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極悪燃費 最高に燃費のいいSUV選手権 燃費のベストワーストSUVはどれだ?

掲載 更新 69
極悪燃費 最高に燃費のいいSUV選手権 燃費のベストワーストSUVはどれだ?

 「クルマが売れない」といわれるなかで、堅調に人気を高めたのがSUVだ。2010年頃までは、新車として売られる小型/普通乗用車の約8%だったが、今では20%近くをSUVが占める。

 SUVが人気を得た理由は、カッコよさと実用性の両立だ。もともとSUVは、ジープのように悪路の走破を目的に開発された。そのために大径タイヤの装着など、外観に強い存在感が伴う。

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 またSUVはボディの上側がワゴン風の形状で、全高の数値は大半の車種が1600mmを超える。室内高にも1200~1300mmの余裕があるため、4名で快適に乗車できて、荷物を積みやすい車種が多い。

 LサイズのSUVには、ランドクルーザーのように、荷室に3列目のシートを備えた車種もある。長距離の移動でなければ、ミニバンのような多人数乗車も可能だ。これらの実用性が、カッコいい外観と併せてユーザーから高く支持された。

 その代わりSUVは、全般的にボディが重い。コンパクトなヤリスクロスでも、ハイブリッドの車両重量は2WDが1160~1190kgだ。5ドアハッチバックのヤリスに比べて、少なくとも100kgは上まわる。レクサスLXの3列シート仕様では、車両重量が2730kgに達する。国産乗用車では最大級の重さだ。

 しかもSUVは、前述の通り、全高が大半の車種で1600mmを超えるため、走行中の空気抵抗も増える。重いボディと相まって、ミニバンと同様に燃費が悪化しやすい。

 燃費性能はSUVのユーザーにとって切実な問題だから、大半の国産SUVには、ハイブリッドやクリーンディーゼルターボが用意されている。

 そこで、国産車のSUVラインナップのなかで、燃費ベスト5車、燃費ワースト5車をピックアップし、それぞれのクルマの特徴や魅力について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部、ベストカーweb編集部、トヨタ、マツダ

【画像ギャラリー】国産SUVのベスト&ワースト燃費車の詳細を画像でチェック!

■最高にいい燃費のSUVはどのクルマ? SUVのベスト燃費ランキング


■SUVのベスト燃費ランキング1位:トヨタ ヤリスクロスハイブリッド2WD X/30.8km/L

安全装備や燃費も優れ、価格は割安だから人気車となったヤリスクロス


■SUVの燃費ベスト5車
1位:トヨタ ヤリスクロスハイブリッド 2WD X:30.8km/L(38万8000円)
2位:トヨタ C-HRハイブリッド 2WD:25.8km/L(33万円)
3位:マツダ CX-3 XD 2WD(6速MT):23.2km/L(30万3600円)
4位:レクサス UX250h 2WD:22.8km/L(35万6000円)
5位:トヨタ ハリアーハイブリッド 2WD:22.3km/L(59万円)

※カッコ内はNAガソリンエンジンとの価格差
※燃費数値はWLTCモード燃費/ランキング表記は上から順番
※軽自動車のハスラーやタフトは入っていません。幅を広げると、イグニスやフィットクロスターなども含まれ、一般的なSUVのイメージから離れるため

 SUVの燃費ランキング1位は、ヤリスクロス2WD Xだ。直列3気筒1.5LハイブリッドのWLTCモード燃費は、2WDでは30.8km/Lに達する。ハイブリッドシステムはヤリスから採用が開始された設計の新しいタイプで、優れた数値を達成した。

 ちなみに1.5LNA(自然吸気)エンジンのXも、WLTCモード燃費は20.2km/Lだ。この数値はキックスe-POWERの21.6km/Lに迫り、優れた部類に入る。

 それでもヤリスクロスの場合、ハイブリッドの燃費数値はNAエンジンの1.5倍だ。ハイブリッドを選ぶと、数値上は燃料代をNAエンジンの65%に抑えられる。

 SUVで1位の燃費性能は説得力が強く、NAエンジンとの価格差も38万8000円と妥当だから、ヤリスクロスではハイブリッドの販売比率が60%に達した。


■SUVのベスト燃費ランキング2位:トヨタ C-HRハイブリッド2WD/25.8km/L

1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドはプリウスと基本的に同じで、2WDのWLTCモード燃費は25.8km/L

 SUV燃費ランキングの2位はC-HRハイブリッドだ。プリウスと同じ直列4気筒1.8Lのハイブリッドを搭載して、2WDのWLTCモード燃費は25.8km/Lになる。この数値はハスラーのようなマイルドハイブリッドを備えた背の高い軽自動車と同等だ。

 ハイブリッドならではの低燃費を実感できて、エンジンが4気筒だから、3気筒のヤリスクロスに比べるとアクセルペダルを踏み込んだ時のノイズは小さい。滑らかな運転感覚が特徴だ。

 ハイブリッドの燃費数値は、1.2Lターボの1.7倍だから、数値上は燃料代を58%程度に抑えられる。ハイブリッドの燃費向上率は抜群だ。

 しかもハイブリッドと1.2Lターボの価格差は33万円に収まるから、ハイブリッドの販売比率が78%と突出して高まった。C-HRではハイブリッドが断然買い得だ。

■SUVのベスト燃費ランキング3位:マツダ CX-3 XD 2WD(6速MT)/23.2km/L

クリーンディーゼルエンジンは燃料噴射を綿密に制御して、クリーンで無駄のない燃焼を実現

 3位はCX-3のXDで、ハイブリッドではなく直列4気筒1.8Lのクリーンディーゼルターボを搭載する。2WD(6速MT)のWLTCモード燃費は23.2km/Lだから、ハイブリッド並みに優れた数値となった。

 しかもディーゼルが使う軽油は価格が安い。正確には本体価格は高いが、税額の違いでレギュラーガソリンよりも安く買える。1L当たりの価格は、今ならレギュラーガソリンが145円、軽油は125円だ。そうなるとCX-3 XDの燃料代は、WLTCモード燃費が26.9km/Lのガソリンエンジン車と同等になる。

 したがって走行コストは、C-HRハイブリッドの25.8km/Lに近い。CX-3のディーゼルは、燃費効率がとても優れている。

 しかもディーゼルの特性により、最高出力は116ps(4000回転)と控え目だが、最大トルクは27.5kgm(1600~2600回転)と高い。実用回転域で2.7Lガソリンエンジンに匹敵する駆動力を発生するため、高速道路の巡航時などは運転がしやすく、燃費効率は一層向上する。

 そしてSパッケージ同士で2Lガソリンエンジンと価格を比べると、ディーゼルは30万3600円の上乗せに収まる。ハイブリッドの場合、C-HRが33万円、ヤリスクロスは38万8000円だから、電動機能を使わない分だけディーゼルは価格が安い。

 CX-3 XDはハイブリッドではないから、ムダに大気に放出されている減速エネルギーを利用して発電を行い、モーターを作動させて走行に再利用することはできない。

 ハイブリッドとは環境技術が根本的に異なるが、高い駆動力と安い燃料代を割安な車両価格で両立させたメリットは大きい。


■SUVのベスト燃費ランキング4位:レクサス UX250h 2WD/22.8km/L

新たに設計されたハイブリッドユニットは小型・軽量・高効率化技術を投入し、すぐれた燃費性能を実現

 4位はレクサス UX250hだ。プラットフォームはC-HRと共通だが、エンジンとハイブリッドシステムは異なる。NAエンジンを含めて、直列4気筒2LのM20A型を搭載する。ハイブリッドユニットを含めて設計が新しく、WLTCモード燃費は22.8km/Lに達した。

 ハイブリッドの燃費数値は、NAエンジンの1.4倍で、燃料代を72%に抑えられる。

 またUX250hは設計が新しいために、ハイブリッドながら動力性能に余裕が生じた。アクセルペダルを深く踏み込まない通常の走行状態では、2.5LのNAエンジンを搭載している感覚で運転できる。

 価格も魅力的だ。レクサス NXのハイブリッドは、NAエンジンに比べて60万円以上高いが、UXでは35万6000円の上乗せに抑えた。

 しかもUX250hは、ハイブリッドとあって、ほかのハイブリッドと同じく購入時に納める税額が非課税だ(2020年度)。NAエンジンに比べて税額も10万1000円安いから、実質差額は25万5000円に収まる。

 このようにUXは、レクサスのなかでも特にハイブリッドが買い得だ。その結果、UX全体の88%をハイブリッドが占めている。


■SUVのベスト燃費ランキング5位:トヨタ ハリアーハイブリッド 2WD/22.3km/L

2.5Lの直列4気筒エンジンをベースにしたハイブリッドシステムで、低燃費とともに力強い走りを実現した

 5位はハリアーハイブリッドだ。1~4位はすべて全長が4.5m以下の比較的コンパクトなSUVだが、ハリアーは4.7mを上まわる。それでも直列4気筒2.5Lハイブリッドの搭載で、2WDのWLTCモード燃費は22.3km/Lだから、コンパクトSUV並みに良好だ。

 NAエンジンと比べた時の燃費数値も、ハイブリッドは1.5倍に達する。ハイブリッドのガソリン代は、NAエンジンの70%以下に収まる。

 しかもエンジンの排気量に2.5Lの余裕があり、モーター駆動も併用するから、加速は滑らかで静かだ。ハイブリッドは経済性だけでなく、ハリアーにとって大切な上質感も向上させた。

 そうなるとハイブリッドの販売比率が高まりそうだが、意外に低く37%にとどまる。その理由はNAエンジンとハイブリッドの価格差だ。ハリアーの場合、ハイブリッドは2.5L、NAエンジンは2Lという排気量の違いもあって、価格差が59万円まで拡大した。

 しかもハリアーは、トヨタブランド車としては価格が全般的に高く、売れ筋の2WD・Gで見るとNAエンジンでも341万円、ハイブリッドは400万円に達する。

 そしてハリアーでは、2L、NAエンジンを廉価グレードに位置付けることはせず、Zレザーパッケージなども用意した。価格が安く選択肢は幅広いため、NAエンジンが60%以上を占めた。

■燃費のいいSUVはHVかクリーンディーゼルか?

ヤリスクロスはガソリンエンジン仕様も設定するが、ハイブリッドの価格設定を抑えており、ハイブリッドの販売比率が高くなっている

 以上のようにハイブリッドを好調に売るには、NAエンジンと比べた時の燃費向上率が1.4倍以上と大きく、なおかつNAエンジンとの価格差を40万円以下に抑える必要がある。

 この典型がヤリスクロスハイブリッドで、ハイブリッド比率が60%に達したのも納得できる。レクサス UXは価格は高めだが、ハイブリッドの価格上昇を抑えた。

 そしてハリアーは、2LNAエンジンとの価格差が59万円に達するものの、ハイブリッドの走りはハリアーの上質感と親和性が高い。ハリアーではハイブリッドGの推奨度が最も高い。

 このようにハイブリッドのSUVはトヨタの天下だ。今後の動向としては、内外装やグレード構成が公表された次期ホンダヴェゼルのe:HEV(ハイブリッド)が注目される。

 そして車種は少ないが、クリーンディーゼルターボも魅力的だ。燃費効率が優れ、軽油価格も安いから、走行コストをハイブリッド並みに下げられる。しかもNAエンジンとの価格差は、ハイブリッドよりも少ない。実用回転域の駆動力も高く、運転もしやすい。

 ただしディーゼルは、NAガソリンエンジンやハイブリッドに比べて、高回転域の吹き上がりが鈍く、車種によってはノイズも気になる。違和感が生じることもあるから、試乗は入念に行いたいが、運転感覚が気に入れば選ぶ価値は高い。

■SUVの極悪燃費車はどれだ? SUVワースト燃費ランキング


■SUVの燃費ワースト5車
1位:レクサス LX570 4WD:6.6km/L
2位:トヨタ ランドクルーザー4WD ZX:6.7km/L
3位:トヨタ ランドクルーザープラド2.7 4WD:8.3km/L
4位:レクサス RX300 4WD:10.4km/L
5位:レクサス NX300 4WD Fスポーツ&バージョンL:11.2km/L


■SUVのワースト燃費ランキング1位:レクサス LX570/6.6km/L

大排気量エンジンと大柄なボディで車重が重く、燃費はかなり悪い

 次はワーストモデルを取り挙げる。

 最も燃費の悪い車種はレクサス LX570で、WLTCモード燃費は6.6km/Lだ。しかも使用燃料がプレミアムガソリンだから、レクサスLX570の燃料代は、ヤリスクロスハイブリッド5台分に相当する。この燃費数値はGT-Rの7.8km/Lを下まわり、国産乗用車の中でもワーストモデルになる。

 LX570のエンジンは、V型8気筒5.7Lで、車両重量は2760kg(3列シート)と重い。

 全幅は1980mm、全高も1910mmだから空気抵抗も大きい。4WDは常に4輪を駆動する悪路向けのセンターデフ式だから、今のSUVに多く使われる多板クラッチ式4WDに比べて、パワーロスも上まわる。このように不利な条件が重なった。


■SUVのワースト燃費ランキング2位:トヨタ ランドクルーザー/6.7km/L

ワースト1位のレクサス LX570のベースモデルになっているため、こちらも燃費は悪い

 ワースト2位はトヨタ ランドクルーザーで、WLTCモード燃費は6.7km/Lだ。レクサス LX570のベースになった悪路向けのSUVで、エンジンはV型8気筒4.6Lを搭載する。ZXの車両重量は2690kgだ。

 LX570よりは少し軽いが、全幅は1980mm、全高は1870mmだから空気抵抗も大きい。燃料の消費量も増えた。


■SUVのワースト燃費ランキング3位:トヨタ ランドクルーザープラド/8.3km/L

レクサス LX570も含め、ランドクルーザーシリーズがワースト上位3車を占めた

 ワースト3位はランドクルーザープラドの直列4気筒2.7Lガソリンエンジン搭載車だ。WLTCモード燃費は8.3km/Lになる。車両重量は2050~2100kgと重い。

■ワースト上位3車が本格派クロカン四駆

クロスカントリー向けの4WD車は本格的な悪路走破性能を備える反面、燃費が悪い

 以上のようにSUVのワースト上位3車は、すべて後輪駆動をベースにした悪路向けの4WDで占められる。堅牢なフレームを備えたボディに耐久性の高い足まわりを組み合わせて、車両重量はすべて2トンを超える。センターデフ式4WDを含めて、各種の抵抗も大きい。

 そして車両の開発方針として、何よりも悪路走破力を重視している。海外の用途では、悪路で立ち往生すると、乗員の生命が脅かされる場面も多いからだ。

 そのために悪路向けのSUVでは、燃費の優先順位が下がり、燃費性能も悪化した。悪路走行のニーズは切実で、今後はそれに応えられる電気自動車を開発できるのか、という課題も残る。


■SUVのワースト燃費ランキング4位:レクサス RX300 4WD/10.4km/L

燃費上位はいずれも2WD車でワースト上位は全車4WD。4WDシステムの搭載で車両重量が重くなる分、燃費は不利だ

 ワースト4位はレクサス RXに直列4気筒2Lターボを搭載したRX300 4WDだ。WLTCモード燃費は10.4km/Lになる。2Lターボは、燃費に配慮したエンジンではなく、車両重量も2トン前後に達するから燃料消費量が増えた。


■SUVのワースト燃費ランキング5位:レクサス NX300 4WD Fスポーツ/11.2km/L

上級ブランドのレクサス車は動力性能が高い反面、燃費はそれほど良くない

 ワースト5位もレクサスのNX300 4WD Fスポーツ&バージョンLだ。WLTCモード燃費は11.2km/Lになる。エンジンはRX300と同様の2Lターボで、車両重量は1800kgだ。

 このようにSUVの燃費ランキングを総合的に見ると、ベストもワーストも、9車種、レクサスを含めたトヨタ車が占めた。

 トヨタの小型/普通車市場に占めるシェアは、2020年にはレクサスを含めると50%を超えており、SUV市場を善し悪しに関わらずトヨタが完結させている。

 言い換えれば、トヨタが日本の自動車産業に与える影響は、商品開発を含めてきわめて大きい。SUVの燃費ランキングからも、トヨタの役割の重いことが分かる。

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