懐かしの派生モデルを振り返る
今回の記事のキッカケは、セリカ・カムリのカタログが出てきたことだった。セリカ・カムリは1980年1月、当時のトヨタカローラ店で扱うセリカの4ドアセダン版として登場したモデル。ただしその実態はセリカというよりもセリカの兄弟車、カリーナ・セダンの顔違いだった。
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トヨタ・セリカ4ドア・カムリ
それまでトヨタカローラ店のセダンの持ち駒はカローラ・セダンが中心……というか最上級だったが、その上位モデルを設定するために投入されたのが、セリカ・カムリ(正確にはセリカ4ドア・カムリ)だったのだ。のちにセリカのノッチバック版のカナダ仕様が、コロナ・クーペとして日本市場に投入されたことがあったが、手法としては同じと考えていい。
今にして思えば、あのトヨタ2000GTや初代セリカXXと同じ“T字型”デザインのフロントグリルは、じつにトヨタ車を象徴するマスクでよかったではないか! と思う。だが、発表時には確か当初はカリーナのようにDOHC搭載のGT系の設定がなく、大人しめのエンジンラインアップだったため、若かりし(!)当時の筆者の心にあまり響いていなかったようだ。
その証拠に手元にあるのは本カタログではなく、ふたつ折りのリーフレットとトヨタカローラ店の総合パンフレットのみ。だが、その総合……のほうには18R-GEU型搭載のGTの登場が紹介されており、前述のとおり「なるほど、GTはあとから追加されたのか」とわかる。“男30、GTアゲイン。”の見出しは、「このコピーを書いたのは誰だ、出てこい!」レベルだが……。
とはいえベースのカリーナセダンに対して、何となくより大人なキャラクターに差別化されたクルマではあった。
日産ローレルスピリット
大人の雰囲気といえば、日産ローレルスピリットもそう。何しろこのクルマのベースはサニーなのであった。
別にサニーを卑下する気持ちはまったくないが、車名からして、ローレルの精神とはいったい何事? と、当時、内心では思っていたことは確か。ただし実車は、なるほどローレルと見紛う(笑)ほどの立派な格子状のメッキのグリルが付き、訴求モデルはやはりローレル同様の2トーンのボディカラーを纏っていた。
内装もローレルといえばルーズクッション風のシートがおなじみだったが、さすがにそこまでは到達できなかったようだ。しかし、ドアトリムの一部にシートと同素材の表皮が貼られているなど、プチ豪華仕様。リヤウインドウに“パワーステアリング付”のステッカーが貼られていたりし、当時を忍ばせる(ローレルスピリットのカタログは昭和57年のもの。下はサニー)。
ホンダ・コンチェルト/ローバー400
さてもうひとつのペアは、ホンダ・コンチェルト(カタログは昭和63年)とローバー400だ。
この2車については筆者個人としては結構、好みのクルマだった。もともとはシビックとプラットフォーム共通だからコンパクトなセダンということになるが、何しろセダンでありながら世のポピュラリティに迎合していないというか、わが道を行く的な個性がいぶし銀ともいうべき輝きを放っていた。
平たくいうとシブいセダンだったというべきか。ほぼ全周にガラスを回したキャビンは明るく上品で、シートもローバー400のほうは本革を標準とし、さらに居心地のよさが味わえた。また何といってもタオッ! とアタリと振るまいが穏やかな乗り味は、実はイギリスのローバーはもともと、コンチェルトにとっては最大の美点で、ストロークする気のないような当時のシビックとは大きな差をつけていた。この時期には、ホンダとローバーの共同開発車がほかにもあったが、いずれもジェントルな仕上がりが魅力だった。
マツダ・カペラ/フォード・テルスターII
そのほか、やや地味ではあるがマツダ・カペラとフォード・テルスターIIも取り上げておこう。カペラは1994年に登場した6代目で、5代目(1994年まで)との間が空いての登場だった。その理由は5代目のあとに、例のマツダ5チャンネル構想の一環で登場したクロノスなる新規車種があったからで、3ナンバー化したクロノスの不評を受け、急遽仕立てたのがこの5ナンバーのカペラだったという訳だ。
そういう経緯を聞いてのことだったから、当時はやや切ないクルマにも見えたが、今見ると普通の極みのようなスタイリングは決して悪くない。ついでながら乗り味、走りっぷりも、極めて普通だった記憶がある。
で、書き忘れそうになったが、このカペラには当時のマツダ車のしきたりに則ってフォード版があった。そちらの車名はテルスターIIといった。正直に言うとこのクルマが存在していたことがほとんど記憶になく、しかし手元にカタログがあるということは、実在していたのは間違いないのだろう。
カタログ写真で見較べる限り、カペラとのデザイン上の違いはメッキのフロントグリルとホイール、以上といったところだが、上級モデルのフロントストラットタワーバー、リヤのスタビライザーなどは、カペラの上級モデルでも装着されていたから、メカはエンジン(1.8Lと2L)も含め共通だったはずだ。当時のオートラマ扱いのフォードのバッジがつくモデルであっても、日本市場では5ナンバー車を望む声があったということなのだろう。
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