今年も猛暑の夏がやってくる。夏は、クルマのバッテリーにとって厳しい季節。カーエアコンの常時使用が、バッテリーを消耗させるからだ。
エアコンで消耗しているバッテリーにさらに負担をかけてしまうのが、アイドリングストップ。アイドリングストップ搭載車は、夏の暑さの中では、エアコンとアイドリングストップという2重の負担を、バッテリーに強いることになる。
夏はバッテリーに厳しい季節!!「アイドリングストップ」はもうずっとオフのほうがお得ではないか
アイドリングストップ搭載車のバッテリーは、アイドリングストップ非搭載車のバッテリーよりも高く、交換サイクルも早い。CO2排出量も気にしなければならないのだが、安くないバッテリーに負担をかけて交換頻度がさらに早まるくらいなら、燃費を多少犠牲にしても、夏はアイドリングストップはオフにしておいてもよいのではないだろうか。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Sock_ tarou230
写真:TOYOTA、Adobe Sock、写真AC
アイドリングストップでのCO2削減効果は限定的
最初に、今回取り上げるのは、純ガソリンエンジン車のアイドリングストップ機構であり、ハイブリッド車に搭載されるアイドリングストップ機構ではないことを、お伝えしておく。
冒頭で触れたように、アイドリングストップ搭載車のバッテリーは、アイドリングストップ非搭載車用のバッテリーよりも、高性能であることが求められるため、1.5倍ほど高価だ。また交換サイクルも早く、アイドリングストップ非搭載車のバッテリー交換サイクルが通常「3~4年に1度」という程度であるのに対し、アイドリングストップ車は、多くの場合「18か月または24か月」と、おおよそ、これまでの「2分の1」程度の寿命。それだけ、アイドリングストップはバッテリーに負担がかかるのだが、夏の過酷な環境で酷使されることで、バッテリーの劣化はさらに早まってしまう。
ここで、アイドリングストップによるおおよそのCO2の削減効果を計算してみよう。アイドリングによる燃料消費量は、一般的な2.0リッタークラスのエンジン車の場合で、10分間で130mlほど。1時間だと780ml、ガソリン代に換算すると1時間あたり125.6円(2023年6月上旬時点のレギュラーガソリン全国平均161円/Lで算出)と、アイドリングストップによるCO2削減効果は「ゼロ」ではないものの、「高い」ともいい切れない。
昨今の物価高騰のなか、バッテリーの交換頻度がこれ以上早まるのは、お財布に厳しい。また、猛暑の日中に(ガソリン車で)アイドリングストップ機構が働いてしまうと、カーエアコンのコンプレッサーを作動させることができずにエアコンはストップし、強制的に送風モードとなる。信号待ちなどのほんのわずかの時間であっても、厳しいときは厳しい。
アイドリングストップ機構によって、ガソリン消費量はたしかに軽減されるが、バッテリー交換費用を考慮すると割高になってしまう(PHOTO:Adobe Stock_ varts)
自動車メーカーも、搭載を見送り始めた
ご存じの人も多いと思うが、アイドリングストップを率先して採用してきたトヨタは、近年、一部のガソリン車において、アイドリングストップ機構の搭載をやめている(搭載しているクルマもある)。ヤリスの1.5Lガソリン車、カローラ1.8Lガソリン車、RAV4、ハリアーの2.0Lガソリン車、などだ。
アイドリングストップ機構の搭載をやめた理由について、以前、トヨタ広報担当に取材したところ、「(燃費やCO2といった環境性能で)充分に競合性があることと、アイドリングストップ搭載車であっても、ユーザーが機能を停止させているケースが多い。」とし、「(ガソリン車へのアイドリングストップ機構搭載は)今後も採用しない方向で進めている」ともしていた。
ただ、トヨタ以外の国産メーカーでは、純ガソリン車のほとんどにアイドリングストップ機構が搭載されている。やはりわずかであっても、アイドリングストップによるCO2削減効果に期待したい、という考えなのだろう。
トヨタは、ランクル、プラド、RAV4、ハリアー、ノア/ヴォクシー、カローラ(セダン、ツーリング、クロス)、ヤリス、ヤリスクロス、C-HR、ハイエース、GR86の純ガソリン車でアイドリングストップを搭載していない
夏場はオフにしておいてもよいのでは??
コスト面に関していえば、アイドリングストップをオンにしておくことでバッテリーの劣化が早まるため、夏だけでなく1年を通して、オフにしておいたほうがお得。エアコンを酷使する夏であればなおさらのことだ。
アイドリングストップをオフにすることは、なんだか環境に悪いことをしているような気もするが、CO2排出削減の面で考えても、クルマが排出するCO2だけを考えていればよいのか、という疑問がある。繰り返しになるが、アイドリングストップ車用のバッテリーは高価かつ、(アイドリングストップをオンにしていると)寿命が短い。高価であることは環境保護のためならばと目をつぶったとしても、高性能なバッテリーを高頻度で交換する必要があることは、環境負荷に繋がるのではないだろうか。
今後は、ハイブリッド車が主体となり、純ガソリンエンジン車は一気に減っていくだろう。コスト命だった軽自動車も、今後は電動化が一気に進むはずで、本稿でとりあげた純ガソリン車向けのアイドリングストップ機構は、いずれ役目を終えていくと考えられる。そして電動化されるすべてのクルマたちには、アイドリングストップ機構が標準搭載となっていくというのが、今後の流れではないだろうか。
環境負荷を考えても、アイドリングストップが正義なのかは微妙。ただ純ガソリン車のアイドリングストップはいずれ役目を終えていく(PHOTO:Adobe Stock_Daniel)
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みんなのコメント
断言されてるのだから メーカーは完全オプションにして
欲しい人だけに付けた方が良い
燃費を無理やり上げようとこう言う手を使うのもやめましょう