■手足を使ったシフトチェンジはもう古い?
スポーツカーといえば、MT(マニュアルトランスミッション)車を想像する人が多いのではないでしょうか。しかし最新のスポーツカーではほとんどがAT(オートマチックトランスミッション)モデルとなっています。
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今でも根強い人気のある、漫画「頭文字D」や映画「ワイルド・スピード」シリーズでは、劇中に必ずといってよいほどマニュアルシフトのギアチェンジをするシーンが登場します。いかに、スムーズにギアチェンジをしながら加速していくか、急カーブを攻めるのかが見所でもあるからです。
そのイメージとは裏腹に、昨今のスポーツカーはAT車のみのモデルが増え、最近ではシフトレバーはおろか、レバーの代わりにボタン式やダイアル式に切り替わってきているモデルも多くなっています。
実際に、ホンダ新型「NSX」をはじめ、フェラーリなど多くのスポーツカーに「ボタン式」のシフトスイッチが普及しています。
■ホンダ新型「NSX」にボタン式を導入した理由は?
「NSX」といえば、ホンダを代表するスポーツカーで、初代はMT車がメインに販売されていました。しかし2017年2月27日に販売された新型「NSX」は、AT車のみの設定です。センターコンソールにはシフトレバーはなく、「P」「R」「N」「D/M」の4つのシフトスイッチと、パーキングブレーキの操作ボタンが並べられています。
これについて、ホンダ広報・徳本さんにお話を伺いました。
―――なぜ、新型「NSX」はスポーツカーにもかかわらずMTモデルを設定せず、ボタン式シフトを採用したATモデルのみの設定なのでしょうか?
「新型『NSX』はホンダの先進技術を注ぎ込んだスーパースポーツカーです。このクラスのスポーツカーに求められるハイパワーや速さ、レスポンス、パフォーマンスを実現するために、ふさわしいトータルシステムパッケージを検討した結果、MTではなく9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と、センターコンソールからシフトレバーを廃止したエレクトリックギアセレクターを採用しました。
これによりドライバーの手の届きやすい位置にスイッチ類を集約、ドライブスイッチは斜め前方へのプッシュ式、リバーススイッチはプル式とするなど、『人』の感覚にマッチした設定とし、ブラインド操作をも可能とする操作性を実現しました。
またハンドル裏にあるパドルシフトでもギアチェンジすることができるので、シフトレバーが無くてもシフトのUP/DOWNは任意ですることはでき、スポーティな運転ができなくなったわけではありません。逆にハンドルから手を放さず運転に集中できます。
このパッケージを実現したからこそ、高いダイナミクス性能をフルに体感することができ、新たな感覚を味わうことができます」
新型「NSX」は、人が手足を使いギアチェンジを行うよりも、コンピューター制御されたATでギアチェンジすることで、クルマが持つ性能をフルに引き出せるということです。
またレイアウトの自由度が高くなり、センターコンソールもスッキリするので、運転席まわりのデザインの幅が増えたともいえます。
■ボタン式シフトは約70年も前から存在!?
ボタン式シフトセレクターは新しいシステムのようにも思われますが、過去にも採用していたクルマはありました。1950年代のアメリカ車「エドセル」や「パッカード」「ダッジ」などです。
しかし、当時はモーターなどの部品が現代ほど信頼性がなく、不具合が多かったため使われなくなりました。先人たちの前衛的な試みが近年、何の不安もなく実用的に使えるようになったのは、技術の進歩の象徴といえるかもしれません。
技術が進化し、ひと昔前まではドライビングスキルが高い人にしか味わうことのできなかったスポーツカーのフルの性能が、こうして誰でも楽しめるようになった意味では素晴らしいことだと思います。
どんどんクルマは進化し、時代と共に走り続けています。次はどんな技術を積んだスポーツカーが登場するのでしょうか。
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