現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 旧車に手厚い欧州メーカーと厳しい日本! 欧州がパーツを廃番にしない理由は「オーナーに優しいから」ではなかった

ここから本文です

旧車に手厚い欧州メーカーと厳しい日本! 欧州がパーツを廃番にしない理由は「オーナーに優しいから」ではなかった

掲載 48
旧車に手厚い欧州メーカーと厳しい日本! 欧州がパーツを廃番にしない理由は「オーナーに優しいから」ではなかった

 この記事をまとめると

■最近は日本車メーカーでも旧車のパーツ復刻をするサービスが浸透してきた

「気むずかしい」「エンジン始動すら大変」 旧車乗りだけが味わえる「それでも愛すべき」キャブレターの魅力6つ

■それでも国産旧車のパーツが復刻されるのはほぼ人気モデルに限られている

■旧車へのサポートをブランディングと捉え、全メーカーに廃番パーツ復刻を実施してもらいたい

 廃番パーツ復刻はコストや職人の引退など苦労が多い

 モノを大事に使うという美徳がないがしろにされて久しい日本ですが、旧車好きという温かくも尊い気持ちを持った人々は大好きなクルマを後生大事にしているかと。また、旧車オーナーの熱望を汲み取って、パーツを復刻して再販するメーカーもちらほらと現れている今日この頃です。

 愛車のパーツが廃番となり、泣く泣く手放さざるを得なかった方や、パーツ供給が心配で旧車に手を出せなかった方にとっては嬉しいニュースに違いありません。また、パーツの復刻にいたるまでの苦労や困難といったメーカーのエピソードは、旧車オーナーでなくともクルマ好きなら胸アツとなること請け合いです。

 そもそも、復刻パーツやヘリテージパーツと呼ばれるものとは、新車発売から時を経て、廃番となってしまったパーツを再生産したもの。一般的にメーカーは、発売後に部品のストックをしておく期間が法律で定められており、これを過ぎると「在庫あるだけ」となってしまうのが普通です。が、発売からかなりの期間を過ぎても現役で走ってるクルマや、古くなってもファン(オーナー)が数多く存在しているクルマにとって部品の廃番は「死刑宣告」に等しいもの。そこで、国内でもいくつかのメーカーが、そうした車種の重要部品やニーズの多いパーツを復刻する動きが活発化してきたわけです。

 たとえば、2019年からスタートしたGRヘリテージパーツプロジェクトでは、40系ランクルや2000GT、あるいは70/80系スープラの補給部品の一部を生産、発売しています。40のランクルは1960年代のクルマですが、国内外を問わずいまだ現役として活躍しているタマも数知れません。とくに海外は車検制度のようなものが日本とは大いに異なるため、50年くらい前のクルマだってブイブイ言わしてますからね。

 とはいえ、すべての部品が再生産されているわけではありません。走る・曲がる・止まる性能に関わる重要パーツの供給に的を絞っていることも留意しておくべきでしょう。

 なぜ、すべてのパーツが再生産できないかというと、まずはコストがかさむことが大問題。たとえば、現在ではあまり見ることがなくなったウェザーストリップ(窓枠などの防水・防振に使うゴム)などは当時の金型がすでに廃棄されていたりして、再び金型から作ったとすると目玉が飛び出る値段になると聞きました。あるいはコストを度外視したとしても、当時の製作技術を知る方がすでに引退していたり、製作機械がない、同じ材料が手に入らないなど、ネガをあげればきりがありません。

 また、クルマメーカーが掛け声をかけたとしても、外注の部品メーカーにも都合があるわけで、もろ手を挙げて「それ復刻だ!」というケースは意外と少ないのかもしれません。

 旧車へのサービスをブランディングとして利用する欧州メーカー

 それゆえ、復刻パーツの裏側にはクルマ好きでなくとも胸アツなストーリーが詰まっているのです。例をあげたらきりがないのですが、いまでも人気の初代ロードスターでは当時の純正タイヤの復刻(!)が行われています。とはいえ、ご多分に漏れず当時の金型やデータはほとんどなく、新車当時のタイヤを採寸、計測しつつ、最新のコンパウンド、レシピでもって「再現」にこぎつけています。それでも、幸いなことに当時のエンジニアらが結束し、乗り心地やドライブフィールまで再現できたというストーリー、オーナーでなくとも胸打たれるのではないでしょうか。

 一方、日産では金型を使うことなくボディパネルの少量生産に特化した技術を実現しています。R32型GT-Rのリヤパネルでデモ動画がありますが、この「対向式ダイレス成型」技術は金型への投資よりはるかに低コスト、環境負荷の低減といったメリットも兼ね備えており、将来ますますの応用が期待されています。

 もちろん、こうした復元パーツは国内メーカーだけでなく、海外のメーカーもやってるところはやっているのです。フェラーリやランボルギーニがレストア部門を設けてからずいぶん経ちますが、重要部品はもちろん、バッヂやレンズといったコスメティックパーツにいたるまでリプロダクション、再生産が行われていることはあまり知られていません。

 また、ポルシェやメルセデス・ベンツは、パーツを廃番にするケースが比較的少ないかと。仮に欠品していたとしても「オーダーの数がまとまれば再生産」とアナウンスされており、無下に死刑宣告はされない模様。もっとも、両社ともに古くなると「クラシック認定」とかなんとか設定されて、部品の価格がいきなり値上げされたりしていますけどね(笑)。

 彼らにとって、自社のクルマが古くなっても元気に路上を走っているというのは重要なブランディングにほかなりません。高性能、高品質というだけでなく、メーカーの手厚いサービスや、真摯な姿勢を示すのに旧車は絶好のモデルというわけです。むろん、こうした考え方は海外メーカーだけでなく、国内でも浸透し始めていることはたしかでしょう。

 これまではオーナーズクラブに入って、少ない情報から「どうにかこうにか」手に入れていたパーツが、公式サイトにカタログ化されていたり、リクエストコーナーが設けられるなど、旧車の部品環境はわずかながらも進歩を遂げているのです。

 やっぱり古いクルマが元気よく、そしてオーナーが颯爽と走っているのを目にするのはクルマ好きとしてはじつに喜ばしいこと。メーカーのブランディングに加担するわけではありませんが、復刻パーツの効果は絶大! 実施していないメーカーは、うかうかしてチャンスを逃すことのないよう、一刻も早く「復刻パーツ窓口」を設けることを切に願うものです。

こんな記事も読まれています

ポルシェ 新型「タイカン」六本木ヒルズで初公開!大谷翔平選手とのコラボキャンペーンも
ポルシェ 新型「タイカン」六本木ヒルズで初公開!大谷翔平選手とのコラボキャンペーンも
グーネット
まるで走りはスーパーサルーン! アストン マーティンDBX707へ試乗 タッチモニター獲得で誘引力UP
まるで走りはスーパーサルーン! アストン マーティンDBX707へ試乗 タッチモニター獲得で誘引力UP
AUTOCAR JAPAN
なぜホンダ新型「ヴェゼル」は純正のタイヤ銘柄が増えた? 辛口モータージャーナリストがFFと4WDの走りの進化を検証します
なぜホンダ新型「ヴェゼル」は純正のタイヤ銘柄が増えた? 辛口モータージャーナリストがFFと4WDの走りの進化を検証します
Auto Messe Web
マクラーレン育成ボルトレートが初優勝。マシントラブル相次ぐ一戦に/FIA F2第7戦レース2
マクラーレン育成ボルトレートが初優勝。マシントラブル相次ぐ一戦に/FIA F2第7戦レース2
AUTOSPORT web
マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキの「認証不正」どうなった?  調査結果を国交省が公表! マツダは同日にコメント発表
マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキの「認証不正」どうなった? 調査結果を国交省が公表! マツダは同日にコメント発表
くるまのニュース
クルマの「怒り顔」 20選 意外と好印象? 不機嫌そうに見えるデザイン
クルマの「怒り顔」 20選 意外と好印象? 不機嫌そうに見えるデザイン
AUTOCAR JAPAN
アウトバーンは130キロで走行しても遅くて流れを止めることも!? 安全かつスムーズな走り方をドイツ在住ジャーナリストが解説【みどり独乙通信】
アウトバーンは130キロで走行しても遅くて流れを止めることも!? 安全かつスムーズな走り方をドイツ在住ジャーナリストが解説【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
2024年F1第11戦オーストリアGP予選トップ10ドライバーコメント(1)
2024年F1第11戦オーストリアGP予選トップ10ドライバーコメント(1)
AUTOSPORT web
2024年F1第11戦オーストリアGP予選トップ10ドライバーコメント(2)
2024年F1第11戦オーストリアGP予選トップ10ドライバーコメント(2)
AUTOSPORT web
乗るなら目立つブラックキャブ! 石油王が好んだ特注オースチン・タクシー(1) ベースは定番のFX4
乗るなら目立つブラックキャブ! 石油王が好んだ特注オースチン・タクシー(1) ベースは定番のFX4
AUTOCAR JAPAN
ペニンシュラ・ホテルが現オーナー 石油王が好んだ特注オースチン・タクシー(2) 日産リーフの部品でEV化
ペニンシュラ・ホテルが現オーナー 石油王が好んだ特注オースチン・タクシー(2) 日産リーフの部品でEV化
AUTOCAR JAPAN
ブリヂストン 無敵となるか?!GR86/BRZ Cup用ハイグリップスポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」を発売
ブリヂストン 無敵となるか?!GR86/BRZ Cup用ハイグリップスポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」を発売
Auto Prove
「え、パンタグラフついてる!?」超巨大“フル電動ダンプトラック” 鉱山で世界初実験 日立建機
「え、パンタグラフついてる!?」超巨大“フル電動ダンプトラック” 鉱山で世界初実験 日立建機
乗りものニュース
全長4.3m! BMW新型「小さな高級車」世界初公開で反響多数!? 「デザイン好き」「丁度いいね」の声!300馬力&4WDの“超スポーティ仕様”も!?「1シリーズ」独に登場
全長4.3m! BMW新型「小さな高級車」世界初公開で反響多数!? 「デザイン好き」「丁度いいね」の声!300馬力&4WDの“超スポーティ仕様”も!?「1シリーズ」独に登場
くるまのニュース
「いのち短し恋せよ乙女」「闇街道地獄花」「人妻殺し」って漢感がシブすぎる! デコトラの「名文句」にはオーナーの人生観が溢れていた
「いのち短し恋せよ乙女」「闇街道地獄花」「人妻殺し」って漢感がシブすぎる! デコトラの「名文句」にはオーナーの人生観が溢れていた
WEB CARTOP
愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(前編)
愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(前編)
GQ JAPAN
セレンス 車両用AI「セレンスChat Pro」をフォルクスワーゲンのIDAに組込み導入
セレンス 車両用AI「セレンスChat Pro」をフォルクスワーゲンのIDAに組込み導入
Auto Prove
俳優・駒木根葵汰の「今、気になるバイクに乗りたい!」──Vol.1 ホンダ・ダックス125
俳優・駒木根葵汰の「今、気になるバイクに乗りたい!」──Vol.1 ホンダ・ダックス125
GQ JAPAN

みんなのコメント

48件
  • 部品の在庫や金型も資産なので、あんまり売れてないものを過剰に持ってると税金もかかるので、販売数を予測して見越し生産のうえ一定期間でやむを得ず廃棄・・・も多いんだよね。
    部品なるべく出してあげたいけど、そういう難しい事情も。
  • メーカーより目の敵にして難癖つけては重量税とかたかる政府のほうが厳しいというかヒドい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村