モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツweb。両者がコラボしてお届けするweb版『Racing on』がスタートしました。
web版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。第5回のテーマは日本一速い男が世界選手権戦を制したマシン、ニッサン・シルビア・ターボCニチラです。
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F1デビュー戦で9位獲得の角田裕毅の“先輩”は、あの総監督!?
FIA世界耐久選手権(WEC)において、2018~2019、2019~2020シーズンと2シーズン連続で日本人が搭乗クルーのひとりとして、ドライバーズタイトルを獲得している。
近年ではトヨタとともに世界選手権において、日本人がチャンピオン獲得や選手権戦優勝を果たす機会が多くなってきたが、1980年代、グループCカーの全盛期にはまだ日本メーカーの走らせるマシンの戦闘力が充分でなかったこともあり、日本人の世界選手権優勝というのは“夢”の出来事であった。
そんな時代に日本一速い男、星野一義がその夢を豪雨の富士スピードウェイで行なわれたWEC JAPANにおいて達成する。
その時の愛機がニッサン・シルビア・ターボCニチラ(マーチ85Gニッサン)なのだ。
日産は、1983年から本格的にスタートしたグループCカーレースによる全日本耐久選手権を国産およびマーチ製シャシーにLZ20Bというスーパーシルエットレースでも使われていた直4ターボを組み合わせて戦っていた。
しかし、それでは当時世界でも国内選手権でも強さを発揮していたポルシェ勢に歯が立たず、さらなる戦闘力アップが望まれていた。
そんななか1984年に設立されたばかりだったニスモ、日産はアメリカIMSAシリーズで実績のあったエレクトラモーティブ製の3.0リッターV6ターボエンジン、VG30に着目した。
これをグループCカー向けに転用、新規導入したマーチ85Gのシャシーに組み合わせ、1985年途中より全日本選手権にデビューした。
このマーチ85G+VG30ターボのうち、星野/萩原光/松本恵二組のマシンが、ニッサン・シルビア・ターボCニチラという車名でエントリーしている。
デビュー後はエンジンの性能が向上した分、予選では上位につけることが多くなったものの、やはり決勝でのパフォーマンス、信頼性に課題が残り、思うような結果が残せないレースが続いていた。
そして迎えた1985年のWEC JAPAN。シルビア・ターボCは予選でポールポジションは逃したものの、3番手という位置を確保。
決勝は豪雨と霧という悪コンディションとなり、レースは2時間または76周に短縮。最初の11周はペースカーランとなる事態に。そんな状況にヨーロッパから来日していたワークス勢、プライベーターポルシェ勢などが次々に撤退。
レースは星野の駆るシルビア・ターボCがリードする形でスタートした。星野はスタート後、2位以下をどんどんと引き離し独走体制に。途中給油のためのピットインを行なったが、路面状況を知っている星野のままで行くべきだとドライバーチェンジを行なわず、星野がひとりで2時間のレースを走破。日本人が初めて4輪の世界選手権戦で勝利を挙げた。
海外勢は撤退してしまい、日本チーム同士による争いとなってしまうというイレギュラーな状況であったものの、日本人が確かに世界に名を刻んだ瞬間だった。
国内選手権では未勝利だった日産が世界選手権でいきなり達成した快挙が、翌年以降、日産がル・マンへと挑戦するきっかけとなったのだった。
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みんなのコメント
海外勢が撤退した時点で、日本人の優勝はほぼ決まり。
水しぶきで見えなくなるから、前車に近寄れない。スタートで順位は固まり、淡々と周回数を重ねるのみ。
日本人初という感動は全く感じられなかった。