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【名車への道】’06 アウディA4 DTMリミテッド

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【名車への道】’06 アウディA4 DTMリミテッド

クワトロスポーツが手掛けた足回りはシャシーに合わせた最良セッティング

——「名車への道」で、探している車を見つけたとき、個人的に「なんでこれなんだろう? 」って思う車が結構あるんですよ。

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松本 本当にキミは(笑)。僕はちゃんとパフォーマンスやデザイン、レースでの戦歴、逸話、他にも実は天才的なエンジニアが設計してるとか、そういう部分で選んでいるんだけどな。確かに、独断と偏見の部分もあると思うけど、内容を知ったら誰でも「これは凄い!」ってなるモデルばかりだと思うよ。

——まあ確かに取材後には車の印象変わっていますからね。今回のA4 DTMリミテッドはまさにそういう車だと思うんです。ずっと探してましたが、ようやく見つけられましたね。

松本 いいでしょ? この車は2005年に登場した3代目のA4がベースでね。一般的にはシングルフレームのフロントグリルになったA4と言えば分かりやすいかな?

——この時代のアウディって車は素晴らしいからよく覚えていますよ。このDTMリミテッドはあまり覚えてなかったけど……。

松本 確かに忘れている人は多いだろうね。A4もこのモデルの先代(B6)あたりから真似したくてもできないクオリティの高さを手に入れたよね。

——そのあたりからアウディは加速的に品質が向上したんだって、松本さんは盛んに言っていましたよね?

松本 そう、別にアウディのスポークスマンではないけど、悔しいぐらいのクオリティでさ。当時、国産メーカーのエンジニアに会うたびに訴えていたよ。「もう少し国産車もなんとかなりませんか? 」ってね(笑)。まぁ、日本はデッドコピーのような物作りはしないし、コストと質感を天秤にかけて作っているんだけどね。

——他メーカーと比べても、品質の違いは明らかでしたもんね。

松本 そうだね。クオリティに関して言うと、この当時のVWグループは、プレミアムブランドで採用した技術を下位ブランドに展開するのがうまかったんだ。コストを平均化して、しっかりと良いモノを出していたんだよ。アウディはその先駆的な役割のブランドだったんだね。

——じゃあこのA4もその絶頂期のモデルということですね。

松本 でもね、この車の価値はそれだけじゃなくて、クワトロ社が関わっていたという点なんだよ。2016年にアウディスポーツ社(Audi Sport GmbH)に変わったけど、スポーツ性の高い高性能車の設計、開発、製造を行ってきた会社がクワトロ社なんだ。

 ——RSとかの生産をしてた会社ですよね?

松本 そう、主にRSモデルやR8のみに携わった会社だね。僕もRS2を除いてすべてのRSモデルを試乗しているけど、お世辞なしにすべていい車だね。スペシャルなパーツを組み込む、少量ロット生産のモデルだから精度が高い。故に目に見えない品質の高さが実現できているんだ。

——どうしてもMとかAMGよりマイナーなイメージがありますよね?

松本 それはRSの凄さを知らないからだよ(笑)。

——それで、このA4 DTMリミテッドって何がいいんですかね。

松本 このモデルはドイツツーリングカー選手権、DTM(Deutsche Tourenwagen Masters)と呼ばれるレースで2004年にタイトルを獲得したアウディが、その名誉に触発されて作ったモデルなんだ。実際にこのB7世代になってからは2005年から2007年までDTMに出場して、2007年にはタイトルも取っているんだよ。その時、クワトロ社は小量ロットが売りだったから1世代につき1つの車種しか生産できなかったんだよ。

——それ、前に教えてもらいましたね。だからRSモデルはラインナップに1台とか、少ないって。

松本 そうなんだよ。ちなみにRSの初代は伝説的な最速ワゴンといわれたRS2で、これはポルシェの工場で生産されたけど、企画設計も同社だね。その次がS6プラス、3台目がRS4アバント、4台目がRS4クワトロ、そしてなんと5台目がこのA4 DTMリミテッドになるんだよ。

——Aから始まる車名なのにクワトロ社が作ったモデルなのか……。

 松本 そのとおり。そのときの専用カラーがこのスプリングブルーパールエフェクトという色でね。日本で150台の限定販売だったんだよ。特別なモデルを作っていたクワトロ社が、直接携わった最初で最後のA4ということだよね。その証しがシャシー番号。クワトロ社製かアウディ製か分かるんだよ。このDTMリミテッドはWUAで始まる車台番号でしょ? アウディ製はWAUから始まる番号なんだよ。だから間違いない血統ということなんだ。

——それってしれっとすごいですね!

松本 そうだよ。しかも僕が注目しているのはエアロパーツとかもさることながら、サスペンションのセッティング。20mmもローダウンさせてタイヤとホイールも考えてセッティングしてあるんだ。これは価値があるよ。

——経済的な普通のエンジンに、足回りだけクワトロ社が作るって、ある意味理想的ですね。

松本 そうだね。僕は当時、新車で3日間ほど試乗したけど、本物を感じられる味付けが印象的だったなぁ。硬いけどしなやかでね、最近ようやく日本のスポーツモデルもその方向になっているけど、特殊なスポーツモデルを作っていたクワトロ社はA4のシャシーに合わせた最良のセッティングをこの車に施したんだよ。後にも先にもこれしかない。本当に貴重なモデルだよ。ちなみに日本ではATの販売だったけど本国ではゲトラグ製の6速MTが標準だったんだ。しかも出力は220psと10%も向上させてあったんだ。

——他にも特別な部分ってあるんですか?

松本 日本で販売したA4 DTMリミテッドは、シートもレカロ製のスポーツシートでアルカンターラとマイクロファイバーが使われているね。ステアリングはイタリアの伝説的なブランド、ナルディ製なんだ。

——それがこの値段っていうのは……ちょっと驚きですね。

松本 本当だよね。由緒正しいアウディ スポーツモデルの元祖ともいえる会社が製造に携わったモデルなのにね。でも逆に考えれば、この値段で買えるんだから、すごくいい買い物になると思うな。まだその価値が広く知られる前に買う、それも中古車の醍醐味の一つだからね。

 

アウディA4 DTMリミテッド

2007年に登場した、3代目A4セダンの150台限定モデル。本国で人気のDTM(ドイツツーリングカー選手権)をイメージし、クワトロ社がチューンしたスポーツサスペンションや専用エアロパーツなどが装着された。新車時価格は524万円。 アウディ A4(3代目)の中古車を探す▼検索条件アウディ A4(3代目)×全国※カーセンサーEDGE 2021年11月号(2021年9月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています文/松本英雄、写真/岡村昌宏

【取材協力】アトランティス カーセンサーEDGE.netはこちら

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みんなのコメント

3件
  • その昔のアウディ。
    それはもう知的な雰囲気が漂いました。

    あるときからコワモテになり。 
    あの知的な容姿も失われ。

    ひたすら騒音を炸裂させる輩にまで成りがる。
    そうした存在になりました。



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