1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「2代目ミラージュ ターボ(C13A)」だ。
三菱 ミラージュ 3ドアHB 1600GSR-Tターボ(C13A型・1983年10月発売)
先代のミラージュII 1400ターボで国産最小ターボを登場させて気を吐いた三菱だったが、ミラージュは1983年(昭和58年)のフルモデルチェンジで1.4Lは消滅した。だが、新たに1.6LのG32B型ターボを搭載した1600GSR-Tターボがラインアップの頂点に立った。ちなみに、車名はミラージュIIから元のミラージュに戻った。
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1600GSR-Tターボに搭載されたエンジンの正式呼称「サターン 1600エレクトロジェットECIターボ」からもわかるように、G32B型は吸気バルブの脇に差し込んだ超小径のジェットバルブによる強力なスワール(うず)で希薄燃焼を実現させ、昭和53年排出ガス規制をクリアした浄化システムのMCA-JET(ジェット)を装着している。
エンジンの基本機構はシンプルなクロスフローの2バルブSOHC。これに小型ターボチャージャーと電子制御燃料噴射装置のECIを組み合わせ、7.6の圧縮比から120psの最高出力と17.5kgmの最大トルクを発生した。とはいえ、ミラージュの5カ月前に登場していたAE86レビン/トレノが自然吸気で130psを発生していたから、1.6Lターボとしては非力な印象は拭えない。
しかし、実際に走ってみるとロングストローク(ボア76.9×ストローク86.0mm)による強力な中速トルクとAE86より60kgも軽い880kgの車重により、思いのほか活発な動力性能を示した。実際、モーターマガジン誌の実測テストでは、最高速度は182.72km/h、0→400m加速は15.89秒を叩き出しており、最高速度ではAE86レビン/トレノより劣ったものの、0→400m加速は0.25秒速いタイムで走り切ったのだ。
これにはデュアルモードゴムブッシュの採用やジオメトリーの見直しなどでサスペンションの形式を変えずに熟成を図り、グリップ力を高めたことも効いている。センターベアリングを介した等長ドライブシャフトでハイパワーFFにつきもののトルクステアを抑えて、急発進時の方向安定性を向上させたのも効果的だった。
コーナリングに対しては、前後スタビライザーの装着やターボ専用のスプリング&ショックアブソーバーのチューンが施されるなど、カタログスペックに現れない改良でトップクラスの実力を備えていたのは確かだ。
先代のようなエアスクープといった一目でターボとわかるアイテムは装着されていないが、ラリーの三菱らしい堅実な速さが楽しむことができた。
三菱 ミラージュ 3ドアHB 1600GSR-Tターボ(1983年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4005×1635×1360mm
●ホイールベース:2380mm
●重量:880kg
●エンジン型式・種類:G32B型・直4 SOHCターボ
●排気量:1597cc
●最高出力:120ps/5500rpm
●最大トルク:17.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70SR13
●価格:136万円
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