2台の「R 12」に感じた、意外な資質
2024年からBMW Motorradが発売を開始するヘリテージ・ファミリーの新作、兄弟車の「R 12(アール・トゥエルブ)」と「R 12 nineT(アール・トゥエルブ・ナインティー)」を初めて見たとき、私(筆者:中村友彦)は2つの点で意外な気がしました。
【画像】BMW Motorrad「R 12」(2024年型)を画像で見る(21枚)
まずひとつめの意外は、吸排気系やECUなどを新作しつつも、既存の「R nineT」のパワーユニットを継続採用したこと。昨今の2輪業界では、基本設計が古い空冷・空油冷の大排気量エンジンは存続が難しい……と言われているだけに、2008年型「HP2スポルト」に端を発するDOHC空油冷フラットツイン(水平対向2気筒エンジンのこと。ボクサーとも呼ぶ)の現役続行は、私にとっては驚きだったのです。
そしてふたつめの意外は、車名に「nineT」が付かないクルーザーバージョンの「R 12」を設定したこと。その背景には2020年から発売を開始した「R 18」シリーズが、好調なセールスを記録しているという事情があるのかもしれませんが、一昔前のBMWの方針を振り返れば、クルーザー路線の拡大はまさかの展開です。
まあでも、「R 18」の車格は万人向けとは言い難いので(ベーシックモデルの車重は358kgで、軸間距離は1725mm)、同社が小柄なクルーザーの必然性を感じたのは、自然な流れなのかもしれません(「R 12」の車重は227kgで、軸間距離は1520mm)。
そんな「R 12」の価格(消費税10%込み)は198万6000円~ですから、BMWが仮想敵としたのは、ハーレーダビッドソン「スポーツスターS」(199万8800円~)、「ナイトスタースペシャル」(188万8000円~)、インディアンの「スカウト」シリーズ(223万8000円~)、トライアンフ「ボンネビルボバー」、「スピードマスター」(189万9000円~)などでしょう。
とはいえ、車格が大き過ぎない2気筒クルーザーという見方なら、ホンダ「レブル1100」シリーズ(113万8500円~)やロイヤルエンフィールド「スーパーメテオ650」(97万9000円~)も、視野に入っている可能性があります。
クルーザーの流儀に従った装備と構成
前述したように「R 12」シリーズには、既存の「R nineT」の路線を継承する「R 12 nineT」が存在し、2台はフレームやパワーユニットを筆頭とする基本設計を共有しています。
ただし、外装、ライディングポジション関連、ホイール、サスペンション、ディメンション、エンジンの味つけなどは各車各様で、現代的なロードスポーツの「R 12 nineT」に対して、「R 12」はクルーザーの流儀に従った構成を導入しています。
外観から判別しやすい特徴としては、ティアドロップタイプのガソリンタンク、クラシカルな雰囲気のリアフェンダー、高めのハンドル、前方に位置するステップ、シングル仕様で座面が低いシートなどです。
もちろん、クルーザーらしい乗り味を生み出すタイヤサイズ(F:19/R:16インチ)、ストロークが前後とも90mmのサスペンション、29.3度/132.5mmのキャスター/トレールも、このバイクを語るうえでは欠かせない要素です。
ちなみに「R 12 nineT」は、タイヤが前後17インチ、サスペンションストロークは前後とも120mmで、キャスター/トレールは27.7度/110.7mmです。
最高出力と最大トルクは、現代的な運動性能を追求したロードスポーツの「R 12 nineT」が109ps/7000rpm、115Nm/6500rpmで、常用域の扱いやすさを重視する「R 12」は95ps/6500rpm、110Nm/6000rpmです。
かつての「HP2スポルト」の133psや、その技術を転用した「R 1200 GS/RT/R」などの125psと比較するといずれも控えめですが、「R 12」シリーズのキャラクターを考えれば、その数値に異論を述べる人はいないでしょう。
とっつきが良くて、乗り味はフレンドリー
「R 12」で走り始めて数分後、「そうか。これはフラットツイン入門車にして、BMWの支持層拡大作戦の一貫なのか……」と、私はそんな気持ちになっていました。と言うのも、シート高が754mで車格が大き過ぎないこのモデルは、非常にとっつきがいいのです。ちなみに「R 12 nineT」のシート高は795mmです。
近年のBMWはエントリーユーザーを意識したモデルとして、単気筒車の「G 310」シリーズ(シート高は「R」が785mmで「GS」は835mm)や、並列2気筒車の「F 900 R」(シート高815mm)などを販売していますが、足つき性を重視するライダーにとっては、「R 12」の方が親しみやすいのかもしれません。
さらに言うなら、乗り味もフレンドリーです。そもそも他のエンジン形式と比較すると、クランクシャフトが縦置きのフラットツインは重心が低くて安定感が高いと言われているのですが、「R 12」の場合は車高とシート高の低さによって低重心感が際立っていますし、穏やかなキャスター/トレールや19インチのフロントタイヤも安定感に寄与しています。
いずれにしても「R 12」を体験したら、誰だってホッとした気分になるんじゃないでしょうか。そしてその感触は、「R 12 nineT」は言うまでもなく、「R 18」や「R 1300/1250」シリーズとも異なっていて、私はフラットツインの新しい可能性を垣間見た気がしました。
ただし、「R 12」はフレンドリーさと安定性のみに特化したモデルではありません。
前言と矛盾するようですが、エンジン内に縦置きしたクランクシャフトが生み出すジャイロ効果は、直進から旋回に移行する際の抵抗にならないですし(一般的な横置きクランクのエンジンは、安定成分を生み出すクランクのジャイロ効果が進路変更時には抵抗になる)、穏やかなキャスター/トレールと19インチのフロントタイヤは、車体を倒し込む際の安心感にも貢献してくれます。
もちろん、単純な旋回性は「R 12 nineT」の方が優位なのですが、コーナリングの手応えという意味では侮り難い資質を備えているのです。
そんな「R 12」に“無理矢理”異論を述べるとしたら、車高とシート高を低く設定した結果として、乗り心地がいまひとつなこと……でしょうか。もっともこの件に関しては、とっつきの良さとフレンドリーさを考えると、安易にマイナス要素とは言えません。
個人的には、シートをやや分厚くし、前後サスペンションストロークを100~110mm近辺とした、ツーリング仕様が存在してもいいような気がします。
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