生活の足となる「軽」は国内新車市場の4割を占めるなど、コスパのいいエンジン車の金城湯池だ。そのなかで、日産軽EVのサクラは累計4万台を突破。そこで、コスパ面からサクラと軽ガソリン車を比較しながら細かく分析してみた。
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカーWeb編集部、日産
発売から1年……日産軽EVサクラは累計4万台突破! 国内EVシェア4割を獲得できたワケとは
■サクラが国内EVのシェア4割を獲得した理由と今後の不安
2022年5月に登場した日産軽EVのサクラ。登場から1年で累計登録台数は4万台を突破し、人気を集めている
電気自動車は走行段階では二酸化炭素を排出しないため、環境性能の優れたクルマとされる。日本車の場合、現時点では電気自動車の車種が少ないが、最近は少しずつ増加してきた。
そこで注目される車種が軽自動車の日産サクラだ。2022年5月に発表され、その後に売れゆきを増やした。2023年1~5月の1カ月平均届け出台数は3271台で、同じ日産の軽自動車、デイズの2870台を上回る。累計登録台数は4万台を超えた。
また日産では、小型/普通車サイズの電気自動車としてリーフも用意している。この登録台数は1カ月平均で1200台弱だ。サクラの売れゆきはリーフの3倍近くに達する。その結果、サクラの販売台数は国内で売られた電気自動車(乗用車)の40~45%を占める。まさにひとり勝ちの状態だ。
基本部分をサクラと共有した三菱の軽EV、eKクロスEV。三菱の販売力を考えるとサクラとほぼ同様の販売成績を残している
ちなみにサクラと基本部分を共通化した電気自動車として三菱eKクロスEVもある。2023年1~5月の1カ月平均届け出台数は896台だ。サクラの27%と少ないが、三菱の販売店舗数も日産の約26%だから、1店舗当たりの売れゆきはサクラと同程度になる。
■軽EVは戸建てに住むユーザーのセカンドカー需要が大きい
充電設備が必要なことから都市部よりも郊外、そしてその設置が比較的容易な戸建て住宅のユーザーニーズをうまくつかんだのがサクラ
サクラが多くのユーザーに購入される要因として、まず軽自動車としてのサイズが挙げられる。日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住み、自宅に充電設備を備えるのが難しい。充電設備を備えたマンションは、少数の新築物件にかぎられ、後付けは自治会などの許可を得る必要があって困難になるからだ。
そうなると充電設備を設置できて、電気自動車を所有できるのは、約60%の一戸建てに住むユーザーになる。一戸建ての比率が高い地域は主に郊外だ。都市部では、総世帯数の70~80%が集合住宅に住む地域も多く、一戸建ては少ない。
そして郊外は、都市部ほど公共の交通機関が多くないため、買い物などの日常的な移動にクルマを使うことも多い。そのために一戸建てに住む世帯は、都市部に比べると、複数の車両を所有する傾向が強い。
複数の車両を所有する場合、1台は長距離の移動にも使うミドルサイズやLサイズのファーストカーになる。もう1台は、街中の移動を考えて、軽自動車やコンパクトカーをセカンドカーとして所有することが多い。
このうち、電気自動車と親和性の高い用途は、街中で使うセカンドカーだ。電気自動車で長距離を移動するには、駆動用電池を大型化する必要があり、ボディが重くなってモーターもパワーアップせねばならない。そのために、さらに駆動用電池の容量を拡大して、価格も高まる悪循環に陥ってしまう。
■内外装の作りのよさもサクラ人気の秘密
サクラの作り込まれたインテリア。今までのような軽自動車っぽさがあまりなく、上質に仕上げられている
しかし、電気自動車をセカンドカーとして街中の移動にかぎって使えば、長距離を走る必要はない。遠方への外出にはファーストカーを使うからだ。
従来の電気自動車は、2009年に販売を開始した三菱i-MiEVを除くと、大半が3ナンバーサイズの普通車だった。リーフを含めて街中の移動で使うにはボディが大きく、ファーストカーとして長距離を移動する機能が求められ、そのためには駆動用電池の容量が足りないという批判が生じた。
これに対してサクラは、街中の移動に適した軽自動車として成立させたため、充電設備を設置できる一戸建てのセカンドカーとして急速に普及した。
サクラでは、内外装も人気の秘訣だ。特に外観のフロントマスクは、上級電気自動車のアリアに似ている。上質感があり、遠方から見ても電気自動車のサクラだと識別できる。インパネやシートなど、内装の作りもていねいだ。
しかも電気自動車は、モーターの反応が機敏で滑らかさもあり、ノイズは小さい。上質な内装との相乗効果で「小さな高級車」の気分も味わえる。このようなガソリンエンジンを搭載した軽自動車とは異なるサクラならではの魅力も、販売が好調な理由だ。
■総額で補助金の占める割合が多いサクラ
サクラの場合、Xグレードなら国からの補助金55万円だけでも全体の金額での22%に達する。東京都在住なら、そこからさらに55万円が上乗せされる
価格と補助金のバランスもある。サクラの価格は、実用装備を充実させた「X」が254万8700円、運転支援機能のプロパイロットやインテリジェントアラウンドビューモニターなどを標準装着する上級の「G」は304万400円だ。
リーフで売れ筋になる「X・Vセレクション」(駆動用電池容量は40kWh)は431万8600円だから、サクラは軽自動車とあって、Xなら価格がリーフX・Vセレクションよりも約177万円安い。
ところが、経済産業省による補助金の交付額は、サクラは全車が55万円とされ、リーフX・Vセレクションの78万円と比較して23万円しか違わない。リーフの価格に占める補助金の割合は18%だが、サクラXでは22%に達する。
そしてサクラXの価格から経済産業省による補助金額を差し引いた実質価格は199万8700円だ。ガソリンエンジンを搭載する日産の売れ筋軽自動車、ルークスハイウェイスターGターボの205万7000円を下回る。しかも動力性能は、モーター駆動の効果により、サクラのほうがパワフルだ。
さらに電気自動車の補助金は、経済産業省とは別に、地方自治体からも交付を受けられる場合がある。交付額は自治体によって異なるが、東京都はサクラに55万円を交付している(自動車メーカー別の上乗せ補助額を含む)。経済産業省と合計すれば110万円だから、サクラXが実質約145万円で手に入る。日産デイズのベーシックなXに近い価格だ。
東京都千代田区になると、電気自動車には国や東京都とは別に20万円を交付しており、これも加えると補助金総額は130万円だ。サクラXが実質125万円になる。
このように電気自動車に交付される補助金は、車両価格をほとんど考えていない。安価な車種ほど、価格に占める補助金の割合が増える。サクラXのように、最大値では、半額以上が補助されて格安で購入できるのだ。このような補助金のカラクリも、サクラの売れゆきを押し上げた。
■税金投入前提の補助金自体が著しく不公平な面も
EV補助金の恩恵にあずかれるのは戸建てに住むユーザーか、社屋を持つ法人にほぼかぎられてしまう。このあたりは税金投入の公平性にやや問題ありか(写真はリーフ)
ただし、前述のどおり電気自動車は、一戸建てに住んでいるか、社屋のある法人でないと購入しにくい。誰でも買える商品ではないのに、税金を使って多額の補助金が支払われている。集合住宅に住んでいたり、あるいはクルマを所有しない人にとっては不公平に感じるだろう。
補助金の交付方法にも問題がある。今のように国と自治体がバラバラに交付していると不公平が生じるから、連携して地域格差を是正することも大切だ。
そして補助金は長期間にわたって続くものではない。次第に交付額が下がって廃止に向かうから、今のように補助金に依存した状態が続くと、終了した時に電気自動車の売れゆきが大幅に下がる。電気自動車の価格を根本的に割安に抑えることも大切だ。
それでも日本で電気自動車を普及させるには、軽自動車のサイズが最も効果的だ。今後も日本では軽自動車の電気自動車がたくさん登場して、多くのユーザーに愛用されるだろう。軽自動車の新車市場に占める販売比率は今でも40%近いから、電気自動車の普及によって50%を超えるかも知れない。
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みんなのコメント
つまり、補助金終わったら終わり。
もう一度EVに…て人が、はたして何割か…