現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【知られざるクルマ】Vol.24 シマロン、カテラ、BLS……依り代キャディラック盛衰記~キャディラックに「いすゞ・アスカ」の兄弟車がいた!?

ここから本文です

【知られざるクルマ】Vol.24 シマロン、カテラ、BLS……依り代キャディラック盛衰記~キャディラックに「いすゞ・アスカ」の兄弟車がいた!?

掲載 更新 4
【知られざるクルマ】Vol.24 シマロン、カテラ、BLS……依り代キャディラック盛衰記~キャディラックに「いすゞ・アスカ」の兄弟車がいた!?

誰もが知る有名なメーカーが出していたのに、日本では知名度が低いクルマを紹介する連載、【知られざるクルマ】。第24回は、前回に引き続き、アメリカ車の話題をお送りしたい。なお予告では「知られざるとびきりのラグジュアリーモデル」を記す予定だったが、予定を変更して、「他のクルマを依り代(よりしろ)にして生まれた、変わり種キャディラック」を取り上げる。タイトルにある「いすゞ・アスカ」の兄弟車ってナンダ!?

【シマロン】 世界中に兄弟車があった世界戦略車「Jカー」の最上級車種

【大矢アキオの イタリアでcosì così でいこう!】イタリア版「フォルクスワーゲンファンミーティング」――参加した180台に込められた熱き思い【動画あり】

1970年代に入り、北米市場ではBMW3シリーズやメルセデス・ベンツ190、アウディ80(北米では4000と称した)、サーブ900などの欧州製高級・高性能コンパクトサルーンが台頭し始めた。その多くが2Lクラスの4気筒エンジンを搭載していた。しかしGMを、いやアメリカを代表する高級車ブランドであるキャディラックには、それらに対抗できる車種を持ち得ていなかった。

そこでGM=キャディラックは、1981年に生まれた、GMグループの国際戦略FFプラットフォーム、およびそれを元に構築された「Jカー」を用い、キャディラック初のサブコンパクトカーの「シマロン」を発売した。1982年のことである。

Jカーのボディは約4.4mで、サイズ的には欧州の強敵と合致し、キャディラックの名を冠するだけあって、アルミホイール、多用されたメッキ、エアコン、本革シートなどを標準で備えていた。シマロンは、「小さなキャディラック」「エントリー・キャディラック」というだけではなく、それまでのアメリカ車には存在しなかった「小さな高級車」でもあったのだ。

だが、デビュー時のシマロンのエンジンは、最高出力88psに過ぎない1.8L直4OHVで、力不足は否めなかった。前後のデザインを派手にしてはいるものの、北米向けJカーの中でも大衆モデルの「シボレー・キャバリア」と見た目はほぼ変わらなかった。それでいて価格は、仕様によってはキャバリアの倍近くにも達した。

そのためシマロンは、発売まもない時期でさえ、GMの目論見通りの販売台数には届かなかった。そこで1983年にはエンジンを2Lインジェクションに、1985年の外観小変更では2.8L V6エンジンをオプション設定、1987年にはマスクを上位車種に近づけ、V6を標準化するなど、継続して改良が行われた。欧州製スポーツセダンを意識した足回りも年々進化し、高い評価が与えられていた。

しかし最後まで台数は伸び悩んだまま、1988年で生産を終了。今だにアメリカでは「バッジエンジニアリングカーの失敗例」とまで呼ばれ、GM社内でもシマロンで飲まされた辛酸を今なお忘れていない、という。

それではここからは、シマロンのベースであるJカーを何台か見てみたい。世界各地で名前と姿を変えて売られたJカーの、北米代表はシボレー・キャバリアだ。そしてさらにディビジョンごとに「ポンティアックJ2000(その後改名して単なる「2000」、そしてさらに「2000サンバード」→「サンバード」)」、「オールズモビル・フィレンザ」「ビュイック・スカイホーク」が存在した。

続いて欧州。こちらではやはりJカーの代名詞として「オペル・アスコナ(C)」があげられよう。英国市場では、「ボクスホール・キャバリア」という名称だった。

Jカーは、アジア・オセアニア・南米でも販売された。その筆頭は、日本の「初代いすゞ・アスカ」だろう。アスカは、海外では仕向地により「いすゞJJ」「シボレー・アスカ」「ホールデン・カミーラ(JJ)」「ホールデン・アスカ」など、実に様々な名前で販売していた。また、ややこしいことにオペル・アスコナ(C)は、南米で「シボレー・モンツァ」として売られ、オーストラリアでは「ホールデン・カミーラ(JB)」という名を持っていた。さらに韓国には、ベルトーネ作といわれる流麗なボディを持つ「デーウ・エスペロ」が存在した。このようにJカーは、ネタとしてとても面白いので、この連載で改めて取り上げようと思っている。

【カテラ】まぁるいオペル・オメガをキャディラックに仕立てると……?

シマロンで失敗したGM=キャディラックだったが、欧州製セダンとの戦いを諦めたわけではなかった。次のターゲットは、いわゆるEセグメント。BMWで言えば5シリーズ、メルセデス・ベンツではEクラス、アウディならA6、レクサスだとES300に相当する。これまたハードルが高いチャレンジな気がするが、キャディラックには若々しくスポーティでフレッシュなモデルの投入は不可欠だったのだ。そのキャディラックの名は、「カテラ」。1996年のデビューである。

そこでキャディラックは、再び他ブランドのベースモデルを “キャディラック化” する作戦に出た。元になったのは、GMグループ内、オペルの高級車「オメガ(B)」。ドイツで生産されて北米に運ばれたカテラは、外観はほぼオペルだったものの、シマロンの反省からかエンジンは当初から200psを発生するV6を用意。安全装備と豪華装備を満載し、キャディラックのエントリーラグジュアリーカーにふさわしい、高級なクルマに仕立て上げられていた。発売時の価格は29.995ドルだった。

だが、このカテラも、結局は失敗作に終わってしまった。元になった「オペル・オメガ(B)」は、たしかに欧州製後輪駆動スポーツセダンとして優れたセダンだったが、いにしえのキャディラックユーザーをも取り込もうとしたばかりに、ソフトな足のセッティングをカテラに与えたことが、欧州車を好む層にはむしろ逆効果になった。外観がほぼそのままだったこと、キャディラックとしての押しが足りなかったことも関係したこともあるだろう。そのため、2000年の大掛かりなマイナーチェンジも功を奏することなく、2001年をもってカテラの生産は終わりを迎えている。

【BLS】北米では販売されなかった、サーブが開発した「欧風キャディラック」

ラストは、日本での知名度がほぼないかもしれない「BLS」で締めくくろう。BLSは、ズバリ「欧州向けキャディラック」だった。

2000年前後の欧州市場においてのキャディラックは、世界に名だたる高級車ブランドとしての認知が進んでいなかった。そこでGMは欧州専売のキャディラックを販売することとし、GM傘下でプレミアムカー作りに長けていた、サーブにそれを一任した。なお、サーブは1990年からGM の資本を受け入れ、2000年には完全子会社になっていた。

そしてサーブは、自社のDセグメントラグジュアリーセダン「2代目9−3」をベースに、「BLS」を開発した。そのため、生産もサーブの工場で行われたという、変わった経歴のキャディラックである。元々この9−3自体が、GMの「イプシロンプラットフォーム」を用いて生み出されたクルマであるため、兄弟車には「オペル・ベクトラ(C)」「オペル・シグナム」「オペル・インシグニア」「7代目シボレー・マリブ」「ポンティアック G6」「サターン・オーラ」「2代目フィアット・クロマ」などを大量に擁している。

そこかしこに9−3と共通のパーツを用いていたBLSは、シャープなキャディラック・フォルム、豪華な内装、優れた性能を有していたことから、GM=キャディラックの夢を叶えるかに見えたが、残念ながら欧州市場で受け入れてもらうことはできなかった。欧州以外にもロシア、韓国、メキシコなどでも販売したが、これらのエリアでも販売は不発に終わった。鳴り物入りで誕生したが、生産年数は正味5年だった。欧州市場という事情があったにせよ、「依り代キャディラック」では、かつてのシマロン、カテラと同じ道を歩んでしまう運命からは、逃げられなかったのかもしれない。

小型キャディラックという発想は、時代が早過ぎた?

今回の3台、シマロン・カテラ・BLSは、いずれも決して成功作とは呼べなかった。しかしながら、そうなってしまったのはこのクルマたちだけのせいではない。やはり「キャディラック以外のクルマをキャディラックにする」ということが問題だったのだろう。また、北米市場がドメスティックなクルマに「コンパクトな高級車」を求めていなかった傾向もあるはずだ。キャディラックでもようやく近年の「ATS」(BLSの後継車)で、欧州Dセグメントサルーンと戦える力強いコマを得た感がある。現在ラインナップする、CT4(ATS後継。日本未発売)、CT5などのキャディラックセダンは、キャディラックらしいスタイルとエレガンス、スポーティさを兼ね備えたモデルとして、世界中で高い評価を得ている。そう思うと、シマロン・カテラ・BLSの「スポーティな小型キャディラック」は、出た時期が早過ぎたのかもしれない。

ということで、まとめてしまうと、昨今のキャディラックでは、ATS→BTS のように、モデルチェンジごとの車名変更、クラスを超えた統廃合が行われことが多く、過去のモデルとの紐付けが難しい。そこで、ル・ボラン534号(2021年9月号)掲載の連載「車系譜MANDA-LA」第16回で、セビルを中心としたキャデラックセダンの系譜を追っているので、ぜひご覧いただきたい(宣伝)。

なお、今回使った「依り代」という言葉は、明鏡国語辞典によると「神霊が降臨するときに宿ると考えられているもの。憑依(ひょうい)体とされる樹木・岩石・動物・御幣(ごへい)など」を指す。アメリカ車の絶対的高級車ブランド・キャディラックが、一般的・普及版の車種に宿った……という意味で使ってみた。

次回は話を大きく変えみたい。まだ内容は決めていないが、これまた「知らないよ、こんなクルマ!」というネタでお送りするかもしれない。どうぞお楽しみに!

こんな記事も読まれています

よく聞く「板金」って一体なに? キズやへこみはどこまで修復できる? パーツ交換のほうが良いケースとは?
よく聞く「板金」って一体なに? キズやへこみはどこまで修復できる? パーツ交換のほうが良いケースとは?
くるまのニュース
自動で消灯するウインカー、直感的操作のジョイスティックも…常識に挑戦するヤマハの「次世代スイッチ」
自動で消灯するウインカー、直感的操作のジョイスティックも…常識に挑戦するヤマハの「次世代スイッチ」
レスポンス
モナコ公国で広告がポロポロ……剥がれたバナーに予選を台無しにされかけたノリスは憤怒「直すと言っていたのに。受け入れられない」
モナコ公国で広告がポロポロ……剥がれたバナーに予選を台無しにされかけたノリスは憤怒「直すと言っていたのに。受け入れられない」
motorsport.com 日本版
新型MINI COUNTRYMAN S ALL4はCセグのクロスオーバーでMINI味が薄まりBMW味が濃くなっていた【試乗記】
新型MINI COUNTRYMAN S ALL4はCセグのクロスオーバーでMINI味が薄まりBMW味が濃くなっていた【試乗記】
Auto Prove
横乗り系にはベストな仕様! ギア感満点のダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
横乗り系にはベストな仕様! ギア感満点のダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
17年ぶり復活へ! トヨタ新型「“ステーションワゴン”SUV」どんな人が買う!? 全長5m級のビッグな「クラウンエステート」に反響の声集まる
17年ぶり復活へ! トヨタ新型「“ステーションワゴン”SUV」どんな人が買う!? 全長5m級のビッグな「クラウンエステート」に反響の声集まる
くるまのニュース
ホンダ『ダックス125』に新色を設定して発売 8月
ホンダ『ダックス125』に新色を設定して発売 8月
レスポンス
[パジェロスポーツ]日本発売!? だったらチャレンジャー国内撤退しなきゃよかったんじゃないの!?!?
[パジェロスポーツ]日本発売!? だったらチャレンジャー国内撤退しなきゃよかったんじゃないの!?!?
ベストカーWeb
「BLUE SKY HEAVEN 2024」は横浜市山下ふ頭にて6月1日、2日に開催!【ハーレーダビッドソンジャパン】によるバイクと音楽の融合イベント  
「BLUE SKY HEAVEN 2024」は横浜市山下ふ頭にて6月1日、2日に開催!【ハーレーダビッドソンジャパン】によるバイクと音楽の融合イベント  
モーサイ
ヒストリック・フェラーリで学び、楽しむ!特別なドライビングプログラム「コルソ・ピロタ・クラシケ」ってどんな体験?
ヒストリック・フェラーリで学び、楽しむ!特別なドライビングプログラム「コルソ・ピロタ・クラシケ」ってどんな体験?
Webモーターマガジン
KGモーターズがオリジナル超小型モビリティの正式名称を「mibot」と発表! 世界で活躍するイラストレーターのカミガキヒロフミさんとのコラボも実現
KGモーターズがオリジナル超小型モビリティの正式名称を「mibot」と発表! 世界で活躍するイラストレーターのカミガキヒロフミさんとのコラボも実現
THE EV TIMES
岡本裕生、2連続ポールを獲得「いい流れを決勝に繋げたい」/2024全日本ロード第3戦SUGO JSB1000予選
岡本裕生、2連続ポールを獲得「いい流れを決勝に繋げたい」/2024全日本ロード第3戦SUGO JSB1000予選
AUTOSPORT web
自転車は車道を…走っちゃダメ!? 都内の意外な「自転車NGロード」5選 “チャリで行けない東京”とは?
自転車は車道を…走っちゃダメ!? 都内の意外な「自転車NGロード」5選 “チャリで行けない東京”とは?
乗りものニュース
アルピーヌ A110 ベースで長さが変わる、ザガート『AGTZツインテール』発表
アルピーヌ A110 ベースで長さが変わる、ザガート『AGTZツインテール』発表
レスポンス
3度目の正直なるか? ルクレール、母国でポールポジション獲得! ピアストリが2番手……角田裕毅8番手から入賞狙う|F1モナコGP予選
3度目の正直なるか? ルクレール、母国でポールポジション獲得! ピアストリが2番手……角田裕毅8番手から入賞狙う|F1モナコGP予選
motorsport.com 日本版
超レトロ顔の新型「軽バン」初公開! ”チビー”なグリルが超カッコイイ「ハイゼット」! オシャレすぎる「アメリカン車中泊カー」登場
超レトロ顔の新型「軽バン」初公開! ”チビー”なグリルが超カッコイイ「ハイゼット」! オシャレすぎる「アメリカン車中泊カー」登場
くるまのニュース
アルピーヌF1育成ミニがポール・トゥ・ウィン。SC出動3回の荒れた展開も動じず|FIA F3モナコ フィーチャーレース
アルピーヌF1育成ミニがポール・トゥ・ウィン。SC出動3回の荒れた展開も動じず|FIA F3モナコ フィーチャーレース
motorsport.com 日本版
ハミルトン初日2番手「うれしい驚きだが、ロングランに課題」ラッセルは新ウイングをテスト:メルセデス/F1モナコGP
ハミルトン初日2番手「うれしい驚きだが、ロングランに課題」ラッセルは新ウイングをテスト:メルセデス/F1モナコGP
AUTOSPORT web

みんなのコメント

4件
  • 中古車情報で出てくるのはアコードアスカ、さすがにレガシィアスカは出てこないか
  • キャディラック・カテラなら聞いたことある。
    いすゞアスカベースのキャディラックがあったのは知らなかった。

    キャディラック=大排気量でクソデカいボディのイメージがあるが、こういうモデルもあったんだな。

    カテラが後の、キャディラックCTSね。
    圧倒的にCTS の方がカッコイイが。

    てか、キャディラック・カテラを知っている俺は…かなりの変態かも。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

170.3206.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

49.953.0万円

中古車を検索
アスカの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

170.3206.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

49.953.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村