日本車でも400万~500万円するクルマがザラにある昨今。そりゃ高いクルマは至れり尽くせりだろうが、そこまで出さなくても充分な走行性能と高い安全性を持つモデルは存在している。
今回は200万円台チョボチョボをひとつの目安に、「買って悔いなし」というモデルをカテゴリーごとに3車、渡辺陽一郎氏に選出してもらった。
【利点はどこに? 円形に戻した車も??】 異形ステアリングはなぜ定着しないのか?
流行りのSUVにもスポーツモデルにも、探せばお手頃価格の良質モデルはちゃんとある。維持費の高いのが気にならなくなる、ということは正直ないだろうが、それでも安くいいクルマを買って、上質カーライフを楽しんでほしい。
※本稿は2019年5月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月10日号
■ミニバンモデル……コンパクトモデルに良質車が潜む
●トヨタ シエンタ X/価格:181万6560~195万8040円
搭載エンジンは1.5LのNA。FFは109ps/13.9kgmの出力で7人乗り。4WDは103ps/13.5kgmで6人乗りと、微妙にスペックが異なる。ポップな配色の2トーンカラーも用意されるのが魅力のコンパクトミニバン
ミニバンは3列のシートを備えるから、価格が全般的に高い。それでも1.5Lエンジンのコンパクトなモデルには、200万円以下の値付けがされたグレードもある。
その代表がシエンタだ。全高は1700mmを下まわるが、薄型燃料タンクの採用で、3列目シートの部分も床が低く、座面との間隔に余裕があるから、膝が持ち上がる窮屈な姿勢になりにくい。また、3列目は2列目の下に収まるので、荷室に変更した時の空間も広大だ。
走行安定性も優れ、コンパクトカーの感覚で運転できる。価格はガソリンエンジンのX(7人乗り)であれば182万円弱に収まる。
●ホンダ フリード Gホンダセンシング/価格:210万~233万2200円
充実した安全装備が自慢のコンパクトミニバン
1.5Lエンジンを搭載するコンパクトな車種だが、全高は1700mmを超えるから、外観はミニバンらしく立派。1/2列目は居住性が高く快適で、3列目にも大人が座れる。3列目を畳むと自転車も積める荷室になり、ミニバンとしての実用性が高い。
ガソリンエンジンを搭載するGホンダセンシング(6人乗り)は、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備と、スライドドアの電動機能などを標準装着して価格は210万円。割安だ。
●日産 セレナS/価格:244万800円
モデル中、唯一となるピュアガソリン車。FFのみで4WDの設定はない
シエンタとフリードはコンパクトミニバンだが、セレナは車内の広いミドルサイズ。しかもセレナの標準ボディは、5ナンバーサイズのミニバンでは居住空間が最も広い。ライバルに比べると、特に3列目のスペースで差をつけている印象だ。
シートアレンジも豊富で、2列目の中央部分を1列目の間までスライドさせると、収納設備として使える。
セレナSにはスマートシンプルハイブリッドが備わらず、JC08モード燃費は15km/Lだが(SハイブリッドのXは17.2km/L)、価格は約244万円。広い室内を備えたミドルサイズミニバンとしては、かなり安い。
■SUVモデル……人気カテゴリーの狙い目良質モデルは?
●ホンダ ヴェゼル X ホンダセンシング/価格:216万5000~238万1000円
ターボもなければハイブリッドでもない、121ps/15.8kgm発生の1.5LのNAエンジンを搭載。だがフィットベースゆえの使い勝手のよさと先進安全装備「ホンダセンシング」を装備し、クルマとしての実力は高い
SUVには3ナンバー車が多く、価格が全般的に高めだったが、最近はコンパクトで割安な車種も増えた。
その中心的な存在がホンダのヴェゼルだ。1.5Lエンジンを搭載して、ガソリンモデルとハイブリッドを選べる。燃料タンクを前席の下に設置して荷室の床を低く抑えたから、ボディはコンパクトでも積載性が優れている。
また後席の頭上と足元の空間も広く、居住性はミドルサイズ並み。発売後に数回の改良を受け、乗り心地も以前より快適になった。
ガソリンエンジンのXホンダセンシングは、サイド&カーテンエアバッグを含めて安全装備を充実させ、アルミホイールも標準装着。でも価格は216万5000円だ。
●スズキ クロスビー ハイブリッド MZ/価格:200万3400~218万9160
1LターボベースのマイルドハイブリッドSUV
プラットフォームは、ホイールベースの数値も含めてイグニスと共通だが、天井を高めて室内は広い。居住性は前後席ともに快適で、荷室は汚れを落としやすいため、屋外で使ったテントなども気兼ねなく積める。
エンジンは直列3気筒1Lだが、ターボの装着で動力性能は1.5L並みだ。JC08モード燃費は2WDなら22km/Lに達する。
価格は緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も含めて、各種の機能を充実させたハイブリッドMZの2WDが約200万円に収まる。
●マツダ CX-3 20S プロアクティブ/価格:233万2800~255万8800円
充実した安全装備を持つ。2L NAエンジン搭載
コンパクトなSUVで、プラットフォームはデミオと共通だが、足まわりの作りは異なる。走行安定性に優れ、乗り心地は重厚だ。後席と荷室は狭いが、前席は快適でインパネ周辺の質も高い。運転感覚はCX-5に近く「小さな高級車」の雰囲気がある。
エンジンは1.8Lクリーンディーゼルターボも選べるが、2Lのガソリンを搭載した20Sプロアクティブが割安。2WDの価格は233万円少々に収まる。
■スポーツモデル……パワーそこそこ。それでも走りの楽しさは百点満点
●スズキ スイフトスポーツ/価格:183万6000~205万9560円
「日本の良心」とまで評価される良質エントリースポーツ。4代目となった現行は、140ps/23.4kgmを発生する1.4Lターボを搭載。6速MTと6速ATが用意され、6速ATも「速さではMT以上かも」と言われるほど完成度が高い
最近は安全装備の充実や環境性能の向上により、クルマの価格が全般的に高まった。特に選びにくいのがスポーツモデルだ。「安い」というなら、価格は上限でも230万円前後に抑えたいが、今ではロードスターに1.5Lエンジンを積んだ最も安価な「S」でも255万円少々に達する。
そこで割安なコンパクトカーのスポーティグレードを選びたい。コンパクトカーをベースに開発するのは、走りのよいクルマを割安に作る代表的な方法だ。初代VWゴルフGTIが開拓した。
筆頭はスイフトスポーツだ。全長が4m以下のボディに1.4Lターボを搭載して、動力性能を2.2L並みに高めた。低回転域から過給効果を発揮して、ターボのクセはあまり見せず、回転の上昇に連れて加速力も強まる。
操舵感は機敏でよく曲がり、後輪の接地性も高いから、不安定な状態に陥りにくい。価格は6速MTの緊急自動ブレーキを備えた仕様が192万円少々。間違いなく割安だ。
●日産 マーチNISMO S/価格:184万2480円
116ps/15.9kgmを発生する1.5Lエンジンを、5速MTで操る。楽しい
マーチは発売から8年以上が経過して、緊急自動ブレーキも付かない。今では埋もれた印象だが、NISMO・Sは別格だ。
エンジンは専用にチューニングされた1.5Lで、5速MTとの組み合わせにより吹き上がりも鋭い。スプリング、ショックアブソーバー、ブレーキも専用設計となる。エアロパーツも装着して価格は184万円少々だから買い得といっていいだろう。
●トヨタ ヴィッツGR/価格:229万2840円
109ps/14.1kgm(MT)を発生する1.5Lエンジン搭載。CVT車は10速だ
エアロパーツや専用マフラーを加えた1.5LエンジンのGRスポーツをベースに、さらに高度なチューニングを施したのがGR。
下まわりにブレースを装着してボディとサスペンションの取り付け剛性を高め、ショックアブソーバーはザックス製で10mmローダウン。専用のブレーキキャリパーとパッドも備える。GRスポーツGRの価格は229万円少々。5速MTと10速スポーツCVTを選べる。
■コンパクト&ハッチバック……ベーシックだからこそ安くていいモノを
●ホンダ フィット 13G・L ホンダセンシング/価格:165万3480~184万7880円
13G・Fにホンダセンシング、サイドエアバッグ+サイドカーテンエアバッグ、LEDヘッドライトなどを追加で装備。安全装備が充実した買って損なしのベーシックコンパクトだ
コンパクト&ハッチバックは、安くて嬉しいクルマの代表カテゴリーだ。機能や装備のわりに価格が安く、NAエンジン搭載車なら150万~170万円の価格帯に買い得グレードが集まる。ハイブリッドやクリーンディーゼルターボでも200万円前後だ。
そんなカテゴリーの中で最も買い得なのはフィット。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く下がって積載容量も大きい。空間効率の優れたプラットフォームを使うから、全長は4m以下でも後席の足元空間はミドルサイズセダン並みだ。
1.3Lエンジンでもパワーに不足はなく、燃費もいい。歩行者を検知できる緊急自動ブレーキも備わる。
そんな13G・Lホンダセンシングの価格は165万3480円だ。ただし年内に新型にモデルチェンジする予定。
●日産 ノート e-POWER X/価格:202万1760円
エンジンで発電しモーターで走行。独特の「ワンペダルドライブ」が楽しい
ハイブリッドではノートe-POWERに注目したい。1.2Lエンジンは発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つ。モーターはアクセル操作に対する反応が機敏で運転しやすく、加速は滑らかで力強い。
エコ/Sモードを選ぶと、アクセルペダルを戻すと同時に回生発電と充電を開始するから、強めの制動力が発生する。停車まで含めて、アクセルペダルだけで速度を自由に調節できるのは面白い。
ノートは後席も広く、4名乗車も快適。視界がよくて運転しやすく、緊急自動ブレーキと運転支援機能も充実する。e-POWER Xの価格は202万円少々だ。
●マツダ デミオ XDツーリング/価格:201万4200~221万9400円
国内で唯一無二となる1.5Lディーゼル搭載コンパクト。FFはMTも選択可能
デミオはドライバー本位で開発されたコンパクト。後席と荷室は狭いが、前席は快適で、ペダル配置などの運転姿勢も自然な印象だ。走行安定性も全般的に優れている。
エンジンは1.5Lクリーンディーゼルターボが用意され、実用回転域の駆動力は、2.3Lのガソリンエンジン並みだ。燃料代は同サイズのハイブリッドと同様に安い。買い得なXDツーリングは201万円少々のプライス。
【番外コラム】もともと価格が安いハズだがそんなことは言ってはいけない軽の中の嬉しいクルマ
●スズキ ミライースX・SAIII……軽自動車のなかで機能のわりに価格を抑えた買い得車の1位はミライース。安全装備のスマートアシストIII、電動格納式ドアミラーなどの実用装備を充実させ、X・SAIIIの価格は108万円と安い。後席は意外に広く、長距離でなければ大人4名の乗車も可能だ。
先代は燃費ばかりが注目されたが、現行は総合力にも注目してほしいミライース
■価格:108万~120万9600円
●日産 デイズ ハイウェイスター Xプロパイロットエディション……内外装は上質で前席は座り心地も快適。ガソリンエンジンは実用回転域のパワーに余裕があり運転しやすい。運転支援機能と各種の装備を充実させたハイウェイスター Xプロパイロットエディションの価格は157万円弱。なかなかお買い得だ。
日産主導で開発された2代目デイズ。他メーカーのカスタムに該当するハイウェイスターなら外観もカッコよし
■価格:156万7080~169万8840円
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