硬派なクロカン4WDのお約束、ラダーフレームに別れをつげた新型ディフェンダー。初代の特徴をとらえたどこか愛らしいシルエットをもつモダンオフローダーへと進化した“クロカン”の実力を試した。
dk24phフレーム構造とリジットサスに別れをつげた
メルセデス・ベンツGクラス、ジープラングラーに肩を並べる世界的に人気の本格オフローダーがランドローバー・ディフェンダーだ。
ディフェンダーのルーツは1948年に誕生した「ランドローバー シリーズI」にある。そもそもランドローバーといえばこのクルマを意味するものだったが、その後に登場した、レンジローバーやディスカバリーと区別するため1990年代にディフェンダーという名称がつけられた。
長年Gクラス、ジープ、そしてディフェンダーの3車に共通する特徴が、フレームの上に別体のボディを架装するフレーム型のボディ構造だった。Gクラスとジープは幾度もモデルチェンジを繰り返しながら現在もその伝統を受けついでいる。
一方ディフェンダーは最新の衝突安全性や排ガス規制をクリアすることができず、2015年をもっていったんその歴史の幕を閉じた。復活待望論が高まるなか、2019年のフランクフルトモーターショーで初公開されたのが、この新型ディフェンダーだった。
まず、初代の特徴をとらえたどこか愛らしいシルエットで注目を浴びたが、実はクロカンを愛好するコアなファンのあいだでは、その中身がフレーム構造と別れをつげ、軽量アルミニウムのモノコック構造を採用し、足まわりは四輪独立懸架式になったことが話題になった。要は硬派なクロカン4WDであるべきディフェンダーが、いまどきのSUVになりさがってしまったのではないかという懸念だ。
そういう意味では、何をもって現代のオフローダーと考えるのかがポイントとなる。紛争地域など、生きるか死ぬかを問われるような究極の状況でいまもっとも活躍しているのは、実はトヨタの70などのランドクルーザーだ。流通量が多くタフで、構造がシンプルゆえに修理が簡単で、精製状態のよくないガソリンでもエンジンが壊れることなく走り続ける。Gクラスもジープも軍事車両をルーツとするだけにそういう役割を担ってきた側面もあってフレーム構造を守りつづけている。しかし、新型ディフェンダーはそこはスパッと割り切ったというわけだ。
トラック然とした乗り心地とはまったく別物
ボディタイプは先代同様にロングボディで5ドアの「110」とショートボディで3ドアの「90」の2種類。パワートレインは最高出力300ps、最大トルク400Nmを発生する2リッター4気筒ガソリンターボで、トランスミッションは8速ATで、ハイ&ローレンジの副変速機ももちろん標準装備する。ディーゼルやマイルドハイブリッドなど電動化モデルもラインアップされるようだが、日本市場への導入はいまのところ未定だ。
インテリアは液晶メーターとインパネ中央に大型のタッチスクリーンを配したシンプルながらも、収納やグラブバーなどが上手に配置されておりとてもセンスがいい。そしてこのスクリーンに実にさまざまな機能が集約されている。レンジローバーではおなじみのオフロード走行モード切り替え機構「テレインレスポンス」に加え、地形に応じて最適な車両設定を自動選択する「テレインレスポンス2」、オンロード、オフロード用に最適化されたカメラや車高調整機能、さらに川や池などの水深を測る水中走行検知機能などまで備えている。またこの110ではエアサスを標準装備しており、渡河性能は、最大水深900mmにも及ぶ。
分厚く容量たっぷりの座面をもつシートの座り心地も良好だった。片道200kmのドライブにも出かけてみたが、初代のトラック然とした乗り心地とはまったく別物で、ノイズもうまく抑えこまれており、エアサスによるたおやかさもあって、長距離もまったく苦じゃない。気になる燃費は高速道路をメインに約450kmほど走行して、メーター表示は約9.3km/lだった。全長約5m、全幅約2m、車両重量2240kgという巨体だけにそこは致し方ないところか。オフロードに関しては今回試すことができなかったが、従来のフレーム構造と比較して3倍のねじり剛性を確保し、ランドローバー史上最も頑丈なボディ構造とうたっており、へたな想像などとうてい及ばぬほどの性能を有していることは間違いない。
果たせるかな、ディフェンダーは“クロカン”に現代的解釈を加えた実にモダンなオフローダーだった。110のベースモデルの車両本体価格は589万円となかなかにリーズナブルな設定で、多彩なオプションパーツを選べば自分なりのモデルが創作可能な点もうれしい。
都市生活者には、全長約5m×全幅約2m×全高約2mという容量たっぷりのサイズはいささか大きすぎる気もするが、それが気にならない人にとってはかなり魅力的だと思う。個人的には全長の短い90の、ディーゼルかマイルドハイブリッドあたりが上陸すれば、大いに心揺さぶられる気がする。
文・藤野太一 写真・ジャガー・ランドローバー・ジャパン 編集・iconic
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