1996年のF1チャンピオンであるデイモン・ヒルが、レッドブルがセルジオ・ペレスと2年契約を延長したことについて考察。レッドブルとしては、マックス・フェルスタッペンを脅かす可能性のあるドライバーを起用したくはなく、その上チーム間のパフォーマンス差が縮まってしまったことで、最近のペレスは精彩を欠いているように見えるのではないかと語った。
レッドブルは6月初め、ペレスとの契約を2年延長したことを発表。これにより、新レギュレーションが導入される2026年まで、レッドブルが現在のフェルスタッペンとペレスのラインアップを維持することが”確定”した形となった。
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ただ今季のペレスは低迷。開幕から5戦目の中国GPまでの間に2位3回、3位1回と合計4回の表彰台を獲得したが、その後は表彰台に届かないレースが続いており、マクラーレンやフェラーリの躍進もあって、第10戦スペインGPを終えた段階ではドライバーズランキング5番手まで後退している。そのためレッドブルとしては、ペレスと契約を延長するのではなく、今季RBで安定した成績を残している角田裕毅をはじめ、他のドライバーを起用するべきだったのではないかとの声が根強い。
ただ1996年のF1チャンピオンであるデイモン・ヒルは、F1の公式ポッドキャストに出演した際に、このレッドブルの決断に一定の理解を示した。
「誰を起用するのかという選択肢を考えると、彼はチームを勝てるチームにするために必要となるほど、すごいドライバーではない。彼がマックスほど素晴らしいドライバーではないのは明らかだ」
ヒルはそう語った。
「でもチームとしては、マックスとの契約を続けたい。そしてマックスはチェコ(ペレスの愛称)に満足している。チェコはマックスに次ぐ2位にならなければいけないだけなんだ」
「ただ問題は、今のF1は、パフォーマンス差が非常に小さいということだ。ラップタイムを見ればそれが分かる。差はとても小さいんだ。グリッドでチェコが苦しむことになったのは、その差をもっと埋めることができるドライバーが、他にいるからだ」
「彼はもっとうまくやる必要がある、でももちろん、マックスよりも予選で速いドライバーは、レッドブルとしても欲しくない。マックスとしても、予選で彼を上回る可能性のあるチームメイトを求めていないんだ」
フェルスタッペンは、決勝強いのはもちろんだが、予選でも無類の強さを発揮している。そんなフェルスタッペンに予選で勝てるドライバーなどいないのでは? そう尋ねると、ヒルは次のように語った。
「そう思うかい? じゃあ、いくつか候補を挙げてみようじゃないか」
「ルイス(ハミルトン/メルセデス)は今年、少しばかり優位性を失ったと思う。しかしマックスと戦ったとして、再び優位性を取り戻せないとは思わない。フェルナンド(アロンソ/アストンマーティン)も同様だ。確かに歳を重ねれば、鋭いスピードは削がれていくだろうと思うけどね。それからジョージ(ラッセル/メルセデス)はどうだ? シャルル(ルクレール/フェラーリ)は?」
「マックスを驚かせたり、彼が嫌がるようなプレッシャーをかけられる候補となりそうなドライバーは、他にもまだいる。でもそういう人たちは、他のチームのシートを手にしている。だから、レッドブルには来ないだろうね」
■角田とローソンは、ペレス以上にフェルスタッペンを脅かす存在?
それでも、角田やローソンなど、レッドブル傘下にも才能溢れる若いドライバーはいる。そんな彼らを選ばなかったのは、レッドブルがフェルスタッペンに対し、将来像を明確に示したかったからではないかと、ヒルは言う。
「マックスにチームに留まり、将来どうなるかということを確信してもらいたいと思うなら、チェコと契約するのは理に適っている」
そうヒルは言う。
「チームはマックスに、『これが未来の姿だ。すごい速いチームメイトが突然現れるということを、心配する必要はないんだ』と説得することができるからね」
「リアム・ローソンがチームメイトとなった場合、彼は自分の立場を確立しなければいけない。F1にデビューして、ただ忠実なナンバー2になるというわけにはいかないんだ。だから、マックスにとっては驚異になる可能性がある。一方でユウキはここまで、素晴らしい仕事をしている。でも、レッドブルの最前線に立つというプレッシャーに耐えられるかどうか、現時点でそれは分からないんだ」
ヒル曰く、現RBのダニエル・リカルドなら、ペレスと同じような働きが出来る可能性があるという。しかしそのためには、まだまだやるべきことがリカルドにはあると、ヒルは語る。
「その可能性はあるだろうね。でも彼は、もっと頑張らなきゃいけない。ジャック(ビルヌーブ/1997年のF1王者)が、リカルドのことを厳しく批判したようにね」
「彼にパフォーマンスはあるのだろうか? リカルドがF1に残る正当性があるのだろうか? 我々は皆んなそう思っていたように、彼(ビルヌーブ)もそう思っていたんだ。私はその時、彼と同じように残酷な言葉を口にすることはできなかったけどね」
「これはチェコについても同じことが言える。彼らはもう少しうまくやる必要があるだけだ。そのためにどうすればいいかは分からないけどね。でも、本当に難しい状況にあるということは、彼も分かっているはずだ」
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