「エッセンシャルワーカー」に隠された危機
日本に暮らす私たちは、日々何気なく食事をとり、衣服をまとい、必要な物を手に入れている。スーパーに行けば棚は埋まり、インターネットで注文すれば翌日には商品が届く。しかし、それが当たり前ではないことを忘れてはならない。絶え間なく機能する物流網があるからこそ、私たちの生活は成り立っている。
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人間の体が血液の循環によって生きているように、社会も物流が途絶えれば即座に機能不全に陥る。血液が止まれば人は死ぬように、物流が止まれば日本は終わる。
「物流は大事だ」と耳にすることはあっても、具体的にどこに問題があり、本当の危機が何かを理解している人は少ない。また、問題の深刻さを
「エッセンシャルワーカー」
などの“横文字”でごまかすのは適切ではない。これは日本人の悪癖だ。エッセンシャルワーカーという言葉は抽象的な意味を持ち、使う場面や文脈によって解釈が異なる。そのため、日常的に使うことで本来の意味が浸透せず、単なる“響き”に過ぎなくなってしまう。「何かいいこといった感」というやつだ。物流が止まれば日本は終わる、物流事業者は
「日本を終わらせない職業」
なのである。
物流が止まれば日本はどうなるのか
物流が停止すれば、どのような影響があるか。
最も身近な例は「食」だ。日本の食料自給率は38%(カロリーベース)に過ぎない。つまり、国内で消費される食料の総カロリーに対して、38%が国内で生産され、残りは輸入に頼っていることを示している。例えば、1000カロリー分の食料を消費すると、そのうち380カロリー分が国内で生産され、残りの620カロリー分は輸入される。カロリーベースは、食料の種類や質にかかわらず、エネルギー供給量を基準にした指標となる。
大半の食品は遠方から輸送されている。トラック、貨物列車、船舶、航空機がなければ、スーパーの棚は瞬時にスッカラカンになる。物流が1週間でも停止すれば、都市部の食料供給は崩壊し、生活は一変する。震災時に見られた光景が日常化するだろう。地方で生産された食品が、ワープやテレポーテーションであなたの元に届くわけではないことを、遅すぎるタイミングで痛感することになる。
医療にも同様の影響が及ぶ。病院で使用される薬品や医療機器の多くは、国内外のメーカーから輸送されている。物流が機能しなくなれば、必要な薬が届かず、治療が受けられない患者が続出する。血液製剤のような命をつなぐ物資も例外ではない。物流が止まれば、文字通り「命の血液」も止まることになる。
また、物流の影響は工場や企業の生産活動にも深刻な影響を与える。部品が届かなければ、製造は停止し、国内外のサプライチェーンが寸断される。実際、2021年には半導体不足が原因で自動車の生産が滞った。物流は単なる「運搬作業」にとどまらず、経済の基盤そのものである。
「エッセンシャルワーカー」という言葉の欺瞞
物流の現実を前に、政府やメディアは「エッセンシャルワーカー」という言葉を使って美談を作りたがる。しかし、それでは根本的な解決にはならない。
「あなたたちは社会にとって不可欠な存在です」
と言葉だけで持ち上げても、労働環境が改善されなければ問題は解決しない。「必要だから頑張ってください」といわれても、過酷な労働環境のままでは人は離れていく。現場からすれば、
「それなら給料を上げてくれ」
「荷主・荷受け対応をなんとかしてくれ」
といった声があがるのが現実だ。物流の現場で働く人々に対して「エッセンシャルワーカー」と横文字で無責任に称賛することは、むしろ
「問題の本質をぼかす欺瞞」
に過ぎない。彼らはただの「エッセンシャルワーカー」ではない。彼らがいるからこそ、私たちの生活は成り立っている。物流の担い手がいなくなれば、日本社会は機能しなくなる。その危機を直視しなければならない。物流事業者こそが「日本を終わらせない職業」である。
この現実に直面した際、メディアや政治家、企業の発信は十分だろうか。物流は単なる裏方業務ではなく、社会の生命線であり、その価値を「真正面から伝える言葉」が圧倒的に不足している。
「エッセンシャルワーカー」
「サプライチェーン」
「ロジスティクス」
といった専門用語を並べても、一般の人々には伝わらない。これらの言葉が理解できるのは、専門家や業界関係者、ステークホルダー、物流オタク、物好き、または暇人に限られる。
「物流が崩れれば、明日からスーパーに何も並ばない」
「救急患者に必要な薬が届かない」
といった、生活に即した表現が求められる。物流事業者こそが「日本を終わらせない職業」であることを、広く伝える必要がある。
問題は制度設計だけではない。物流が社会にとってどれほど不可欠かを、誰もが理解できる言葉で語る力が求められている。単なる「美談」や「専門用語」ではなく、生活に直結する問題として強く訴えかける言葉が必要だ。
物流が止まれば、日本が終わる
しつこいくらい繰り返そう。
日本の物流は単なる「輸送」ではない。それは社会の、日本の「血液」であり、経済を支える生命線だ。これが詰まれば、企業の活動も、人々の暮らしも、国家の機能そのものも停止する。
「物流は大事だ」というだけでは足りない。「エッセンシャルワーカー」という言葉でお茶を濁すのではなく、物流の担い手にふさわしい待遇と環境を整えることこそが、日本の未来を守る唯一の道だ。今、この問題に真正面から向き合わなければ、取り返しのつかない事態が訪れる。物流は日本の血液そのものであり、その事実を決して忘れてはならない。
帝国データバンクが2025年3月10日に発表したデータによれば、2025年2月の道路貨物運送業者の倒産件数は20件に達し、2024年度(11ヶ月累計)で328件となった。このペースが続けば、年間で360件前後になる可能性が高く、リーマン・ショックが発生した2008年度の371件に迫る水準となり、過去2番目の高水準に達する恐れがある。
この背景には、「人手不足」と「燃料価格の上昇」が大きな影響を与えている。人手不足を理由に倒産した業者は2024年度(11ヶ月累計)で308件に達し、そのうち38件が道路貨物運送業者で、全体の12.3%を占めた。また、物価高による倒産も深刻で、2024年度に判明した841件のうち116件が道路貨物運送業者で、全体の13.8%を占め、その9割が燃料費の高騰を原因としている。人手不足と物価高、特に燃料費の影響が業界全体に深刻な影響を与えている。
これが現実だ。
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みんなのコメント
ガソリン代の暴騰や税について無関心ですが
自分達の生活に直結する問題だという事が
全く理解できていないんですよね