現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > bBやS-MX…「若者向けのクルマ」とはなんだったのか!?

ここから本文です

bBやS-MX…「若者向けのクルマ」とはなんだったのか!?

掲載 更新 16
bBやS-MX…「若者向けのクルマ」とはなんだったのか!?

 日本自動車界の最盛期といっても過言ではない1990年代後半から2000年代初頭にかけて。

 この時期、いま考えるとちょっと不思議なクルマが数多く登場した。「若者向け」と銘打たれたハイルーフ型ワゴン車だ。代表格は、ホンダS-MXやトヨタbB。なんでこの時期、こうした不思議なコンセプトのクルマが登場したのか。そもそもどんなクルマだったのか。開発背景や当時の雰囲気を、あの頃を知る自動車ジャーナリストに伺った。

ホンダ系カスタマイズ&チューニングブランド モデューロと無限の中古車で狙う!

文/片岡英明 写真/HONDA、TOYOTA

【画像ギャラリー】カクカクしたデザインが特徴のホンダS-MX/トヨタbBを見る

■若者受けを狙って開発されたハイルーフ型ワゴン車

1996年11月、クリエイティブムーバー第4弾として登場したホンダS-MX。デビュー当時は月間1万台近く売れたが徐々に失速

 1990年代前半までの時期、日本はバブルの後押しを受け、元気いっぱいだった。クルマが売れているから余裕が生まれ、イケイケの風潮が強まっている。

 その頃、ユーザーの嗜好も変わってきた。アウトドアブームやウインタースポーツのブームが到来したから、クルマの好みもスポーツクーペからRVにシフトしている。パジェロなどの4WDやみんなが快適に移動できるエスティマなどのミニバンが市民権を得て、セダンに代わってファミリーカーになった。

 背の高いクルマに違和感がなくなると、クラスとジャンルを飛び越えて空いているところに個性の強い「若者向けの変わり種モデル」を送り込むメーカーも増えていった。今でいう「クロスオーバーカー」だ。

 このジャンルとマーケットは日本が開拓し、定着させた。イケイケの時代に若者を中心としたエントリーユーザーに向けて企画され、開発された「変わり種」は90年代半ばから登場する(なおメーカーの狙いどおり実際に若者がそういうクルマを買ったかというと、その限りではない)。

 RVがブームになったことから分かるように、現実的なライフスタイルが持てはやされている時代だ。背をちょっと高くし、見下ろし感覚の高めのアイポジションでルーズに運転するクルマに仕立てている。

 当時の自動車メーカーの開発者は、「若者向け」をそのように考えた。

 当然、マルチに使える十分なキャビンスペースと開放感を実現するために台形フォルムとし、デザインなども遊びゴコロが強い。若い人たちはカップルでドライブするだけでなく仲間とワイワイガヤガヤ楽しむのが好きだ。だから後席もそれなりに広く設計した。

 背の高いミニバンやSUVはコーナリングが得意じゃない。だが、スポーツクーペよりRVを好む若者たちは、パフォーマンスよりもデザインや感性を重視する人が多く、走りの実力は二の次と考えていた。スポーティさにこだわらない人たちが増えたことが、若者向けの変わり種モデルを定着させることにつながった。

 その代表が、ホンダが1996年11月に送り出したS-MXだった。ステップワゴンに続くクリエイティブムーバーの第4弾で、販売価格もリーズナブルだった。

■デートカーとして親しまれたホンダS-MX

ボディサイズは全長3950mm×全幅1695mm×全高1750mm。初代ステップワゴンをそのまま縮めたようなフォルム

フロント/リアともにベンチシートを採用。フルフラットに倒せば広大な空間が生まれる

 S-MXは全長を切り詰め、サードシートを取り去ったステップワゴンと言えるRVだ。ハードウェアやパッケージングの考え方はステップワゴンと同じである。だが、ターゲットはファミリーではなくカップルを中心としたパーソナル派の若者だ。だから乗車定員は4名と割り切ったし、前席はベンチシートとした。ドアも運転席側は1枚のワンツードアで、その気になればダブルデートみたいな使い方もできる。

 ステップワゴンと同じ2Lの直列4気筒DOHCエンジンは、ちょっとだけチューニングされ、ドライバーをいい気分にさせてくれた。また、標準仕様のほか、車高を下げ、サスペンションを引き締めた「ローダウン」を設定しているのも特徴のひとつだ。気持ちいい走りを満喫できる粋なローダウン仕様が、デビュー時の売れ筋となっている。

 これ以降、若者向けの変わり種モデルが続々と登場する。その多くはコンパクトカーで、キューブ、キャパ、ミラージュ・ディンゴ、ファンカーゴなどが増殖し、一大マーケットを築いた。

 2000年にはトヨタが初代ヴィッツをベースにしたバニング感覚のbBを、コンパクトカーの販売を得意とするネッツ店に投入している。コンパクトだが、ボクシーなスタイルが目を引いた。また、若者好みにサスペンションをライトチューンしていたから小気味よいドライブフィールを楽しめる。実際にはちょっとスポーティな街乗りグルマだったのだが、S-MXと同じように一時はヤングカップルご用達の人気車として持てはやされた。

■初代bBは初期受注が3万台を超えたヒット車

2000年に発売された初代トヨタbB。ボクシーなデザインと実用性の高さが受け、競合するS-MXを打ち負かした

 S-MXやbBはファッション感覚や流行に敏感な若者が飛びついている。ちょっとドレスアップしたり、カスタムして乗る若者も多かった。S-MXは最初の1年は月販1万台に迫る台数を記録する。

 bBはもっとすごく、初期受注は3万台を超えた。2001年6月には、さらに個性的なオープンデッキを送り込んだ。だが、bBの好調はS-MXを苦境に追いやっている。2002年春に生産を打ち切り、夏には市場から姿を消していった。

 bBは2005年秋に2代目にバトンタッチする。2代目はダイハツ製だったから、1年後にダイハツから兄弟車のクーが登場した。また、8年になるとスバルからデックスがデビューしている。季節商品だから廃れるのが早いと思われた。補助金が出ないために苦戦を続けたが、驚いたことに細々と販売を続け、16年夏まで生き延びたのである。流行り廃りの早い変わり種としては奇跡と言えるだろう。

ピックアップトラック風の外観をもつbBオープンデッキ。2001年追加、2003年生産終了と短命に終わった

■街中で見かけると思わず振り向いてしまう変わり種的存在

 間もなく生産終了から20年になるから、さすがにS- MXは街で見かけなくなった。が、bBの2代目は今でもたまに街中で見かけるし、中古車市場でも見かける。

 両車が若者を魅了したのは、小さくても強い存在感を放っていたからだ。ドレスアップして乗るのも楽しい。また、リーズナブルな価格設定も若者が飛びついた理由のひとつだ。1.3Lも出るなら120万円台から新車が手に入り、1.5Lのトップグレードでも160万円台だった。

2005年にフルモデルチェンジを実施した2代目bBは2016年まで販売され、ひっそりと姿を消した

 今、この価格だと軽自動車しか買えないだろう。それも廉価グレードに限定されてしまう。ベース車があれば、bBのような若者向けの洒落たハイトワゴンを生み出すことは難しくないだろう。ヤリスのプラットフォームやメカニズムを使い、スキンチェンジしただけで新しいクルマを誕生させることが可能だ。

 クルマ離れが叫ばれているが、今、面白いクルマを作れば若者は興味を持つはずである。しかも、初代アルトのようにリーズナブルな価格や衝撃的な低価格なら、若者じゃなくても欲しがると思う。かつてあった「若者向けジャンル」の「変わり種」モデルは費用対効果が大きく、うまく作れば起爆剤にもなる。 21世紀にふさわしい、新感覚のS-MXやbBの登場を心待ちにしたい。

【画像ギャラリー】カクカクしたデザインが特徴のホンダS-MX/トヨタbBを見る

こんな記事も読まれています

新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
ベストカーWeb
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
グーネット
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
AUTOSPORT web
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
グーネット
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
グーネット
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
AUTOCAR JAPAN
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
Auto Messe Web
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
月刊自家用車WEB
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
AUTOSPORT web
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
AUTOSPORT web
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
Auto Messe Web
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
AUTOSPORT web
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
乗りものニュース
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
WEB CARTOP
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
Merkmal
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
GQ JAPAN
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

16件
  • b Bはこちらではなく初代を出さないと正確ではないと思う。どちらもボクシースタイルで良かったですね、ホンダの方は走るチョメチョメと揶揄されてましたけど
  • 余計な物が付いていなかったから若者が手を出しやすかった。
    買った後は自分好みに仕上げていく楽しみもあった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.8199.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.5118.0万円

中古車を検索
S-MXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.8199.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.5118.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村