コンパクトなボディにハイパワーなエンジンを搭載するというのは、何ものにも代え難い魅力がある。そんな“ホットハッチ”と呼ばれるクルマの中でも、とくにゴルフRとメガーヌR.S.は世界中の人たちを魅了してきたといえるだろう。今回はその最新かつ最強なモデル2台を集めて、改めてその妙味を再考した。(Motor Magazine 2023年12月号より)
5ドアHBをベースとしたスポーツモデルのさらにスペシャル版
今回試乗したのは「ルノー メガーヌR.S. ウルティム」と「フォルクスワーゲン ゴルフR 20イヤーズ」で、どちらもCセグメントの5ドアHBをベースとしたスポーツモデルの、さらにスペシャル版。フランス車とドイツ車、どんなシーンでも好対照なキャラクターを見せ、いずれも魅力的だ。
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今でこそ、ルノーのF1は「アルピーヌ」チームで参戦しているが、「ルノースポール」は長年F1をはじめとするモータースポーツを担う組織として活動。また、極限で鍛え上げた知見と技術を市販車のスポーツモデルの開発にフィードバックしている。
その代表的モデルともいえる「メガーヌR.S.」は、たびたびニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおいてFF車最速の記録を打ち立ててきた。その集大成となるのが「ルノーメガーヌR.S. ウルティム(以下、ウルティム)」だ。
ブレンボ製レッドフロントブレーキキャリパーと19インチの専用ホイール、センターエキゾーストパイプとブリリアントブラックリアディフューザー、そしてブラックデカールなどが専用アイテムとして装備される。
今後、ルノースポールが担ってきた役割はすべて「アルピーヌ」ブランドに集約される。ウルティムはその歴史に敬意を表し、設立年である1976年にちなんで全世界1976台を限定販売する。
一方のゴルフRのルーツは、第4世代のゴルフをベースにV6 3.2Lエンジンと4モーションシステムを組み合わせたモデル「R32」である。日本では2003年1月に導入され人気を博し、以来ずっと愛され続けている。
最新のゴルフR 20イヤーズ(以下、20イヤーズ)に搭載される2L 直列4気筒ターボエンジンは専用チューニングが施され、333psとベース比で13ps アップ。さらに、大型化されたリアスポイラーによる強力なダウンフォースとの相乗効果により、加速力と安定性を両立する。
今回の取材ではそんな魅力的な2台を引き連れて、伊豆方面に出かけた。
日常使いで感じる2台、それぞれの滑らかなトランスミッション
ウルティムは、サーキットでも通用するようにサスペンションがかなり強化されているので、さすがに一般道路での乗り心地はどうかと懸念したが、そんな心配は無用だった。
確かにスポーツモデルらしい張りがあり、不快感のないギリギリまでサスペンションを締め上げた感じ。が、お尻に刺さるような強烈な突き上げはなく、大きな入力に対しても跳ねるような挙動もない。アンジュレーションでも常に路面をしっかり捉えている。長年、私にとってのFFスポーツのリファレンスとなっているのがルノースポールのモデル。さすが安定の性能だ。
また、インジケータのデジタル表示の下にはクルマのリアビューが表示される。そしてウインカーやハザードを点灯すると、連動してグラフィック内でも点滅する。ハードなスポーツモデルでも、日常シーンでのオシャレな遊び心を忘れないところもルノーらしい。
本誌10月号の取材でゴルフRのベースモデルに乗ったばかりだが、20イヤーズは乗った瞬間からドライブフィールが異なる。リリースではパワーアップのほか、高速域でのパフォーマンス向上などが列挙されるが、常用域でも全体的にそれぞれのパーツの精度が高まったような印象で、とにかくステアリングホイールからサスペンションまであらゆる動きがスムーズで心地よい。
これは2台ともに言えるが、ストップ&ゴーや低速走行時でも滑らかなフィールのトランスミッションが秀逸だ。
ワインディング路でわかった曲がりたくなるほど安定したコーナリング性能
ワインディング路に入ると、2台とも水を得た魚のように、より生き生きするのは言うまでもない。通常のFF車はフロントタイヤに意識がいき、リアタイヤは勝手についてきてくれるというイメージ。だがウルティムはリアタイヤの存在感が大きかった。それは4コントロール(四輪操舵)であることに加えて、四輪を常にしっかり接地させるということを強く意識できるからだ。
またラリーの競技用に開発されたHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)ダンパーも大きく貢献している。大きなギャップでは、当たりの優しい20イヤーズの方がむしろ跳ねが大きく、ウルティムは大きな入力はあるものの接地は失わない、というシーンがあった。
ウルティムのドライブモード「マルチセンス」は、「マイセンス」「セーブ」「レギュラー」「スポーツ」「レース」が選択できる。モード変更によってスポーツエキゾーストのサウンドや、パワーフィールがわかりやすく変化した。とくに加速時のパワー感は、20イヤーズよりウルティムの方がモードによる違いを感じた。この点、ドライバーにエモーショナルな感覚を与えるという意味で、ウルティムの演出が上手いと感じた。
一方、20イヤーズに搭載されるアダプティブサスペンション「アダプティブシャシーコントロール(DCC)」の違いも試した。ベースモデル同様の「コンフォート」「スポーツ」「レース」「カスタム」のモードに加え、20イヤーズ専用モードとして「スペシャル」と「ドリフト」モードが追加される。「スペシャル」を選択すると、ニュルブルクリンク北コース(以下、ニュル)が画面に表示されるのだが、これにはテンションが上がった。
このモードは実際にニュルでテストをして、要求の厳しいレーストラックで走るために新設計されたのだが、これを選択するとアイドリングの音が野太いサウンドに変わり、加速からアクセルを戻すとマフラーからパンパンと音がする。これだけでもスポーツマインドが掻き立てられる。残念ながら今回の試乗は公道のため「ドリフト」モードは試せなかった。
ゴルフらしいと感じたのはたとえ「スペシャル」を選択しても牙を剥いたり、尖ったりすることなく、どこまでもスムーズで穏やかな点。ハンドルの操舵力は軽めで、無駄に力が入ることなく4モーションならではの安定したコーナリングを味わえる。
ニュルブルクリンクで作り込まれた2台は間違いなく秀逸で楽しい
各シーンで両車はそれぞれキャラクターが際立ち、甲乙つけ難い魅力を感じた。これは良い悪いではなく、好き嫌いの領域。そんな2台のフィロソフィが決定的に違うと実感したのが高速道路だ。
ウルティムは、アクセルペダルをちょっと踏み込んだ時でもエンジンサウンドが気持ち良かったり、常にエモーショナルな気分を感じられる。一方20イヤーズは、快適性において一枚上手だ。乗り心地も良いし、静粛性も高い。ACCをセットすればスポーツモデルに乗っているのを忘れてしまうくらい快適に走ってくれる。ホントに守備範囲が広く、いつでも優等生なのだ。が、だからといって20イヤーズに軍配があがるかというと、そう単純な話でもない。ここでは価値観や好みが分かれる。
つまり、スポーツモデルに乗っていても、サーキットを走る機会、すなわちハイパフォーマンスをフルに発揮できるシーンはそうそうない。だからこそウルティム派の目線で言えば、日常シーンでも非日常なエモーショナルな気分を味わわせてくれることによって所有欲を満たしてくれる魅力がある。一方で20イヤーズ派の目線だと、クルマに乗るたびにいつもハイテンションというわけじゃないので、日常は快適で実用的なクルマとして使い、時には非日常感も楽しめるのが魅力となる。
実は私もスポーツモデルを所有するのだが、限界域で走らなくてもエンジンサウンドや小気味良いシフトで十分楽しむことができる。「ああ、このクルマに乗ってて良かった!」と、日常で乗っていてもそう思わせる魅力がある。
それにしても、ウルティムはFFのニュル最速を極め、20イヤーズはニュルでテストされたスペシャルモードを備える。やはり、かの地で徹底的に走り込んで作られたスポーツモデルは、間違いなく秀逸で楽しいということを再認識した。この対決、是非とも開発の地であるドイツ・ニュルブルクリンクで試してみたいものだ。
(文:佐藤久実/写真:永元秀和)
ルノー メガーヌR.S. ウルティム 主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1875×1465mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6000rpm
●最大トルク:420Nm(42.8kgm)/3200rpm
●トランスミッション:6速DCT(EDC)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:11.3km/L
●タイヤサイズ:245/35R19
●車両価格(税込):659万円
フォルクスワーゲン ゴルフR 20イヤーズ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1460mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:245kW(333ps)/5600-6500rpm
●最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2100-5500rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・56L
●WLTCモード燃費:未発表
●タイヤサイズ:235/35R19
●車両価格(税込):792万8000円
[ アルバム : 「ルノー メガーヌR.S.ウルティム」×「フォルクスワーゲン ゴルフR 20イヤーズ」 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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