターボエンジン搭載仕様を追加して、バカっ速い「スーパースポーツギア」(他名もあり)を名乗るRV車が爆誕することになる。もちろん、ランエボと同じハイオク仕様ながら出力は抑えられていて、5速MT仕様が230ps/29.5kg-m、4速AT仕様が220ps/30.5kg-mであったが、これがとにかく速い。4人乗りのRV車が目を疑う加速性能を誇るのだ。そして車両重量が重たい分、タイヤは215/65R15を履くのだが、その効果もあってコンパクトな自然吸気のスポーツモデルを驚かせる加速性が備えられていた。
一部のオーナーたちの間ではエンジンチューニングも人気に!
スポーツカーとは背が低くてMTでエンジン性能を駆使して速さを生み出した時代に、普通の4ドアセダンながら速い4WDマシンとして登場したランエボに対して、RVRはRV車でランエボのようなクルマを生み出したのだからたまらない。ちなみにスーパースポーツギアの4WDはビスカスカップリングを用いた三菱自慢のフルオート4WDであり、エンジンもチューニングに対応できる鋳鉄ブロックのお馴染み4G63型ターボ。まさにRV界のランエボと言える存在であった。
もちろんRV車としてのユーティリティ性もしっかり備えていた。300mmもスライドできる後席を持ち、荷物の量や形に対応できるフレキシブルさを誇り、昼間と夜間点灯時でメーターの色が変わるカラーチェンジャー式を採用するなど、RVの遊び心を発揮したモデルであった。
そして1997年にシャープなデザインと1.8L&2.4LのGDIエンジンを採用した2代目が登場。そして、さらにパワーアップした250ps(MT車)/35.0kg-m仕様を設定したのだが、RVブームの終焉によってこのRVRはいったん休止となる。
2代目シャリオはファミリーミニバンの3列シート仕様でデビュー
1991年2月発売のRVRから遅れること3カ月、1991年5月には2代目シャリオ(初代モデルは1983年に発売)もデビューする。このシャリオは、後席にもヒンジドアを持つ初代由来のミニバンの元祖的なモデルで、日産プレーリーよりも発売は遅れたが、歴史的な3列シートとしてデビューした。
そのため2代目もファミリーカーとしての性格が強く、RVRに倣うように「リゾートランナーGT」(他名もあり)と呼ばれる4G63型インタークーラー付DOHCターボエンジン搭載仕様もラインアップした。このエンジンは、初代シャリオの大人しいターボ(1.8L直4SOHCターボ、最高出力135ps)とは異なり、ファミリーカーだったシャリオが高性能ミニバンに変貌。だがRVRほどの人気を博すことはなかった。そして2代目では高級路線のシャリオグランディスとなり、V6エンジン搭載など高級化が図られたのだが、日本でのシャリオの名はこのモデルで終焉を迎える。
日本はクルマも家電製品も、ほかの真似をより向上させて商品価値を高める国だという認識もあったが、それは昭和の話である。このRVRやシャリオのように、過去に例を見ない超高性能なスポーツワゴン&ミニバンを生み出したことをはじめ、日本初と呼べるクルマの機能や文化が沢山ある。そして日本のクルマづくりはつねにユーザーニーズに寄り添ったフレンドリーなモデルが多く、日常生活から外遊びまで今もなお満足度の高いカーライフを提供してくれる。
さすがに環境問題が叫ばれる現代で、RVRやシャリオのようなクルマは誕生しないだろう。しかし、電動化をいち早く推し進めてきた三菱にはツインモーター+S-AWCを搭載したアウトランダーやエクリプスクロスのPHEVモデルがある。今後、RVRのハイパースポーツギアRやシャリオのリゾートランナーGTのようなハイパーな電動SUVが登場することを密かに願っているのだが。
■三菱RVR ハイパースポーツギアR(5速MT)主要諸元○全長×全幅×全高:4460mm×1740mm×1730mm○室内長×室内幅×室内高:1880mm×1460mm×1140mm○乗車定員:4名○車両重量:1510kg○エンジン:4G63型直列4気筒DOHCターボ○総排気量:1997cc○最高出力:230ps/6000rpm○最大トルク:29.5kg-m/2500rpm○タイヤサイズ:205/65R15
■三菱シャリオ リゾートランナーGT(5速MT)主要諸元○全長×全幅×全高:4555mm×1695mm×1670mm○室内長×室内幅×室内高:2345mm×1435mm×1260mm○乗車定員:7名 ○車両重量:1500kg○エンジン:4G63型直列4気筒DOHCターボ○総排気量:1997cc○最高出力:220ps/6000rpm○最大トルク:30.5kg-m/2500rpm○タイヤサイズ:195/65R15
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みんなのコメント
リバティ GT-4
SR20DETの危険な車。
同じようなコンセプトの車を再度作ったら、ヒットするんじゃないかなー。