今年2月に世界初公開されたばかりのアウディの新型電気自動車「e-tron GT」が4月6日に日本で初公開されたが、このアウディEV第2弾となる電動4ドアクーペにひと足早くドイツで試乗!
アウディe-tron GT クワトロと、その高性能バージョンであるRS e-tron GTの海外試乗記を、ドイツ在住モータージャーナリストの木村好宏氏のリポートでお届けします。
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文/Y.Kimura 写真/Audi
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■3年前のプロトタイプとほぼ変わらぬデザインでデビュー!
アウディRS e-tron GTとチーフデザイナーのマーク・リヒテ氏
アウディジャパンが4月6日に発表したアウディ「e-tron GT クワトロ」および「RS e-tron GT」の量産モデルを試乗する機会を得たので、ここで皆様に紹介しよう。
試乗会が行われたのは、日本でも馴染みのある北ドイツの港町ハンブルグである。用意されたe-tron GTは、ハイパフォーマンスのRS e-tron GT、そしてスタンダードのe-tron GT クワトロの2機種であった。
私がe-tron GTと初めて遭遇したのは、今から3年前にプロトタイプでロサンゼルス市街地を走った時。
その後に行われたチーフデザイナーであるマーク・リヒテとのインタビューで、彼がこれまでのキャリアでもっとも気に入った「GTデザイン!」と自画自賛し、「このプロトのデザインで量産化して見せる!」と意気込んでいたのが印象的であった。
そして今回、ハンブルグで対面したe-tron GTはリヒテが約束したように、確かに当時とほとんど変わらない姿で私を迎えてくれた。
■プラットフォームはポルシェタイカンと共通
2021年4月6日にe-tron GT クワトロの市販モデルが発表された。プロトタイプのデザインがほぼ踏襲されている。システム最高出力は476ps/630Nm、0-100km/h加速は4.1秒
全長4.99m、全幅1.96m、全高1.38m、そして2.90mのホイールベースからわかるように、プラットフォームはすでに発売が始まっているポルシェ タイカンと同じEV 専用の「J1」を共有している。
もっとも大きな違いはデザインで、アウディe-tron GTはポルシェ タイカンと比べるとずっと普通、いい意味で古典的なGTスポーツカーである。
特に完全にグリルレスのポルシェに対して、妙な表現かも知れないがアウディにはまだ自動車っぽい顔がある。さらに初代クアトロを思わせる前後のはっきりしたオーバーフェンダー風プレスラインやリアの抑揚の多いデザイン処理にもアウディらしい高い品質が感じられる。
インテリアもアウディらしい高品質な仕上げと、人間工学的な使いやすく見やすいデザインに仕上がっている。すなわちドライバー正面のバーチャルコックピット、そして大きく弧を描くように広がるダッシュボード中央には10.1インチのタッチパネルがレイアウトされている。
なお、インテリアにはレザーフリー、すなわち天然の革に代わるカーボンニュートラルの使用済みのペットボトルや回収された古い漁網などの再生素材がフロアマットやシート表皮に使用されている。
ペットボトルはわかるが、なぜ漁網なのかというと、海の底で使われる漁網は日光による曝露や酸化することが少なく、リサイクルも簡単なのだそうだ。
しっかりと身体をサポートし、同時に最大で18通りのアジャストが可能な掛け心地のいい快適なシートもGTにふさわしい雰囲気を漂わせている。またCd値は0.24とタイカンよりは0.02劣る空力特性の結果、頭上に余裕のできたキャビンはポルシェよりは長距離移動空間に相応しいコンフォートキャビンである。
またトランクルームはフロントに81リッター、リアには405リッターの容量が確保されている。
■ハイパワーバージョンのRS e-tron GTは646馬力を発揮!
こちらは上級モデルのRS e-tron GT。20インチホイールと3チャンバー式エアサスペンションを標準装備。システム最高出力は646ps/830Nm、0-100km/h加速は3.3秒
高品質でスポーティに仕上げられたコクピット。運転席には12.3インチのアウディバーチャルコックピット、ダッシュボード中央には10.1インチのタッチパネルがレイアウトされている
パワートレーンはポルシェタイカンと基本的には同一で前後に2基の電気モーターを搭載、フロントのモーターはe-tron GT クワトロ、そしてRS e-tron GTともに238psだが、リアは435ps/465psとなっている。
システム出力は前者が476psと630Nm、後者が646馬力と830Nmで、ダイナミック性能はe-tron GT クワトロが0-100km/hが4.1秒、最高速度は245km/h、RS e-tron GTはそれぞれ3.3秒と250km/hと発表されている。
また搭載されるバッテリーは800Vの電圧を持ったネット84kWh(グロス93kWh)で航続距離は最大で488km(e-tron GT クワトロのWLTPモード)に達する。なお、日本での充電は8kWのACチャージャー、150kWのDCチャージャーに対応するようになっており、最大航続距離はアウディジャパンの発表では500kmとなっている。
■高性能ながらもジェントルな乗り心地
オプション装備として、走行音を電子的に合成した「e-tronスポーツサウンド」を選択可能。アウディドライブセレクトで車内および車外のサウンドを調節することができる
最初に試乗したのはスタンダード・バージョンともいえるe-tron GTクワトロで、2.3トンもの車重にも関わらず、加減速やコーナリングなどのダイナミックなシーンでの走りは正直言ってポルシェタイカンとの差はあまり感じられなかったが、全体的なドライブフィールはポルシェと比べると、アウディの主張どおり「GT風」である。
すなわちステアリング操舵に対する車体の反応やスロットルに対するモーターの立ち上がりなどわずかながらソフトな感じがする。さらに落ち着いた高品質なインテリアの影響もあって、主にアウトバーン走行が主だった往路ではドイツの推奨速度130km/hでフラットな乗り心地を感じながらのクルージングを楽しめた。
もちろん、前方の遅いクルマを追い越すために、左車線に出てドライブペダルを踏みこめば瞬時に200km/hを超える速度が体験できる。
次に乗ったハイパワーバージョンのRS e-tron GTは最初にハンブルグの市街地を通過したので、ドライブモードはまずコンフォートを選択しておいた。結果は石畳の古い道路や荒れた路面でもダイレクトに突き上げるようなショックは感じられず、ソフトなタウンドライブが可能であった。
一方、郊外でスポーツモードを選択すると操舵力がやや大きくなり、同時にダンパーにもやや硬め、がっしり感が出てドライバーにやる気を促す。もちろんドライブペダルのマッピングもシャープになり、人工ダイナミック・サウンドを伴って豪快な加速を見せる。
■日本への導入開始は2021年秋を予定
アウディはこのEVサウンドの創造にも真剣で、RS(GTはオプション)には外界とキャビン内のために2基のコントロールユニットおよびアンプを搭載、トランク内の2基のスピーカーから外向けと内向けの音を出す。
ドライブペダルを踏み込み、加速に応じて発生するRSサウンドは私には心地よく感じたが、好き嫌い、あるいは状況によってアウディ・ドライブ・セレクトでアジャストすることが可能である。
私自身は人工サウンドよりもせっかく基本的に静かなEVに乗っているのだから音楽を楽しみたいと思っている。幸いこのアウディe-tron GTにはバング&オルフセンのハイエンド・オーデオ・システムが搭載されており、もっぱらこちらを楽しんでいた。
また充電だがタイカンと同じ800Vのアーキテクチャーによって最大270kWのDC充電が利用でき、わずか5分で100kmの走行距離を稼ぐことが可能なことが実際に中継地点で確認できた。
アウディe-tron GT クワトロ、そしてRS e-tron GTともにすでにドイツでは予約注文が始まっており、目標とする主な市場はアメリカでおよそ50%、ヨーロッパは25%、残りの25%が日本を含む地域に振り分けられる。
わが国への販売スケジュールや価格は、4月6日にアウディジャパンから発表があったようにe-tron GT クアトロが1399万円、そしてRS e-tron GTが1799万円で、秋からデリバリーが開始される。
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みんなのコメント
こんなにデカくする必要はあるのかねえ~